パンプキンチェアとは
パンプキンチェア(Pumpkin Chair)は、フランスを代表する家具デザイナー、ピエール・ポラン(Pierre Paulin)が1971年にデザインしたラウンジチェアである。フランス大統領ジョルジュ・ポンピドゥーの依頼により、パリのエリゼ宮殿のプライベートアパートメントのためにデザインされたこの椅子は、その名の通り、カボチャを思わせる有機的で豊かなフォルムが特徴である。柔らかなウレタンフォームによる包み込むような座り心地と、彫刻的でありながら愛嬌のあるシルエットが、20世紀フランスデザインを代表する一脚として今日まで評価されている。
デザインの特徴とコンセプト
パンプキンチェアの最大の特徴は、カボチャのような丸みを帯びた有機的なフォルムにある。ポランは、人体を優しく受け止める「殻」のような構造を追求し、座る人を包み込むバケットシート型の座面と背もたれを一体化させた。モールド成形されたポリウレタンフォームが身体に沿ってしなやかにフィットし、座った瞬間から深いリラクゼーションをもたらす設計となっている。
構造的には、熱成形されたABS樹脂のベースの上にポリエーテルフォームを積層し、さらに高密度のポリウレタンフォームによるコンフォート層を重ねる多層構造を採用している。縦方向に走るステッチラインがカボチャの溝を想起させると同時に、チェア全体に構造的な張りを与えており、意匠と機能が統合されている。張地はファブリックからレザーまで幅広い選択肢が用意され、ウール素材との相性がとりわけ美しいとされている。
座面から背もたれへと連続する曲面が、道具としての椅子であると同時に、空間に置かれる立体物としての存在感を与えている。
誕生の背景:エリゼ宮殿とポンピドゥー大統領
パンプキンチェアの誕生は、フランス現代デザイン史のエピソードと結びついている。1970年前後、ジョルジュ・ポンピドゥー大統領とその夫人クロードは、フランスのデザイン産業を活性化させる意図のもと、エリゼ宮殿のプライベートアパートメントを刷新するプロジェクトを立ち上げた。この計画を任されたのが、当時すでにアーティフォート社での椅子デザインにより国際的な評価を得ていたピエール・ポランであった。
ポランはおよそ3年をかけて、エリゼ宮殿の居間、食堂、喫煙室、展示室を一新した。伝統的な宮殿の空間に、曲面で覆われた壁面やスモークガラスのブックシェルフ、そしてパンプキンチェアをはじめとする未来的な家具群を配置した。パンプキンチェアはその空間の中心的な存在として設置され、国家元首のプライベートな寛ぎの場を彩った。
当初、パンプキンチェアはアルファ社(Alpha)により少数が生産されたのみで、1973年に生産を終了した。その後、オリジナルはエリゼ宮殿のコレクションとして保管されていたが、2007年から2008年にかけて、ポラン自身の監修のもとリーン・ロゼ社から一般向けにリイシューされることとなった。このリイシューにあたり、ポランはオリジナルのデザインエッセンスを継承しつつ、現代の居住空間に適合するよう快適性と製造工程の最適化を図った。
評価と影響
パンプキンチェアは、ピエール・ポランの造形言語を代表する作品として評価されている。フランスの国家的プロジェクトから生まれたという出自の希少性、カボチャという自然物に着想を得た有機的なフォルム、そして量産技術と手仕事の組み合わせによる座り心地が一体となり、20世紀後半のフランスデザインにおける到達点の一つと位置づけられている。
デザイン界では、ポランが家具の使われ方や快適性の概念を更新し、後進のデザイナーに影響を与えた先駆者として広く認識されており、パンプキンチェアはその代表作の一つに数えられている。
2008年のリイシュー以降、パンプキンチェアはリーン・ロゼのコレクションを代表する存在として、世界のインテリア愛好家やコレクターから支持を集めている。アームチェア、ハイバックアームチェア、スイベル(回転)タイプ、ラブシート、ソファ、オットマンとコレクションが拡充され、多様な空間とライフスタイルに対応するラインナップが整えられている。
コレクション一覧
リーン・ロゼ社から展開されるパンプキンコレクションは、以下のラインナップで構成されている。いずれもポランが確立した有機的なフォルムを共有しながら、用途や空間の条件に応じて選択できる。
- パンプキン アームチェア — W1050×D830×H700mm(座面高370mm)
- パンプキン スイベルアームチェア — W1050×D830×H700mm(座面高370mm)360°回転機構付
- パンプキン アームチェア ハイバック — W1050×D830×H830mm(座面高370mm)
- パンプキン スイベルアームチェア ハイバック — W1050×D830×H830mm(座面高370mm)360°回転機構付
- パンプキン スモールセティ(ラブシート) — W1780×D830×H700mm(座面高370mm)
- パンプキン ラージセティ(3人掛けソファ) — W2500×D830×H700mm(座面高370mm)
- パンプキン フットスツール — 直径740mm×H370mm
基本情報
| 正式名称 | パンプキン / Pumpkin |
|---|---|
| デザイナー | ピエール・ポラン(Pierre Paulin)/ フランス / 1927–2009 |
| デザイン年 | 1971年 |
| 製造ブランド | Ligne Roset(リーン・ロゼ) |
| 製造国 | フランス |
| カテゴリ | ラウンジチェア / アームチェア |
| 主要素材 | ベース・中間部:ポリエーテルフォーム(30 kg/m³)、熱成形ABS樹脂ベース 座面・背もたれ:モールド成形ポリウレタンフォーム(35 kg/m³)+ コンフォート層 キルティング:ポリエステル100g/m²(座面・背部)、ポリエーテルフォーム(外装部) |
| サイズ(アームチェア) | W1050×D830×H700mm / 座面高:370mm |
| 重量 | 約16kg(梱包含む約18〜21kg) |
| 張地 | ファブリック(ウール、アルカンターラ、ベルベット、シェニール等多数)/ レザー / モノカラー仕様 |
| カバー | プロフェッショナルによる取り外し可能 |
| バリエーション | アームチェア / スイベルアームチェア / ハイバック / スイベルハイバック / ラブシート / 3人掛けソファ / フットスツール |
| 参考価格帯(税込目安) | アームチェア1P:約206,800円〜(ファブリックランクにより変動) 米国参考価格:USD 2,560〜 |
| 納期 | 受注生産(ご注文後約1〜2ヶ月、生地ランク・在庫状況により変動) |
| 所蔵 | パリ・エリゼ宮殿旧蔵(初期プロダクション) |