概要
フリソ・クラーマー(1922-2019)は、オランダのインダストリアルデザイナーである。曲げた鋼管の代わりに、薄い鋼板をプレスして折り曲げた部材で椅子の骨組みをつくる方法を用いた。1953年のリヴォルト・チェア、1958年のリザルト・チェアが代表にあたる。1963年にはトータル・デザインの設立に加わっている。
バイオグラフィー
1922年8月13日、アムステルダムに生まれた。父はアムステルダム派の建築家ピート・クラーマーである。工業学校と電気技術学校で学んだのち、応用美術の教育を受けた。
卒業後、建築家J.P.クロースの事務所と室内装飾家フランス・パウルッセンのもとで短期間働いている。1950年代には「良き生活協会(Stichting Goed Wonen)」の活動に加わった。
1953年、デ・シルケル社(のちのアーレンド)のためにリヴォルト・チェアを設計する。1958年にはヴィム・リートフェルトと組み、リザルト・チェアとリプライ製図台を手がけた。
1963年、ヴィム・クロウエル、ベンノ・ウィッシング、ポールとディック・シュワルツ兄弟とともにトータル・デザインを設立した。ハーグ王立芸術アカデミーでも教えている。2019年2月14日、アムステルダムで96歳で没した。
デザインの思想と方法
クラーマーが扱ったのは、椅子の骨組みをどの材料と加工でつくるかという問題である。当時の標準は曲げた鋼管だったが、管は曲げの限界があり、断面も一定にしかできない。彼は薄い鋼板をプレスして折り曲げる方法を選び、断面を場所ごとに変えられるようにした。
鋼板を折って骨組みにする
薄い鋼板は、そのままでは曲がってしまう。しかし折り曲げて断面を作れば、曲げに耐えるようになる。荷重の大きい位置では断面を深く、小さい位置では浅くできるため、材料を必要な場所にだけ配れる。金型さえ用意すれば加工は速く、量産にも向く。
座面と骨組みを分ける
成形合板の座面と背もたれを、鋼板の骨組みに載せる構成をとる。それぞれ別の工程で作れるため、生産の管理が単純になる。座面が破損した場合も、その部材だけを交換できる。
設計を匿名に近づける
クラーマーは、広く使われる工業製品の設計は作者の個性が表に出ないほうがよいと述べていた。学校、事務所、公共施設に大量に置かれる家具では、目立つ形は場を乱す。この立場が、装飾を持たない構成と、長期にわたる生産を両立させている。
数年かけて詰める
製品の開発には数年を要した。工場に通い、加工の条件を確かめながら寸法を決める進め方をとっている。設計者が工場の側の制約を把握していることが、この方法の前提になる。
代表作にみる方法
リヴォルト・チェア(1953年、デ・シルケル)
薄い鋼板をプレスして折り曲げた骨組みに、成形合板の座面と背を載せた椅子である。曲げ鋼管を用いないため、断面を場所ごとに変えられる。1954年のミラノ・トリエンナーレで展示された。長期にわたり生産され、2018年にアーレンドとヘイの協働で再生産されている。
リザルト・チェア(1958年)
ヘリット・リートフェルトの子であるヴィム・リートフェルトとの共同設計である。バーチの成形合板による座面と背を、灰色に塗装した鋼板の脚が支える。軽く、積み重ねができるため、学校や事務所で広く用いられた。
リプライ 製図台(1958年)
ヴィム・リートフェルトとの共同設計による製図台である。天板の角度を変えられる機構を持ち、金属の枠が木の天板を支える。ジャン・プルーヴェの家具との類似が指摘される構成にあたる。
MEHES オフィスシステム(1972年)
アーレンドのために設計した事務所家具の系列である。名称は可動性(Mobility)、効率(Efficiency)ほかの頭文字による。机、収納、間仕切りを共通の寸法体系で構成し、事務室の配置を後から変えられる。
公共のための製品
オランダの緑色の郵便受け、コンクリート製のベンチなども設計している。ベンチはデーフェンテル、スキポール空港、ホールン、アムステルダムなどに設置された。作者名が意識されずに使われる製品という位置づけにあたる。
評価と影響
クラーマーは一般に、戦後オランダのインダストリアルデザインを確立した設計者と評価されている。鋼板を折り曲げて骨組みとする方法は、当時の標準だった曲げ鋼管への代案として位置づけられる。
リヴォルト・チェアはジャン・プルーヴェのスタンダード・チェアと並べて論じられることが多い。いずれも板材の折り曲げで断面をつくる点が共通する。チャールズ・イームズの成形合板の仕事からの影響も指摘される。
1963年に設立に加わったトータル・デザインは、オランダのグラフィックデザインとインダストリアルデザインの双方に影響を残した。2018年以降、アーレンドとヘイの協働でリヴォルトとリザルトが再生産されている。
受賞・収蔵
受賞
- 1955年 シニョール・デ・ボン・グー(ベルギー、リヴォルト・チェア)
- 1979年 ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(英国王立芸術協会)
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。オランダ国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1953年 | 椅子 | リヴォルト・チェア | De Cirkel / Ahrend |
| 1954年 | 椅子・寝椅子 | アリアドネ シリーズ | Auping |
| 1955年 | テーブル | リフォーム テーブル | De Cirkel |
| 1958年 | 椅子 | リザルト・チェア(ヴィム・リートフェルトと共同) | De Cirkel / Ahrend |
| 1958年 | 製図台 | リプライ(ヴィム・リートフェルトと共同) | Ahrend de Cirkel |
| 1958年 | 暖房 | ダーヴォロンデ オイルヒーター | Davo |
| 1963年 | ベッド | エウロイカ シリーズ | Auping |
| 1964年 | テーブル | ファセット テーブル | Ahrend |
| 1965年 | 寝椅子 | クシェット デイベッド | Auping |
| 1960年代 | 公共 | 郵便受け、コンクリート製ベンチ | オランダ各地 |
| 1972年 | オフィス家具 | MEHES オフィスシステム | Ahrend / ODA |
| 1998年 | 椅子・テーブル | FKS スタッキングチェア&テーブル | Ahrend |
プロフィール
| 生没年 | 1922年8月13日〜2019年2月14日 |
|---|---|
| 出身地 | オランダ・アムステルダム |
| 国籍 | オランダ |
| 活動拠点 | アムステルダム |
| 分野 | 家具、オフィス家具、公共の製品 |
| 主な協働ブランド | Ahrend、De Cirkel、Auping、Artifort、HAY |
Reference
- Friso Kramer | Ahrend
- https://www.ahrend.com/en/
- Revolt Chair | HAY
- https://hay.dk/en/hay/designers/friso-kramer
- Auping
- https://www.auping.com/
- Stedelijk Museum Amsterdam
- https://www.stedelijk.nl/en