概要
フローレンス・ノル クレデンザは、フローレンス・ノルが設計し、1961年にノルが発表した低い収納家具である。クロームめっきを施した鋼の枠の上に木の箱を載せ、天板には大理石や木を用いる。引き出しの少ないテーブル型の机と組み合わせ、その背後に置くことを前提に設計された。現在もノルが生産を続けている。
特徴・コンセプト
机の下を空けたテーブル型の机では、それまで引き出しに収めていた書類や文具の置き場が別に必要になる。このクレデンザは、その置き場を机の背後の壁際に据える低い箱として独立させたものである。
書類を受けるための内部
箱の内部は「ポジション」と呼ばれる区画に分かれ、2ポジションと4ポジションの幅がある。区画ごとに、可動棚を備えた扉付きの収納、仕切りを外せる引き出し、吊り下げ式のファイルを収めるフルエクステンションの引き出しを組み合わせる。机の引き出しが担っていたファイルと文具の収納を、そのまま引き受けるための構成である。
鋼の枠に箱を載せる
箱は床に直接置かれず、溶接した角形の鋼管で組んだ枠の上に載る。脚は箱の外周に沿って立ち、箱の底と床のあいだに空きができる。ノルは製品解説のなかで、このシリーズを近代建築の線と素材を家具の寸法に移したものと説明している。枠はクロームめっきで、光沢仕上げとつや消し仕上げがある。
天板と箱の素材
箱の側面・背面・扉・引き出しの前板は突板またはラッカー塗装で仕上げる。天板は大理石、突板、ラッカーから選べる。ノルはこのクレデンザを、机とそろえて置く低い収納と位置づけている。大理石の天板には、表面を透明な樹脂で覆って染みを防ぐ仕様と、覆わない天然仕上げの仕様がある。
エピソード
フローレンス・ノルは1964年、ブリタニカ百科事典の「商業インテリア」の項を執筆し、それ以前の役員室の典型的な配置を書き残している。机を部屋に対して斜めに置き、その背後に台を平行に据え、数脚の椅子を壁際に散らし、ガラス戸の書棚を置くというもので、背後の台はたいてい見苦しい物置き場になっていたという。
ノルとノル・プランニング・ユニットは、役員室の主な用途を人と話すことと捉え、この配置を組み直した。威圧的な執務机をやめ、引き出しの少ないテーブルデスクに替えて背後の壁と平行に置く。物の積み上がっていた背後の台の役割は、扉と引き出しで中身を隠す低いクレデンザが引き継いだ。ノルによれば、この配置を実現するために1961年に発表されたのが型番2544のクレデンザである。
その後、会議室での使用を想定し、奥行きを増して背板に換気用の開口を設けたAV仕様が加えられた。映像機器や配線を扉の内側に収めるための変更である。現在は背の高いハイ仕様もあり、ノルは執務室だけでなく食堂や寝室での使用も想定して販売している。
評価と影響
ノルの製品解説が引くところでは、デザイン史家のボビー・ティガーマンは、大きな箱を外周の細い柱で支える構成が、ミース・ファン・デル・ローエのシーグラム・ビルを思わせると指摘している。ノル自身も、ミースの影響がはっきり表れた設計としてこのクレデンザを紹介している。
溶接した角形鋼管の枠に大理石や木の天板を載せる構成は、同じシリーズのフローレンス・ノル ダイニングテーブルにも共通する。テーブル型の机としてはフローレンス・ノル エグゼクティブデスクが同じ1961年に発表されている。
収蔵
- ニューヨーク近代美術館(MoMA):Credenza、1955年頃、ウォルナット・大理石・クロームめっき鋼(収蔵番号 1270.2018)
- フィラデルフィア美術館:Credenza、1955年設計・2004年以降ノル製造、マホガニー・大理石・クロームめっき鋼(収蔵番号 2005-20-1)
両館とも設計年を1955年(頃)としており、ノルが示す1961年とは一致しない。
フローレンス・ノルの設計思想や経歴について詳しくはフローレンス・ノルプロフィールページをご覧ください。
ノルの歴史や他の製品について詳しくはノルブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | Florence Knoll Credenza(フローレンス・ノル クレデンザ) |
|---|---|
| デザイナー | フローレンス・ノル(Florence Knoll) |
| ブランド | ノル(Knoll) |
| 発表年 | 1961年(型番2544) |
| デザインの成立国 | アメリカ |
| 構成 | 2ポジション / 4ポジション / ハイ / AV仕様 |
| サイズ | 2ポジション:W95.3 × D45.7 × H64.5cm 4ポジション:W189.9 × D45.7 × H64.5cm ハイ:W90.2 × D45.1 × H109.5cm |
| 重量 | 2ポジション:約36kg(大理石天板は約109kg) 4ポジション:約45kg(大理石天板は約127kg) ハイ:約86kg |
| 主要素材 | ベース:溶接角形鋼管、クロームめっき(ポリッシュ/サテン) 本体:突板またはラッカー塗装 天板:大理石(樹脂被覆/天然)、突板、ラッカー塗装 |
| 刻印 | ベースフレームにノルのロゴとフローレンス・ノルのサイン |
Reference
- Florence Knoll Credenza | Knoll(Design + Plan)
- https://dv.knoll.com/design-plan/product/florence-knoll-credenza
- Florence Knoll Credenza | Knoll
- https://www.knoll.com/product/florence-knoll-credenza
- Florence Knoll Credenza - New Edition | Knoll International
- https://www.knoll-int.com/home/by-designer/classic-designers/florence-knoll/florence-knoll-credenza---new-edition
- Credenza, Designed 1955 | Philadelphia Museum of Art
- https://www.philamuseum.org/objects/285252
- The Museum of Modern Art (MoMA) Collection Data
- https://github.com/MuseumofModernArt/collection