Ahrend(アーレンド)

Ahrendは、オランダの事務用家具メーカーである。1896年にアムステルダムで製図用品と事務用品の通信販売として始まり、鋼製家具メーカーDe Cirkelを傘下に収めたことで製造業へ移った。鋼板を打ち抜き、折り曲げて組み立てる家具を得意とし、1950年代にFriso KramerとWim Rietveldが設計した椅子で知られる。現在の運営主体はKoninklijke Ahrend B.V.(Royal Ahrend)で、Ahrend、Gispen、Techoの3ブランドを擁し、オフィス・教育・医療・店舗向けの家具製造と内装工事を手がけている。

事業と製造の実体

同社の事業は家具の製造販売にとどまらない。設計、製造、納入、内装工事に加え、使用中の家具の修理、使用済み家具の買い取りと再生、月額制での家具提供までを自社の役務として扱う。公式の発表によれば生産拠点は5か所あり、木製家具、金属製家具、椅子と張り家具、学校用家具の製造、および家具の修理・再生を分担している。

オランダ国内の主力工場はSint-Oedenrodeにある。1931年設立のAhrend Produktiebedrijf Sint-Oedenrodeを母体とする拠点で、金属加工と組立を担う。2020年に親会社は生産設備の集約を決め、CulemborgにあったGispenの生産と物流を2021年末までにこの工場へ移した。Gispenの営業とショールームはCulemborgに残されている。

木製家具は、2024年9月26日に稼働したプラハのWood Hubでのみ生産される。生産面積は7,000平方メートル、倉庫は4,000パレット分の保管能力を持ち、加工から組立までの工程が自動化されている。同社は立地の理由として、現地の木工の技能とヨーロッパ中央部という位置を挙げている。このほか、Gispenの取得に伴って中国・Taicangの工場が加わり、同地はアジア太平洋地域の統括拠点になった。

Veghelには2021年に開設したCircular Hubがある。12,000平方メートルの施設で、回収した家具の分解、部品交換、張り替え、再塗装を行い、再び市場に戻す。この拠点はGispenおよびPresikhaaf Schoolmeubelenと共同で立ち上げられたもので、開設時には年間4万5千点規模の家具を扱う想定が示された。倉庫機能を併設しているため、移転時の一時保管や建物からの什器撤去も引き受ける。

加工技術の中心は鋼板の打ち抜きと折り曲げにある。この技能は、Ahrendが1930年代から取引し、のちに傘下へ収めた板金加工のOdaと鋼製家具のDe Cirkelから引き継がれた。1958年のResultでは、1920年代の鋼製家具で広く使われていたスチールパイプではなく、打ち抜いた薄い鋼板を折り曲げた脚部が採られている。金属部材の仕上げには粉体塗装を用い、木部にはオークの突板や無垢材を組み合わせる。

環境面では、Sint-Oedenrodeの工場屋根に太陽光発電設備が置かれ、施工業者の公表によれば約4,000平方メートルに2,442枚のパネルが並ぶ。同社は1990年から工場の水とエネルギーの使用量削減を経営目標に組み入れてきたとしており、2025年には温室効果ガスの削減目標がScience Based Targets initiativeの承認を受けた。

沿革

通信販売商としての創業

創業は1896年、アムステルダムのアーレンド家の住居においてである。当時まだ未成年だったJacobus Ahrendが母の名義で会社を興し、社名はWed. J. Ahrend & Zoon(故J.アーレンド未亡人と息子商会)とされた。最初に売った品は製図台とコンパスの一式だったと同社は伝えている。取り扱いは製図用品、事務用品、測量・光学機器へ広がり、注文は主に通信販売で受けた。建築家向けの青焼き複写を請け負う部門、書店、印刷部門のAhrend-Globe、出版部門も設けられ、事務まわりの物品と役務を扱う商社の形をとった。

