フリソ・クラーマー:オランダ・インダストリアルデザインの先駆者

フリソ・クラーマー(Friso Kramer, 1922-2019)は、20世紀オランダにおけるインダストリアルデザインの発展に最も重要な役割を果たしたデザイナーの一人である。建築家ピート・クラーマーの息子として1922年にアムステルダムに生まれ、戦後復興期のオランダにおいて、徹底した機能主義に基づく家具デザインを通じて、オランダ・モダニズムの美学を確立した。彼の代表作である「リヴォルトチェア」(1953年)は、オランダ・ミッドセンチュリーデザインの象徴として、今なお世界中で高い評価を受けている。

生涯と経歴

1922年8月13日、アムステルダムに生まれたフリソ・クラーマーは、アムステルダム派の先駆的建築家であったピート・クラーマー(1881-1961)の息子として、幼少期から優れたデザイン環境に囲まれて育った。父ピートは労働者のための「宮殿」とも称されるデパートを設計するなど、社会性を重視した建築を手がけた人物であり、この父の思想は後にフリソの「社会のためにデザインする」という姿勢の基盤となった。

フリソはアムステルダムの工芸学校(ambachtsschool)および電気工学学校で学んだ後、応用美術教育研究所(IvKNO / Institute of Applied Art)で室内建築を専攻した。ここで彼は、バウハウスと深い関わりを持つ建築家マルト・スタム(Mart Stam, 1899-1986)やヨハン・ニーゲマン(Johan Niegeman)に師事し、機能主義的デザインの理論的基礎を学んだ。この時期に得た「形態は機能に従う」という思想は、生涯にわたり彼のデザイン哲学の中核を成すこととなる。

卒業後は、建築家J.P.クロース(J.P. Kloos)の事務所および室内装飾家フランス・パウルッセン(Frans Paulussen)と短期間協働した後、1948年、スチール家具メーカー「デ・シルケル(De Cirkel)」社に入社した。デ・シルケルは1939年にアーレンド(Ahrend)グループに統合されており、当時の社長J.シュレーファー(J. Schröfer)はデザインを重視し、工場の近代化を積極的に推進していた。クラーマーは当初、製図技師として採用されたが、まもなく同社のデザイナーとして頭角を現し、1963年まで15年間にわたり、同社の最も重要な製品群をデザインすることとなる。

1950年代、クラーマーは「スティフティング・フート・ヴォーネン(Stichting Goed Wonen / 良き生活協会)」の活動的メンバーとして参加した。この団体は、第二次世界大戦による荒廃から立ち直ろうとするオランダにおいて、「スタイルの欠如、素材の不足、住宅不足」を克服し、機能的なデザインを通じて生活の質を向上させることを目的としていた。協会はデザイナー、建築家、製造業者、小売業者、顧客の革新的な協働を促進し、近代的な生活様式とモダニズム美学の普及に大きな影響を与えた。この活動を通じて、クラーマーはデザインが社会全体に貢献すべきであるという信念を深めていった。

1963年、クラーマーはヴィム・クロウエル(Wim Crouwel)、ベンノ・ウィッシング(Benno Wissing)、ポールとディック・シュワルツ(Paul and Dick Schwartz)兄弟とともに、伝説的なデザイン事務所「トータルデザイン(Total Design)」を共同創設した。この事務所は、グラフィック、インダストリアル、空間デザインを一つの屋根の下に統合し、機能主義への共通の信念のもとで「トータルデザイン」の実現を目指した。クラーマーは1967年から1968年頃まで同事務所に在籍し、その後1971年にアーレンドに復帰、1983年までアートディレクターおよび役員として同社の製品開発を統括した。

デザイン活動と並行して、クラーマーは多くの教育・管理職を歴任した。1950年代を通じてハーグ王立芸術アカデミーで教鞭を執り、金曜夜と土曜日終日という柔軟な時間設定により、従来の学校では届かなかった幅広い層の人々にデザイン教育を提供した。またリートフェルト・アカデミーの理事、アムステルダム美術評議会(Amsterdamse Kunstraad)、オランダ産業デザイン評議会(Raad voor Industriële Vormgeving)、国際デザインコンソーシアム(International Design Consortium)のメンバーとして、オランダのデザイン界の発展に多大な貢献を果たした。

