概要

リヴォルト・チェアは、フリソ・クラーマーが1953年に設計し、アーレンド・デ・シルケル(Ahrend De Cirkel)が製造した椅子である。骨組みに鋼管を用いず、平らな鋼板を打ち抜いて折り曲げた部材で構成する。オランダで本格的に量産された最初期の家具の一つに数えられ、学校、事務所、住宅に広く行き渡った。1990年代に設計者自身の手で改訂され、2020年にはデンマークのHAY(ヘイ)との協働による現行仕様が発売されている。

特徴・コンセプト

鋼管をやめ、鋼板を折る

1920年代以降、安価な実用椅子の骨組みには鋼管を用いるのが通例だった。鋼管は製管の段階で断面が決まり、全長にわたって同じ太さになる。ところが椅子にかかる曲げの力は場所ごとに違う。最も力のかかる箇所に合わせて径を選べば、力のかからない部分にまで同じ材料を使うことになる。

クラーマーが採ったのは、平らな鋼板を型で打ち抜き、折り曲げて溝型の断面をつくる方法である。折り幅を変えれば断面の高さが変わるため、脚の付け根では高く、先端に向かって低くといった配分ができる。同じ強さを保ったまま材料を減らせるので、細く見えるのに撓みにくい脚が成り立った。

量産に向いた工程

この構成は、打ち抜き、折り曲げ、接合、塗装という工程に整理できる。型さえ用意すれば同じ部材を短い時間で繰り返しつくれるため、製造にかかる費用を抑えたまま数を出せる。アーレンドは、この方式によって椅子が広い層の手に届く価格になったと説明している。戦後のオランダで学校や事務所へ一度に大量の椅子を納める必要があった時期と、この生産方式は噛み合っていた。

座と背に樹脂を使う

座と背の材料も、当時の実用椅子の通例から外れていた。用いられたのは、フェノール樹脂を含ませた紙を重ねて固めた板である。薄いまま強く、荷重がかかると適度にたわむため、背は座る人の動きに沿って傾く。骨組みが撓みを許さない設計である以上、座り心地を受け持つのは座板と背板の側になる。木でも金属でもない材料を椅子の座に使う例は、当時のオランダの家具では新しい試みだった。

のちに座と背を合板とした仕様も加わり、2020年の現行品ではABS樹脂を射出成形したものに替わっている。色物は再生ABSを30%、新品のABSを70%混ぜた材料を使い、黒は再生ABSのみで成形する。骨組みは打ち抜いて折った鋼板に鋼管を組み合わせて溶接し、粉体塗装で仕上げる。製造元は、フレーム用の鋼板を取り都合を詰めて打ち抜くことで端材を減らしていること、および座・背・留め具・脚のすべりをすべて工具で外して分別できる構成にしていることを公表している。

エピソード

クラーマーがデ・シルケルに入ったのは1948年である。アーレンドの製造部門にあたる同社は鋼製家具の工場で、創業者のヤン・スフレーファー(Jan Schröfer)が経営にあたっていた。クラーマー自身の説明によれば、知人の仲介で同社の経営者と引き合わされたのが始まりで、最初は構造図を引く製図工として働き、まもなく工場付きの設計者になったという。設計事務所が図面を工場へ渡すのではなく、工場の設備を見ながら形を決める立場だった。

クラーマーは設計の進め方について、工場を何日も歩いて見て回り、余分なものを探し出して削ぎ落とし、残ったもので仕事を始める、という趣旨のことを述べている(アーレンドのデザイナー紹介ページ)。鋼管から鋼板への置き換えも、既存の椅子の造形を整えることではなく、工場の板金設備で何ができるかという側から出てきた判断にあたる。

発表後は長く生産が続いた。1990年代には設計者自身の手で改訂が行われ、このときの資料はオランダ美術史研究所(RKD)が保管するクラーマーの資料群に「Re-Revolt」として残っている。2020年、HAYとアーレンドは「HAY for Ahrend」の名称でこの椅子を復刻した。両社の協働は2015年に設計者本人を訪ねて了解を得たうえで進められたと、当時のアーレンドの最高経営責任者が述べている。

評価と影響

鋼板を打ち抜いて折る手法は、1958年のリザルト・チェア(クラーマーとヴィム・リートフェルトの共同設計)や1959年のピラミッド・コレクション(リートフェルトの設計)にも使われ、アーレンドの製品群に共通する作り方となった。この2つは2017年に、リヴォルトは2020年に、いずれもHAYとの協働で復刻されている。

RKDが作成したクラーマーの資料目録は、本作がベネルクス三国の工業デザインを対象とした賞Signe d'Or(金の標章)を受けたことを記している。一般に、戦後オランダの工業デザインを代表する製品の一つとして扱われている。

使われ方の記録も残る。アムステルダム市立美術館は1977年12月から1978年1月にかけてクラーマーの回顧展を開いた。同館の記述によれば、開会の際に作家のヤン・ウォルケルスが、自分の本はすべてこの椅子に座って書いたと語ったという。初期のリヴォルトは、同館が2012年から2017年まで公開したデザインの常設展示にも含まれていた。

基本情報

名称 リヴォルト・チェア / Revolt Chair
デザイナー フリソ・クラーマー(Friso Kramer)
ブランド アーレンド(Ahrend)
発表年 1953年
デザインの成立国 オランダ
主要素材(骨組み) 鋼板(粉体塗装)
主要素材(座・背) フェノール樹脂積層板(初期)/ABS樹脂(現行品)
サイズ(現行品) 幅455mm / 奥行495mm / 高さ810mm / 座面高465mm
現行品の製造 HAY(アーレンドとの協働、2020年〜)

Reference