スローチェア – 繊細さで快適さを実現するラウンジチェア

スローチェアは、ロナン&エルワン・ブルレックが手がけ、ヴィトラが2006年に発表したラウンジチェアである。チューブラースチールのフレームに、精密に成型したニット素材のスリングカバーを張るという構造により、軽さと快適さを両立させている。伝統的なアームチェアの厚いクッションを薄く半透明のニット素材に置き換えることで、広々とした座面を保ちながら視覚的に軽やかな印象を生んでいる。発表以来、ヴィトラのクラシックのひとつとして定着している。

デザインコンセプト

ブルレック兄弟は、大量のフォームではなく繊細さによって快適さを実現するという方針で開発を進めた。ヴィトラから「比較的手頃な価格で、軽量かつ透明感のあるチェア」という要望を受け、タイツをカバーに応用するという発想を発展させ、耐水性・耐UV性を備えたニットポリエステル素材を用いている。

屋内外で使える点は、暮らしがテラスや庭へと広がる現代のライフスタイルに合う。美観と快適さを保ちつつ、屋外でも使える素材が選ばれている。

構造と特徴

スローチェアの構造上の特徴は、チューブラースチールのフレームに、ぴったりとフィットした靴下のようにニット素材が張られている点にある。このニットは約2ミリメートルの厚さながら、場所によって弾力を変え、張力と柔軟性の異なるゾーンをつくり出している。

4本のダイキャストアルミニウム製の脚が取り付けられ、背もたれ側の2本を延長することで腰部を支える背もたれが形づくられている。半透明のスリングカバーにより厚いクッションが不要となり、軽量でありながら広いプロポーションが実現された。薄いシートクッションと2つのバッククッションが、ニット素材の柔らかさを補っている。

1950年代の椅子を思わせる懐かしさを残しながら、透明感と軽さによって現代的な印象をまとっている。特にフレーム後方から見た延長された脚のラインは、造形的な見どころとなっている。

製作プロセス

スローチェアの開発は容易ではなかった。質感のあるニット素材をつくり、それをチューブラースチールのフレームに張り、人間工学的にも優れた形状を実現しながら、安定性と耐久性を確保する必要があった。ヴィトラは3Dテキスタイルの経験を持っていたが、スローチェアに用いる素材は、当時マットレスや自動車産業で注目されていた3Dスペーサーファブリックとは異なる独自の技術によるものである。スチール部品を慎重にカバーへ挿入し、4本のダイキャストアルミニウム製の脚を取り付けて仕上げられる。

展開とバリエーション

近年、スローチェアは同じ構造に不透明なファブリックを用いる方向でも展開された。ブークレ素材のFloccaファブリックを採用した新バージョンは、より柔らかく包み込むような外観を持ち、クッションにはリサイクルPET繊維や、消費者廃棄物由来の100%リサイクルポリエステルが使われている。あわせてスローソファも加えられた。

ヴィトラとBASFが共同開発した、経済的にリサイクル可能なポリウレタンフォーム「V-Foam」も用いられ、環境への配慮が図られている。足を伸ばしてくつろげるオットマンも用意されている。

基本情報

デザイナー ロナン&エルワン・ブルレック(Ronan & Erwan Bouroullec)
ブランド ヴィトラ(Vitra)
発表年 2006年
分類 ラウンジチェア
フレーム/カバー チューブラースチールフレーム、精密に成型されたニット素材カバー
クッション ポリウレタンフォーム、ポリエステル繊維(シートクッション1つ、バッククッション2つ付属)
ベース ダイキャストアルミニウム製(ポリッシュ仕上げまたはパウダーコート仕上げ)
素材オプション ニットファブリック、Floccaブークレファブリック
サイズ 幅950mm × 奥行930mm × 高さ890mm(座面高約330mm)
製造国 ドイツ