1977-1978年にはアムステルダム市立美術館(Stedelijk Museum)で、1991年にはロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館(Museum Boijmans Van Beuningen)で回顧展が開催され、彼の業績が改めて評価された。1979年には、ロンドン王立芸術協会(Royal Society of Arts)より「ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(Royal Designer for Industry)」の称号を授与された。これはオランダ人デザイナーとしては極めて稀な栄誉である。さらに1991年には著書『Friso Kramer Industriële Vormgeving(フリソ・クラーマー・インダストリアル・デザイン)』が出版され、1994年にはオラニエ=ナッサウ勲章オフィサー章を授与された。

2019年、クラーマーは96歳で逝去した。その死後、アーレンド社はデンマークのデザインブランドHAYと協働し、彼の代表作である「リヴォルトチェア」と「リザルトチェア」を復刻し、新しい世代にその遺産を伝え続けている。

デザインの哲学と思想

フリソ・クラーマーのデザイン哲学は、一言で表現するならば「徹底した機能主義」に尽きる。彼は生涯を通じて一貫して「形態が機能に貢献しなければ、存在する権利はない(If form does not contribute to the function, it has no right to exist)」という信念を貫いた。この姿勢は、20世紀半ばの機能主義者たちの中でも特に極端なものとして知られている。

クラーマーにとって、優れたインダストリアルデザインとは「機能的目的、生産可能性、使用性の相互作用」が完璧に調和したものでなければならなかった。彼は「誰かが問題を提示すると、私は解決策を見出すことに限りなく触発される」と語っており、デザインを問題解決の手段として捉えていた。椅子やテーブルをデザインする際、彼はまるで人類文明がまだ始まっておらず、椅子やテーブルを史上初めてデザインしなければならないかのように、根本から考え直すアプローチを取った。

この徹底した合理性の背景には、複雑極まりないデザインプロセスと、限りない完璧主義、そして数年にわたる製品開発期間があった。クラーマー自身は「工場の中を何日も歩き回り、観察し、どうすればより効率的になるかを考えなければならない」「すべての余分な要素を見つけ出し、追跡し、切り落とし、捨て去り、残ったものを見て、残ったもので再び作業に取り掛からなければならない」と述べている。彼はまるでエンジニア、アナリスト、外科医、彫刻家を同時に兼ねたような存在だったと評された。

クラーマーは「良いインダストリアルデザインは、広範な社会的目的に応えようとするならば、できる限り匿名的でなければならない」とも主張した。これは彼のデザインが決して派手ではなく、むしろ自明なシンプルさを持つ理由を説明している。彼の作品は目立つものではないが、誰もが少なくとも一つは彼のデザインを認識している。このため、クラーマーは「最も有名な無名のデザイナー」と呼ばれることもある。

父ピート・クラーマーが労働者のための建築を手がけ、師であるマルト・スタムらがバウハウスと結びついていたように、フリソにとって戦後インダストリアルデザイナーとしての出発点は、デザインに対する率直で人間的な態度を持つことが唯一の正しい出発点であると信じることだった。彼は「月と星が既にそうしているのだから」という理由で、街灯を空ではなく夜道を歩く人を照らすようにデザインした。緑色の郵便ポストは郵便配達員が玄関先で出会うためのものだった。彼は常に「社会のためにデザインする」という姿勢を貫き、外観の質、構造、素材の選択、人間工学に注意を払った。

クラーマーのデザインはまた、効率性と耐久性への強い関心によっても特徴づけられる。彼は自身の時代を大きく先取りして、ヨーロッパにトンネルを張り巡らせ、商品と人々を高速で移動させるというアイデアを持っていた。しかしそれ以上に重要だったのは、地上の景観と環境を保全することだった。この持続可能性への先見的な視点は、現代においてますます重要性を増している。