製造への後方統合

事務用家具が商品構成に加わったのは1926年である。当初は輸入した椅子を扱っていたが、まもなくオランダ国内の鋼製家具メーカーの製品が主力となった。仕入先となったのが、板金加工を得意とするOdaと、1934年にJan Schröferが設立したDe Cirkelである。1930年代を通じてAhrendは両社との資本関係を深め、1941年にDe Cirkelの株式の過半を取得した。商社であった同社が自社で製品を開発し生産する体制は、この買収によって整った。以後、De Cirkelの製品にはAhrend De Cirkelの名が用いられている。

戦後、De Cirkelの設計部門から1953年のRevolt、1958年のResultが生まれ、これらの設計はSigne d'Orを受けた。1967年、AhrendはOda、De Cirkelとともに一つの企業集団Ahrend Groep NVに統合される。統合後も各社はしばらく旧称のまま操業し、のちにAhrendの名へ一本化された。

国際化と上場の取りやめ

1972年、Friso Kramerの設計によるシステム家具Mehesが発表された。名称はMobility、Efficiency、Humanisation、Environment、Standardisationの頭字語で、直方体の机を前提としない構成を採り、以後の事務机の製品群に影響を残した。1984年にはNorman Foster設計の香港上海銀行本店ビルへ6,500の執務席分の什器を納入し、当時としては同社最大の受注となった。1996年、創業100年にあたりオランダ王室から「Koninklijke(王室御用達)」の称号を与えられている。

2000年、同社は同業のSamasとの合併を発表したが、これに反対する複数の大株主が動いて計画は実現しなかった。その後、投資会社のEgeriaとHALが株式を引き受ける形で上場は取りやめられ、Ahrendは独立した非上場企業として存続することになる。HALは2001年から株主に名を連ね、以後保有比率を高めていった。

事業の絞り込みと現在の資本関係

2005年12月、同社は事務用品事業Ahrend Office Products(複写事業のAhrend Reproを含む)をフランスのLyrecoへ売却した。この部門は当時の売上のおよそ半分を占めており、売却によって事業は家具と内装に絞られた。同じ年、チェコの事務用家具メーカーTechoを取得し、中東欧に生産と販売の拠点を得ている。

2015年には、HALがGispen Groupの残る株式を取得し、Ahrendと同じ持株会社の傘下に置いた。Ahrend自身の社史はこれを同社によるGispenの買収として記している。同じ年、アーネムの福祉就労事業から分離されたPresikhaaf Schoolmeubelenも取得された。学校用家具を手がけるこの会社は障害のある従業員を多く雇用しており、取得時に190人がAhrendの従業員となったと公表されている。同社は2025年1月にGispenと統合され、Gispenの名に一本化された。

現在の親会社はHAL Trustである。HALの2025年度年次報告によれば、Koninklijke Ahrend B.V.の株式の98.0%を保有し、2025年末の従業員数は常勤換算で1,131人とされている。最高経営責任者は2023年12月からRolf Verspuijが務める。

デザイナーとの協働

同社の設計体制は、外部の設計者へ個別に委嘱する方式ではなく、工場が設計者を雇い入れる方式から始まった。De Cirkelの設立者Jan Schröferは、鋼製家具で先行していたGispenに対抗できる製品を得るため、Friso KramerとWim Rietveldを自社の設計者として迎えている。Kramerは1948年から1963年までDe Cirkelに在籍し、1963年にデザイン事務所Total Designの設立に加わって一度離れたのち、1971年から1983年までAhrend Groepのアートディレクター兼スタッフとして復帰した。システム家具の系統は、この復帰後の期間に整えられている。

現在も社内に設計部門を置き、2010年に入社したMarck Haansがこれを率いる。外部との協働も並行しており、2024年の事務椅子Remodeは、UNStudio(UNS)のBen van Berkelとの共同開発として発表された。

