概要
ピエール・ポーラン(1927-2009)は、フランスの家具デザイナーである。金属の骨組みに発泡材を載せ、継ぎ目のない伸縮布で覆う椅子を、オランダのアーティフォートで発表した。マッシュルーム、リボン、タンなどがこの方法による。ポンピドゥー、ミッテラン両大統領のもとでエリゼ宮の内装も手がけている。
バイオグラフィー
1927年7月9日、パリに生まれた。彫刻家を志してヴァロリスで陶芸を、ブルゴーニュで石彫を学んだが、右腕の負傷で断念した。その後パリのカモンド学校(当時の名称は Centre d'art et de techniques)で学び、1950年に卒業した。家具デザイナーのマルセル・ガスコワンのもとで働いている。
1950年代にはトネットのフランス法人でも仕事をし、1957年に同社と伸縮素材に関する特許を出願した。1958年にコー・リャン・イー(Kho Liang Ie)とハリー・ワーヘマンス(Harry Wagemans)に出会い、アーティフォートとの協働が始まった。
ポンピドゥー大統領のもとでエリゼ宮の私的居室の内装を、のちにミッテラン大統領の執務室を手がけた。1975年に ADSA を共同設立し、1995年に離れた。2009年6月13日、モンペリエの病院で没した。同年11月、英国王立技芸協会の RDI(Royal Designer for Industry)を追贈されている。
デザインの思想と方法
ポーランの椅子の多くは、金属の骨組みに発泡材を載せ、伸縮する一枚の布で全体を覆う構成をとる。2008年のMoMAによるインタビューで、ポーランは当時の椅子の製造を原始的だと考え、新しい工程を考えようとしていたと述べている。
伸縮する布で覆う
トネット時代から、水着に使う伸縮生地を伝統的な作りの椅子に張る試みをしていた。伸縮する布は曲面に沿うため、継ぎ目のない一枚のカバーで椅子全体を覆える。
若い世代の暮らしに向ける
同じインタビューでポーランは、タンを若い世代の生活様式に訴えるものとして考えていたと語り、当時の若者は低い位置での暮らしを好んだとしている。
アーティフォートの歴史や他の製品について詳しくはアーティフォート ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
オレンジスライス(1960年、アーティフォート)
同じ形の2枚の殻を、一方を座、もう一方を背と肘掛けとして、鋼製の脚に取り付けた椅子である。殻の形が果実の切片を思わせることから名が付いた。→オレンジスライスチェア
マッシュルーム F560(アーティフォート)
鋼の骨組みを発泡材で包み、継ぎ目のない一枚の伸縮布で覆った肘掛け椅子である。アーティフォートは、構造を一つの外形の中に完全に隠した最初のデザインと位置づけている。→マッシュルームチェア
リボン F582(1966年、アーティフォート)
帯がねじれながら輪を描く、連続した一つの形の椅子である。→リボンチェア
タン F577(1967年、アーティフォート)
鋼管の骨組みに、伸縮布で覆った発泡材を載せた低い椅子である。座る位置が床に近い。→タンチェア (F577)
エリゼ宮の内装
ポンピドゥー大統領の私的居室と、ミッテラン大統領の執務室を手がけた。パンプキンは1971年にポンピドゥーの私的居室のために設計された椅子で、2008年からリーン・ロゼが生産している。→パンプキンチェア
評価と影響
アーティフォートは現在も、オレンジスライス、マッシュルーム、リボンなどポーランの椅子を製品として扱っている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。
- MoMA リング アームチェア(モデル273、1953-54年) 収蔵番号 449.2008
- MoMA マッシュルーム チェア(モデル560、1963年) 収蔵番号 451.2008
- MoMA バタフライ チェア(モデル675、1963年) 収蔵番号 450.2008
- MoMA チェア(モデル300、1965-66年) 収蔵番号 1230.1968
- MoMA リボン チェア(モデル582、1966年) 収蔵番号 452.2008
- MoMA タン チェア(モデル577、1967年) 収蔵番号 453.2008.1-3、1231.1968
- V&A モデル582(1965年) 収蔵番号 CIRC.303-1970
- Met B-167-3 チェア(1959年) 収蔵番号 1986.236.1
- Met B-167-3 オットマン(1959年) 収蔵番号 1986.236.2
- AIC タン チェア(1967年) 収蔵番号 2015.603
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1960年 | 椅子 | オレンジスライスチェア | Artifort |
| 椅子 | マッシュルームチェア | Artifort | |
| 1966年 | 椅子 | リボンチェア | Artifort |
| 1967年 | 椅子 | タンチェア (F577) | Artifort |
| ソファ | ABCD ソファ | Artifort | |
| 1971年 | 椅子 | パンプキンチェア | Ligne Roset |
| 内装 | エリゼ宮 大統領私的居室(ポンピドゥー) | パリ、フランス | |
| 1975年 | 椅子 | パシャ ラウンジチェア | Gubi |
| 内装 | エリゼ宮 大統領執務室(ミッテラン) | パリ、フランス |
プロフィール
| 生没年 | 1927年7月9日〜2009年6月13日 |
|---|---|
| 出身地 | フランス・パリ |
| 国籍 | フランス |
| 活動拠点 | パリ |
| 分野 | 家具、インテリア |
| 主な協働ブランド | Artifort、Thonet、Ligne Roset、Gubi |
Reference
- Pierre Paulin RDI | Artifort
- https://www.artifort.com/Living/Designers/Pierre-Paulin-RDI
- Mushroom | Artifort
- https://www.artifort.com/Collection/Armchairs/p/mushroom
- Orange Slice | Artifort
- https://www.artifort.com/Collection/Armchairs/p/orange-slice
- Ribbon | Artifort
- https://www.artifort.com/Collection/Armchairs/p/ribbon
- Pierre Paulin | Centre Pompidou
- https://www.centrepompidou.fr/en/program/calendar/event/c75G87d
- The Museum of Modern Art Collection: Tongue Chair (model 577)
- https://www.moma.org/collection/works/114384
- The Metropolitan Museum of Art: "B-167-3" Chair
- https://www.metmuseum.org/art/collection/search/484435
- Pierre Paulin | Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Pierre_Paulin
- Pierre Paulin Biography | Demisch Danant
- https://www.demischdanant.com/designers/pierre-paulin/biography
- Pumpkin chair by Pierre Paulin for Ligne Roset | Dezeen
- https://www.dezeen.com/?p=2043867
- Pacha Lounge Chair | Gubi (Twenty Twenty One)
- https://www.twentytwentyone.com/products/gubi-pierre-paulin-pacha-lounge-chair