作品の特徴とスタイル

フリソ・クラーマーの作品は、その徹底した機能主義と素材の革新的使用によって特徴づけられる。彼は伝統的な曲げ鋼管の代わりに、プラスチックに鋼板を被覆した新素材を採用するなど、従来の製造方法に挑戦し続けた。この実験的姿勢は、彼を「第一世代のオランダ・インダストリアルデザイナー」として位置づけ、後続のデザイナーたちに大きな影響を与えた。

形態的特徴

クラーマーのデザインは、無駄を徹底的に排除した明快な線と単純な幾何学的形態を特徴とする。彼の作品は「レス・イズ・モア」の理念を完璧に体現しており、透明な構造が設計意図を率直に表現している。一見するとシンプルに見えるが、その背後には膨大な思考と努力が注がれている。

特に椅子デザインにおいて、クラーマーは人間工学と快適性を最優先した。座面は穏やかに湾曲し、背もたれは軽くカップ状に成形されることで、最小限の素材で最大の快適性を実現している。この骨格的でインダストリアルな形態は、最大限の快適性と人間工学的サポートを最小限の素材で提供するという、彼の機能優先デザインの完璧な表現である。

素材とプロダクション

クラーマーは素材の革新者でもあった。リヴォルトチェアでは、従来の曲げ鋼管の代わりに、プラスチックの脚に鋼板を被覆する新しい技術を採用した。この方法は安価で生産が容易であり、リヴォルトは工業的に大量生産された最初期の家具の一つとなった。軽量で、華奢でありながら、ほぼ破壊不可能な構造は、戦後オランダを近代化する上で重要な役割を果たした。

また、成形合板とスチールの組み合わせは、チャールズ&レイ・イームズの同時代の作品から明らかに影響を受けているが、クラーマーは独自の技術的解決法を開発し、ヨーロッパの生産環境に適応させた。彼の作品は単なるデザインの革新ではなく、生産技術の革新でもあったのである。

人間工学と機能性

クラーマーのデザインプロセスにおいて、人間工学は常に中心的な位置を占めていた。彼が1972年にデザインしたMEHESオフィスシステムは、その頭文字が示すように、Mobility(可動性)、Efficiency(効率性)、Humanisation(人間化)、Environment(環境)、Standardisation(標準化)という五つの柱に基づいており、これらは今日でもアーレンド社のデザインポリシーの基礎となっている。

彼の学校用机やオフィス家具は、長時間の使用に耐える快適性と、様々な体格の使用者に対応する調整可能性を備えていた。これらの製品は単に機能するだけでなく、使用者の健康と生産性を向上させることを目的としていた。

タイムレスな普遍性

クラーマーのデザインのもう一つの特徴は、その原型的(archetypal)な性格である。彼の作品はしばしば、そのカテゴリーにおける最も純粋で本質的な形態として評価される。リヴォルトチェア、リザルトチェア、ファセットテーブル、MEHESオフィスシステムなど、これらはすべて、過剰な装飾や一時的な流行を排し、純粋な機能から導き出された形態である。

この普遍性こそが、クラーマーのデザインが半世紀以上を経た今日でも陳腐化せず、むしろ現代的であり続ける理由である。あるキュレーターは「フリソ・クラーマーは、本当に新しい解決策を生み出した数少ないオランダ人デザイナーの一人だった」と評している。

主要代表作品

リヴォルトチェア(Revolt Chair, 1953年)

フリソ・クラーマーの最も有名な作品であり、オランダ・ミッドセンチュリーデザインの真の古典とも言えるリヴォルトチェアは、1953年にデ・シルケル社のためにデザインされた。この椅子は、成形合板とスチールを用いたモダンな学校用椅子として開発され、軽量でありながら極めて頑丈な構造を実現した。

