PK71 ネストテーブル ─ 正方形で構成されたミニマルなネストテーブル
PK71は、デンマークの家具デザイナー ポール・ケアホルム(Poul Kjærholm, 1929–1980)が1957年に発表したネストテーブルである。サテン仕上げのステンレススチールとアクリルという二つの素材のみで構成され、大・中・小3つのテーブルが入れ子式に収まる。上面からも側面からも正方形が連続する構成が特徴で、家具であると同時に幾何学的なオブジェとしての性格をあわせもつ。ケアホルムが正方形というモチーフをすべての次元に展開した最初の作品として知られる。
概要
PK71は、3点のテーブルを入れ子式に格納できるネストテーブルである。サテン仕上げのステンレススチールによる立方体フレームの上に、ブラックまたはホワイトのアクリル天板を載せた簡潔な構成をとる。各テーブルの外寸は約1.5cmずつ異なり、ビスやボルトを用いずに溶接で組み上げられている。3つを重ねた状態でも正方形の連続が保たれ、個別に分離して配置すればリズミカルな空間構成をつくることができる。
デンマーク家具の主流であった木材ではなく、スチールを主要素材として選んだ点が、ケアホルムの作品の特徴である。PK71でもその方針は一貫しており、構造材として扱われることの多かったステンレススチールを、家具の造形として用いている。
特徴・コンセプト
PK71の特徴は、あらゆる方向から見て正方形となる三次元的な造形にある。ケアホルムはこの作品で正方形のモチーフをすべての次元に展開し、後のPK54ダイニングテーブルのベースにもつながる立方体の構成を示した。
素材の選択
ケアホルムは、それぞれの素材の性質を追究したうえで、デザインに適した素材を選ぶデザイナーであった。PK71の天板にアクリルが採用されたのは、軽量性(細いスチールフレームに対して大理石では重すぎる)、加工精度(枠にかかる部分の切り欠き加工に精密さが求められる)、耐久性という観点から導かれた選択と考えられている。
溶接による一体構造
PK71の角鋼フレームは、余計な金具を用いず溶接で接合されている。極限まで細く仕上げたスチールで正確な正方形を実現するために、溶接という技法が用いられた。天板のアクリルは小口に溝が施され、見え掛かりが薄く仕上がっている。
自由な配置と彫刻性
3つのテーブルは、連続的に並べたり、離して配置したり、重ねてひとつのオブジェとしたりと、使い方の自由度が高い。ケアホルムは天板を外したフレームだけを積み重ねて見せることがあったと伝えられ、PK71のデザインの要点がフレームの造形そのものにあることをうかがわせる。
生産の経緯
PK71は、1957年に製造パートナーであるアイヴァン・コルド・クリステンセン(Ejvind Kold Christensen)のもとで生産が始まった。コルド・クリステンセンは1955年から1980年のケアホルムの死去まで協働関係を続けた。1980年のケアホルムの死去、そして1982年にフリッツ・ハンセンがPKコレクションの製造と販売を継承し、以来PK71はデンマークの工房で生産され続けている。
評価
ケアホルムの家具はデザイン史において高く評価されており、PK71(ネストテーブル)はニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションに収蔵されている。またロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館をはじめ、複数の美術館にケアホルムの作品が収められている。小さなネストテーブルでありながら、素材の選択、構造の合理性、装飾を抑えた造形といったケアホルムの設計の特徴がよく表れた作品として知られる。
基本情報
| 正式名称 | PK71™ ネストテーブル / PK71™ Nesting Table |
|---|---|
| デザイナー | Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)/ デンマーク / 1929–1980 |
| デザイン年 | 1957年 |
| 製造ブランド | Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)/ デンマーク |
| 構成 | 大・中・小 3点のネストテーブル(セット販売) |
| 素材(フレーム) | サテン仕上げステンレススチール(溶接構造) |
| 素材(天板) | アクリル |
| カラーバリエーション | ブラックアクリル天板 / ホワイトアクリル天板 |
| サイズ(大) | W280 × D280 × H285 mm |
| サイズ(中) | W265 × D265 × H270 mm |
| サイズ(小) | W250 × D250 × H255 mm |
| 製造国 | デンマーク |
| 美術館コレクション | ニューヨーク近代美術館(MoMA)コレクション収蔵 |