ポタンス・ピヴォタントは、シャルロット・ペリアンが1938年に設計したウォールランプである。黒く塗った二本の管を逆L字に組み、壁側の付け根で水平方向に回転する。腕の先には裸の球形電球が付き、それ自体がディフューザーとして働く。
現在はイタリアのネモが「The Masters」コレクションの一つとして生産している。全長を抑えたミニ版も供給される。
特徴・コンセプト
構成は極端に単純である。壁に固定される短い縦材と、そこから水平に伸びる約2mの腕。この二本の管は構造であると同時に配線の通り道でもあり、スイッチから電球までのケーブルは管の内部を通る。露出する部品は取付板と電球だけで、それ以外に付け加えられたものがない。
腕は壁面に沿って約180度回転する。ソファの上、ベッドの脇、作業台の上と、光が必要な位置へ腕ごと振り出せるため、天井に配線がない部屋でも点光源の位置を自由に決められる。灯具そのものを動かすのではなく、支持体を動かして光源を運ぶという考え方で、ペリアンが家具に一貫して求めた可動性がそのまま照明に適用されている。
光源はE27ソケットで、ケーブル上のスイッチで調光できる。プラグ付きのため、天井への電気工事なしに設置できる。素材は鋼とアルミニウム、仕上げは黒。屋内用にあたる。
ミニ・ポタンス・ピヴォタントでは、G9ソケットとサンドブラスト仕上げのオパールガラスのディフューザーに置き換えられる。腕の張り出しが小さいため、玄関やベッドサイドなど、標準版が納まらない位置に使える。
背景
ネモによれば、ペリアンはヨットのブーム(帆の下端を支える横木)からこの形を思いついたという。マストから水平に張り出し、風向きに応じて回転する部材の動きが、そのまま壁付け照明の機構に移されている。
ペリアン自身は自伝のなかで、回転する簡素なランプを設計し、長い黒の管を逆L字に組んでスイッチから電球へ配線を導いたと記している。ネモが公表している資料では、この記述の年が1940年とされる箇所と、製品の設計年として1938年が示される箇所があり、成立時期には幅がある。
ペリアンにとって照明は装飾品ではなく、寸法と可動域を持つ道具だった。1949年に彼女が共同で立ち上げた「フォルム・ユティル(有用な形)」の運動が掲げた考え方は、この照明のような、必要な要素だけで組み立てられた器具に端的に表れている。
評価
実務上の利点は、光源の位置を後から決められる点にある。壁の一点に取り付けておけば、家具の配置換えに合わせて腕を振るだけで対応できる。配線が管に隠れるため、コードが視界に入らないのも扱いやすい。
一方で、腕が2m張り出すため、設置には長い壁面と、腕の可動域に障害物のない空間が要る。集合住宅の標準的な居室では、置ける壁が限られることも多い。電球が露出する構成のため、視線が直接光源に入る位置には向かない。
同じ「壁から腕を伸ばす」形式では、ジャン・プルーヴェのポタンスが、より細い鋼材の三角形の支持で同種の回転を実現している。ネモが手がける同じくペリアンのアプリック・ア・ヴォレ・ピヴォタンは、腕を伸ばす代わりに可動する羽板で配光を変える方式を採る。ル・コルビュジエのランプ・ド・マルセイユは、関節を持つアームと二方向のディフューザーで、直接光と間接光の両方を一台で賄う。それぞれ壁付け照明の可動という同じ課題に、別の解答を与えている。
シャルロット・ペリアンの設計思想や経歴について詳しくはシャルロット・ペリアンプロフィールページをご覧ください。
ネモの歴史や他の製品について詳しくはネモブランドページをご覧ください。
基本情報
| デザイナー | シャルロット・ペリアン / Charlotte Perriand |
|---|---|
| 設計年 | 1938年 |
| ブランド | ネモ / Nemo Lighting(The Mastersコレクション) |
| カテゴリー | ウォールランプ |
| 素材 | 鋼、アルミニウム |
| サイズ | アームの張り出し 約2,000mm |
| 可動 | 水平軸まわりに約180度回転 |
| ソケット | E27(ケーブル上のスイッチで調光) |
| 電源 | プラグ付き(電気工事不要) |
| 仕上げ | ブラック |
| 使用環境 | 屋内 |
| バリエーション | ミニ版(G9ソケット、サンドブラスト仕上げオパールガラス) |