リヴォルトは1954年のミラノ・トリエンナーレで展示され、新興オランダスタイルの人気アイコンとなった。同年、この作品はブリュッセルで「シーニュ・ドール(Signe d'Or)」賞を受賞し、国際的な評価を確立した。椅子は丸みを帯びた座面が縁で穏やかに下方へカーブし、背もたれは軽くカップ状に成形されている。この形態は、チャールズ&レイ・イームズのプライウッドグループから明らかに影響を受けているが、クラーマーは従来の曲げ鋼管パイプの代わりに、プラスチック芯材に鋼板を被覆するという革新的な技術を採用した。

この製造方法は安価で容易であり、リヴォルトは工業的に大量生産された最初の家具の一つとなった。軽量で、華奢でありながら、ほぼ破壊不可能な特性により、戦後の学校、オフィス、そして一般家庭へと世界中に広まった。かつてオランダの政府庁舎や大学では至る所で見られた椅子であり、今やオランダ・デザインのアイコンとして認識されている。博物館では、リヴォルトチェアはしばしばジャン・プルーヴェのスタンダードチェアと並べて展示されるが、これは決して偶然ではない。

生産は数十年間中断されていたが、2004年にアーレンド社により復刻され、2019年のクラーマーの死後には、アーレンドがデンマークのHAYと協働して再び市場に投入した。リヴォルトチェアはオランダ・デザイン界における最も重要な遺産の一つとして、今なお生産され続けている。

リザルトチェア(Result Chair, 1958年)

1958年、フリソ・クラーマーは著名なオランダ・モダニストであるヘリット・リートフェルトの息子、ヴィム・リートフェルト(Wim Rietveld)と協働し、「リザルトチェア」を創作した。この椅子は、リヴォルトの要素とリートフェルトのピラミッドシリーズの形態を融合させたものであり、両者の設計哲学の統合を示している。

リザルトチェアは、バーチ材の成形合板の座面と背もたれを持ち、灰色の鋼板フレームによって支えられている。軽量でスタッキング可能な構造は、学校やオフィスでの大量使用を想定したものであり、1959年にシーニュ・ドール賞を受賞した。この椅子もまた、工業生産における効率性と人間工学的快適性の完璧なバランスを示す傑作である。

リザルトチェアは数十年にわたり生産され、特に教育機関やオフィス環境で広く採用された。その普遍的デザインは時代を超越し、今日でもアーレンドとHAYによって生産されている。

リプライ製図台(Reply Drafting Table, 1958年)

ヴィム・リートフェルトとの協働によるもう一つの傑作が、1958年にアーレンド・デ・シルケル社のためにデザインされた「リプライ(Reply)」製図台である。この製図台は、作業面が二つのポイントで旋回し、オフィスデスク、スタンディングデスク、あるいはその中間のあらゆる形態に調整可能という革新的な機構を持っていた。

ジャン・プルーヴェからインスピレーションを受けたこのデザインは、1963年にブリュッセルで権威あるシーニュ・ドール賞を受賞した。木製天板とエレガントな金属フレームの組み合わせは、機能性と美的洗練の完璧なバランスを示している。リプライ製図台は、建築家やデザイナーの間で高く評価され、オランダ戦後デザインにおける重要な位置を占めている。

リフォームテーブル(Reform Table, 1955年)

1955年、クラーマーは彼の受賞作であるリヴォルトチェアと組み合わせるために「リフォームテーブル」をデザインした。このテーブルは、明快な線と機能的な構造を持ち、プルーヴェ風の脚部と金属フレームが特徴である。最大モデルのリフォームテーブルは特に希少で、ペトロールブルー版などは今日コレクターズアイテムとして高い価値を持つ。

ファセットテーブル(Facet Table, 1964年)

1964年にデザインされたファセットテーブルは、モジュラーシステムの先駆的な例である。明快な線とタイムレスでミニマリストなデザインが特徴で、ブレイクアウトエリアや非公式な会議に最適な製品として設計された。テーブルは簡単に組み立て、分解、調整、拡張が可能であり、柔軟なオフィス環境のニーズに対応している。

MEHESオフィスシステム(MEHES Office System, 1972年)

