デドン オービットは、アメリカのデザイナー、リチャード・フリニエが手がけ、ドイツのアウトドアファニチャーブランド Dedon から2008年に発表されたラブシートである。直径165cmの球体を切り取ったようなシェルに、開閉するキャノピーと360度回転する脚部を組み合わせた構成で、発表当時のアウトドア家具には前例のない形をしていた。日射しを追う、星空を見上げる、あるいは眺める方角を変える——座ったまま向きを変えられることが、この家具の使い方そのものになっている。
特徴・コンセプト
球状のシェルと回転機構が、オービットの中心的な仕掛けである。底部のキャスターにより、座ったまま軽く床を蹴るだけで滑らかに向きが変わる。太陽の位置に合わせる、視線を外して落ち着く、景色を切り替えるといった調整が、立ち上がらずにできる。
キャノピーは内部にアルミニウムチューブを通し、腐食に強い開閉機構を備える。片手で操作でき、閉じれば直射日光や急な雨を遮り、開いたままにすれば背もたれ側の囲いとして働く。生地はポリアクリル100%でテフロン加工が施され、撥水性と防汚性、UPF50+の紫外線遮蔽性能を備える。
座面には、ハイテク素材のバティラインファブリックで支えた円形のマットレスが載る。二人でも余裕のある寸法で、クッションを重ねたり、ペットと過ごしたりする使い方にも対応する。フレームは軽量なアルミニウム製で、静電粉体塗装によりファイバーの色に合わせた仕上げが施されている。
素材と手編みの工程
シェルには Dedon が独自に開発した合成ファイバーが用いられる。紫外線、塩水、塩素、寒暖差に耐えながら、天然ラタンに似たしなやかさと手触りを持つ素材で、ドイツの自社設備で製造される。編み込みはフィリピン・セブ島の工場で、職人が一台ずつ手作業で行う。工業素材と手仕事の組み合わせが、Dedon の製品に共通する成り立ちである。
デザインの着想
フリニエは、南カリフォルニアの自宅の庭でスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』を観たあとに、オービットの着想を得たと語っている。ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」が流れるなか、宇宙船が回転する宇宙ステーションに接近していく場面の、その滑らかな動きに惹かれたのだという。太陽や星の周りを回る惑星や衛星として構想されたという設計の出発点は、そのままこの場面から引き出されている。
評価と影響
オービットは発表以来、複数のデザイン賞を受賞している。屋外家具を庭の付属品ではなく、屋外の居間を構成する主役として扱うという Dedon の考え方を、最も分かりやすく示した製品として位置づけられてきた。
ラグジュアリーリゾートやホテル、スパ、船上のデッキなど、コントラクト空間での採用例も多い。単独で置いても空間の焦点になる形状が、こうした用途で選ばれる理由になっている。
バリエーション
2018年、オービット発表10周年を記念して「オービット XXL」が発表された。オリジナルより25%大きく、直径220cm・高さ215cm(キャノピー含む)、座面高53cm。250台の限定生産で、一台ごとに番号入りのプレートが付く。ファイバーはチョーク、キャノピーはトープという専用の二色構成が与えられている。
標準のオービットでは、ファイバーの仕上げとキャノピーの色をそれぞれ選択できる。ファイバーはナチュラル、ブロンズ、チョークなどが年代ごとに用意され、キャノピーはホワイトとトープが基本となっている。
基本情報
| 製品名 | オービット ラブシート(Orbit Loveseat) |
|---|---|
| デザイナー | リチャード・フリニエ(Richard Frinier) |
| ブランド | デドン(Dedon) |
| 発表年 | 2008年 |
| 製造国 | フィリピン(セブ島) |
| サイズ(Orbit) | 直径165cm × 高さ193cm |
| サイズ(Orbit XXL) | 直径220cm × 高さ215cm(座面高53cm)/250台限定 |
| 素材 | Dedonファイバー、アルミニウムフレーム(静電粉体塗装)、バティラインファブリック、キャノピー:ポリアクリル100%(テフロン加工・UPF50+) |
| 機構 | キャスターによる360度回転、開閉式キャノピー |