過去の設計資産については、権利を保持したまま他社へ製造・販売を許諾する形をとる例がある。2014年にデンマークのHAYの共同創業者Rolf HayがAhrendを訪ねたことを発端に、HAYはResultとPyramidのコレクションを国際市場で製造・販売する実施権を得た。両社による再発売は2017年2月のストックホルム家具見本市で披露され、同年10月に正式発表されている。

主な製品群

製品の系統は鋼板を用いた椅子から始まる。1953年のリヴォルト・チェアが最初の量産設計にあたり、1958年のリザルト・チェアは学校向けに大量供給された。1959年のPyramidコレクションは、同じ板金の構成法を机や台へ広げたもので、椅子と卓を組で納入できるようになった。

1960年代以降は、単体の家具から事務空間全体を構成する部材へ範囲が広がる。1964年にDe Cirkelのために設計されたFacetの卓のシリーズが起点にあり、1971年以降のAhrendで拡張された。1972年のMehesでは、机、収納、間仕切りを組み合わせて執務単位を構成する方式が採られている。

1990年代からは事務椅子が主要な製品になった。1994年のAhrend 220は同社が環境配慮設計を掲げた最初の製品で、背もたれに設けた開口が特徴として知られる。2010年のAhrend 2020、2024年のRemodeがこれに続き、机では2015年のBalanceが昇降機構を備える製品として加わった。2010年代後半からは、開放的な事務室のなかに通話や集中作業のための区画を設ける製品も扱う。2019年のSilence CALL、2021年のQabinコレクションがこれにあたる。

受賞と認証

  • Signe d'Or — 1950年代のFriso KramerとWim Rietveldによる設計に対して
  • Koninklijke(王室御用達)の称号 — 1996年、創業100年にあたり授与
  • Cradle to Cradle Company Award — 2011年
  • Mixology Award「Product of the Year – Furniture」 — 2016年、Ahrend Balanceに対して
  • Red Dot Award「Best of the Best」 — Ahrend WELL Collectionに対して
  • Red Dot Award — 2025年、Ahrend Remodeに対して
  • Cradle to Cradle製品認証 — Ahrend 2020、Ahrend Balanceなど
  • Circular Economy 100(CE100)への加盟 — 2018年
  • Science Based Targets initiativeによる削減目標の承認 — 2025年

現在の展開

現在の事業は、事務所、教育施設、医療・福祉施設、店舗の四つの領域を対象とする。企業の本社移転や学校の建て替えに合わせた一括の内装工事が受注の中心にあり、個別の製品販売と並行して、設計、施工、保守、家具の資産管理までを請け負う。

企業集団としてはAhrend、Gispen、Techoの3ブランドを並立させている。Ahrendが国際市場と大型案件、Gispenがオランダ国内の教育・医療分野、Techoが中東欧を主に担い、ブランドごとに製品構成と販路を分けたまま運営されている。同社は25か国以上で事業を行っているとし、アムステルダム、Sint-Oedenrode、ブリュッセル、デュッセルドルフ、パリ、ロンドン、プラハなどにショールームを置く。

近年の事業方針は家具の循環利用に重心が移っている。Circular Hubを通じた再生家具の供給、使用済み家具の引き取り、所有ではなく利用に対して課金する提供方式がこれにあたる。2025年からは、ESGの枠組みに沿った年次報告の公表も始めている。

基本情報

ブランド名 Ahrend(アーレンド)
運営会社 Koninklijke Ahrend B.V.(Royal Ahrend)
創業 1896年
創業者 Jacobus Ahrend
本社所在地 オランダ・アムステルダム
生産拠点 オランダ・Sint-Oedenrode、オランダ・Veghel(再生)、チェコ・プラハ、中国・Taicang
事業内容 事務用家具・教育用家具の製造および販売、内装工事、家具の再生
企業形態 非上場(HAL Trustの傘下)
グループのブランド Ahrend、Gispen、Techo
公式サイト https://www.ahrend.com

Reference