1972年、クラーマーはアーレンド/ODA社のために「MEHESオフィスシステム」をデザインした。MEHESとは、Mobility(可動性)、Efficiency(効率性)、Humanisation(人間化)、Environment(環境)、Standardisation(標準化)の頭文字をとったものであり、これらの五つの柱は今日でもアーレンド社のデザインポリシーの基礎となっている。

このモジュラーで人間工学的なオフィス家具シリーズは、オフィスワーカーの生産性向上を目指し、効率性、可動性、その他の特性を優先して設計された。MEHESシステムは、近代的なオフィス環境に理想的であり、クラーマーの「社会のためにデザインする」という哲学の集大成でもあった。

エウロイカシリーズ(Euroika Series, 1963年)

1963年、クラーマーは高級ベッドメーカーであるアウピング(Auping)社のために「エウロイカシリーズ」をデザインした。このシリーズには、ベッド、ベッドキャビネット、テーブル、椅子、鏡、トイレキャビネットが含まれており、完全なベッドルーム環境を構成するものであった。

エウロイカベッドは、黒色塗装のスチールフレームにテーパード脚、スプリングシート、チーク材合板の端部、そして浮遊式ナイトスタンドを備えている。美しく成形されたフォルムと、チーク材と黒色金属の美しいコントラストが特徴である。このシリーズの製品はすべて非常に希少で、今日では高い価値を持つコレクターズアイテムとなっている。

アリアドネシリーズ(Ariadne Series, 1954年)

1954年、クラーマーはアウピング社のために「アリアドネシリーズ」のイージーチェアとデイベッドをデザインした。金属フレームにチーク材のアームレスト、そしてファブリックの座面と背もたれを持つこれらの椅子は、戦後モダニズムの優れた例として評価されている。

アリアドネシリーズは生産期間が限定的であったため、今日では極めて希少であり、オリジナルコンディションのものは特に高く評価されている。一部の椅子はローズウッドのアームレスト、他はブナ材のアームレストを持つなど、バリエーションが存在する。

クシェットデイベッド(Couchette Daybed, 1965年)

1965年にアウピング社のためにデザインされたクシェットデイベッドは、エレガントなフレームと快適なクッションを備えた洗練された作品である。オリジナルのフレームに新しく張り替えられたマットレスとクッションの組み合わせは、クラーマーのデザインが時代を超えて愛され続けることを証明している。

公共空間のための作品

クラーマーは家具デザインにとどまらず、公共空間のための製品も多数デザインした。彼の緑色の郵便ポストはオランダの玄関先で郵便配達員を迎え、1960年にデザインした「ストラートランターン(Straatlantaarn)」街灯はハーグの街路を照らした。この街灯は、月と星が既に空を照らしているのだから、街灯は夜道を歩く人々を照らすべきだという彼の実用的な考え方を体現している。

また、低い背もたれと高い背もたれを持つ二種類のコンクリート製ベンチをデザインし、これらはデフェンテル、スキポール空港、ホーン、アムステルダムなど、オランダ各地の公共空間に設置された。これらの作品は、クラーマーが常に「社会のためにデザインする」という姿勢を持ち続けたことを示している。

産業製品

1958年、クラーマーはダーヴォ(Davo)社のために「ダーヴォロンデ(Davoronde)」オイルヒーターをデザインした。楕円形の形状はスタイリッシュであり、省スペースという機能的利点を持っていたが、商業的には大きな成功を収めることはなかった。しかしこの作品は、クラーマーが家具に限らず、幅広い産業製品のデザインに取り組んでいたことを示している。

FKSスタッカブルチェア&テーブル(1998年)

1998年、75歳を超えてもなお活動を続けていたクラーマーは、FKSスタッカブルチェアとテーブルをデザインした。この晩年の作品もまた、彼の一貫した機能主義と効率性への関心を示しており、スタッキング可能な構造は大量使用を前提とした公共空間や教育機関での使用を想定したものであった。

功績と業績

受賞歴

  • 1954年:シーニュ・ドール(Signe d'Or)賞 - リヴォルトチェア、ミラノ・トリエンナーレ
  • 1959年:シーニュ・ドール賞 - リザルトチェア
  • 1959年:シーニュ・ドール賞 - 学校用机
  • 1959年:シーニュ・ドール賞 - リヴォルト折りたたみ椅子
  • 1960年:シーニュ・ドール賞 - リポーズチェア
  • 1963年:シーニュ・ドール賞 - リプライ製図台(ヴィム・リートフェルトとの共作)、ブリュッセル
  • 1979年:ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(Royal Designer for Industry)称号授与 - ロンドン王立芸術協会(Royal Society of Arts)
  • 1994年:オラニエ=ナッサウ勲章オフィサー章(Officer in the Order of Oranje Nassau)授与

展覧会

  • 1954年:ミラノ・トリエンナーレ - リヴォルトチェア、金属製テーブル、吊り下げ式キャビネット展示
  • 1977-1978年:回顧展 - アムステルダム市立美術館(Stedelijk Museum)
  • 1991年:回顧展 - ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館(Museum Boijmans Van Beuningen)、ロッテルダム

クラーマーのデザインは、アムステルダム市立美術館やロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館のコレクションに収蔵されている。

教育・行政職

  • 1950年代:ハーグ王立芸術アカデミー(The Hague Academy for the Visual Arts)教授
  • リートフェルト・アカデミー理事
  • ブースティング(Boosting / オランダ産業建設財団)理事
  • アムステルダム美術評議会(Amsterdamse Kunstraad)メンバー
  • オランダ産業デザイン評議会(Raad voor Industriële Vormgeving)メンバー
  • 国際デザインコンソーシアム(International Design Consortium)メンバー
  • ハーグ王立芸術アカデミー客員講師
  • 多数の国際的デザイン賞の審査員

出版物

  • 1991年:『Friso Kramer Industrieel Ontwerper(フリソ・クラーマー・インダストリアルデザイン)』- Rainer Bullhorst & Rudolphine Eggink著、010 Publishers刊

主要協働企業

  • デ・シルケル / アーレンド・デ・シルケル(De Cirkel / Ahrend de Cirkel)- 1948-1963年、1971-1983年
  • トータルデザイン(Total Design)- 1963-1967/1968年(共同創設者)
  • アウピング(Auping)- 1954-1965年
  • トスペクトラム('t Spectrum)
  • ダーヴォ(Davo)
  • ヴィルカーン(Wilkhahn、ドイツ)
  • HAY(デンマーク)- 2019年以降、復刻版製造

評価と後世への影響

フリソ・クラーマーは、20世紀オランダのインダストリアルデザインを代表する巨匠として、国内外で高く評価されている。1979年に授与された「ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー」の称号は、オランダ人デザイナーとしては極めて稀な栄誉であり、彼の業績が国際的に認められていたことを示している。

デザイン史における位置づけ

クラーマーは、戦後オランダのモダニズム運動を主導した世代の中心的人物の一人である。「グート・ヴォーネン(良き生活)運動」への参加を通じて、彼はデザイナー、建築家、製造業者、小売業者、顧客間の革新的な協働を促進し、オランダ社会全体に機能的デザインを普及させることに貢献した。

あるキュレーターは彼について「フリソ・クラーマーは、本当に新しい解決策を生み出した数少ないオランダ人デザイナーの一人だった」と評している。リヴォルトチェアに代表される彼の作品は、単なるデザインの革新ではなく、生産技術と産業プロセスの革新でもあった。軽量で華奢でありながらほぼ破壊不可能な構造を持つリヴォルトは、工業的に大量生産された最初の家具の一つとなり、戦後オランダを近代化する上で重要な役割を果たした。

影響を受けたデザイナーと比較

クラーマーのデザインは、しばしばフランスの巨匠ジャン・プルーヴェと比較される。実際、博物館ではリヴォルトチェアがプルーヴェのスタンダードチェアの横に展示されることが多く、これは両者の設計哲学とアプローチの類似性を示している。両者とも、素材の本質を理解し、構造的合理性を追求し、機能と美を統合することに成功した。

また、チャールズ&レイ・イームズのプライウッドグループからの影響も明確である。しかしクラーマーは単なる模倣者ではなく、イームズのアイデアをヨーロッパの製造環境と文化的文脈に適応させ、独自の技術的解決法を開発した。この創造的解釈こそが、クラーマーをオランダ第一世代のインダストリアルデザイナーとして位置づけている。

トータルデザインの遺産

1963年にヴィム・クロウエル、ベンノ・ウィッシング、ポールとディック・シュワルツ兄弟とともに設立したトータルデザインは、オランダのデザイン史において極めて重要な役割を果たした。この事務所は、グラフィック、インダストリアル、空間デザインを統合し、「トータルデザイン」の実現を目指した。この学際的アプローチは、後のデザイン事務所のモデルとなり、今日でもトータルデザイン社は活動を続けている。

持続可能なデザインの先駆者

クラーマーのデザイン哲学は、意図せずして現代の持続可能性の概念を先取りしていた。彼の作品は、耐久性、修理可能性、タイムレスな美学を重視しており、これらはすべて持続可能なデザインの核心的要素である。リヴォルトチェアやリザルトチェアが半世紀以上を経た今日でも生産され使用され続けているという事実は、真に持続可能なデザインとは何かを示している。

また、彼が構想したヨーロッパをトンネルで結ぶ高速輸送システムのアイデアは、地上の景観と環境を保全しつつ効率的な輸送を実現するという、極めて先見的な環境意識を示していた。この視点は、気候変動と環境保全が喫緊の課題となっている21世紀において、ますます重要性を増している。

現代における再評価

2019年のクラーマーの死後、アーレンド社とデンマークのデザインブランドHAYが協働してリヴォルトチェアとリザルトチェアを復刻したことは、彼の作品が現代においても高い需要と評価を持つことを示している。これらの復刻版は、新しい世代のデザイン愛好家にクラーマーの遺産を伝える役割を果たしている。

クラーマーの「形態が機能に貢献しなければ、存在する権利はない」という徹底した機能主義は、装飾過多や一時的な流行に流されがちな現代のデザイン界に対する重要なメッセージでもある。彼の作品は、真に優れたデザインとは時代を超越し、その本質的な価値によって評価されるべきものであることを教えている。

「最も有名な無名のデザイナー」

クラーマーが「最も有名な無名のデザイナー」と呼ばれることは、彼のデザイン哲学の最も皮肉的でありながら最も深い成功を示している。彼は「良いインダストリアルデザインは、広範な社会的目的に応えようとするならば、できる限り匿名的でなければならない」と主張した。彼の緑色の郵便ポスト、街灯、学校の椅子、オフィス家具は、オランダ社会の至る所に存在し、何世代にもわたる人々の日常生活の一部となった。

これらの製品は決して目立つものではなく、むしろその自明なシンプルさによって、まるで常にそこにあったかのように感じられる。しかし誰もが少なくとも一つは彼のデザインを認識している。この普遍性こそが、クラーマーの最大の遺産であり、デザインが社会に真に貢献するとはどういうことかを示す完璧な例なのである。

作品一覧

年月 区分 作品名 ブランド
1953年 椅子 リヴォルトチェア(Revolt Chair) Ahrend de Cirkel / HAY(復刻)
1954年 椅子 アリアドネシリーズ イージーチェア(Ariadne Series Easy Chair) Auping
1954年 ベッド アリアドネ デイベッド(Ariadne Daybed) Auping
1955年 テーブル リフォームテーブル(Reform Table) Ahrend de Cirkel
1957年 家具 リヴォルト製図板(Revolt Drawing Board) Ahrend de Cirkel
1958年 椅子 リザルトチェア(Result Chair)- ヴィム・リートフェルトと共作 Ahrend de Cirkel / HAY(復刻)
1958年 家具 リプライ製図台(Reply Drafting Table)- ヴィム・リートフェルトと共作 Ahrend de Cirkel
1958年 暖房器具 ダーヴォロンデ オイルヒーター(Davoronde Oil Heater) Davo Company
1959年 家具 学校用机(School Desk) Ahrend de Cirkel
1959年 椅子 リヴォルト 折りたたみ椅子(Revolt Folding Chair) Ahrend de Cirkel
1960年 椅子 リポーズチェア(Repose Chair) Ahrend de Cirkel
1960年 照明 ストラートランターン街灯(Straatlantaarn Streetlight) ハーグ市
1963年 ベッド エウロイカ ベッド(Euroika Bed) Auping
1963年 家具 エウロイカ ベッドキャビネット(Euroika Bed Cabinets) Auping
1963年 ベッド エウロイカ デイベッド(Euroika Daybed) Auping
1963年 椅子 エウロイカ チェア(Euroika Chair) Auping
1963年 テーブル エウロイカ テーブル(Euroika Table) Auping
1963年 家具 エウロイカ 鏡(Euroika Mirror) Auping
1963年 家具 エウロイカ トイレキャビネット(Euroika Toilet Cabinet) Auping
1964年 テーブル ファセットテーブル(Facet Table)- モジュラーシステム Ahrend
1965年 ベッド クシェット デイベッド(Couchette Daybed) Auping
1968年 家具 コートスタンド(Coat Stand) De Cirkel
1972年 オフィスシステム MEHESオフィスシステム(MEHES Office System) Ahrend/ODA
1973年 椅子 AKDチェア(AKD Chair) Ahrend
1998年 椅子・テーブル FKSスタッカブルチェア&テーブル(FKS Stackable Chair and Table) 不明
年代不詳 公共家具 コンクリートベンチ(低・高背もたれ2種) デフェンテル、スキポール、ホーン、アムステルダム等の公共空間
年代不詳 公共設備 緑色郵便ポスト(Green Mailbox) オランダ郵便
年代不詳 家具 スタビラックス本棚(Stabilux Bookshelf) Ahrend de Cirkel
年代不詳 スツール 工業用スツール(Industrial Stool) Ahrend de Cirkel
年代不詳 椅子 建築用回転スツール(Architect Swivel Stool) Ahrend de Cirkel

注:上記リストは主要作品を網羅していますが、クラーマーは60年以上のキャリアで数多くの製品をデザインしており、すべてを記載することは困難です。特に学校用家具、オフィス家具、照明器具など、多数のバリエーションが存在します。

Reference

Friso Kramer | Design | Finnish Design Shop
https://www.finnishdesignshop.com/en-us/designer/friso-kramer
Friso Kramer - Designer Biography and Price History on 1stDibs
https://www.1stdibs.com/creators/friso-kramer/
Friso Kramer | Ahrend
https://www.ahrend.com/en/about-ahrend/designers/friso-kramer/
Friso Kramer - Louis Kalff Instituut
http://www.louiskalffinstituut.nl/en/friso-kramer-2/
Friso Kramer - read the fascinating bio of the Dutch designer | HAY
https://www.hay.com/footer/about/designers/details?contentGuid=abae8876-a05b-41b5-812c-3f96a67f4448
Friso Kramer – Mid Mod Design
https://midmod-design.com/designer/friso-kramer/
Buy authentic vintage furniture by Friso Kramer on Design Market
https://www.design-market.us/d/29-kramer
Friso Kramer, Designer | Archiproducts
https://www.archiproducts.com/en/designers/friso-kramer
Friso Kramer Furniture - 67 For Sale at 1stDibs
https://www.1stdibs.com/creators/friso-kramer/furniture/
Buy Friso Kramer furniture online at Pamono
https://www.pamono.com/designers/friso-kramer
Friso Kramer | Inmod
https://www.inmod.com/friso-kramer.html
Friso Kramer | Interior Architect | Apres Furniture
https://www.apresfurniture.co.uk/friso-kramer-designer
Friso Kramer | Pyramid Shop - Connox
https://www.connox.com/designers/friso-kramer.html
Auping Designers | Auping
https://www.auping.com/en/about-auping/design/designers
Four Dutch designers you should know - Modern Times
https://www.moderntimes.com.au/journal/four-dutch-designers-you-should-know/