概要
ピエール・ポーラン(1927-2009)は、フランスの家具デザイナーである。金属の骨組みに伸縮する布を被せるという構成をとり、椅子の輪郭から接合部を消した。1960年代のマッシュルーム、リボン、タンなどがこの方法による。1970年代にはフランス大統領官邸の内装も手がけている。
バイオグラフィー
1927年7月9日、パリに生まれた。当初は彫刻と陶芸を学んだが、事故で腕を傷めて断念している。パリのカモンド学校で家具の設計を学んだ。
1950年代からトネットとメゾン・トゥルーのために設計を行った。1958年からオランダのアーティフォートと協働を始めている。
1960年代、伸縮する布を骨組みに被せる構成による一連の椅子を発表した。マッシュルーム、リボン、タンなどがこの時期にあたる。
1971年から1972年にかけてフランス大統領官邸の私的空間を、1984年には同官邸の執務室を手がけた。2009年6月13日に没している。
デザインの思想と方法
張り家具は通常、木の骨組みに詰め物を重ね、布を張り込む。この工程では、布の縁を折り込んで留める箇所が必ず生じ、そこに線が現れる。ポーランが用いたのは、伸縮する布を筒状に縫って骨組みに被せるという方法で、留める箇所が座面の下だけになる。
筒状の布を被せる
ジャージ素材は伸縮するため、複雑な曲面にも皺なく沿う。あらかじめ筒状に縫っておき、骨組みに被せて下端だけを留める。上面に縫い目が現れないため、輪郭が一続きの面になる。
骨組みを鋼線でつくる
骨組みには曲げた鋼線と発泡材を用いる。布が形を担うわけではないので、骨組みが輪郭を決める。線材のため軽く、複雑な三次元の曲線も作れる。
布を交換できるようにする
被せる構成では、布が傷んでも骨組みは残る。下端の留めを外せば交換できるため、詰め物ごと張り替える必要がない。
座る姿勢を限定しない
タンやパチャのような低い椅子は、背もたれの高さも肘掛けも持たない。座る向きも姿勢も一つに定まらず、床に近い位置で身体を預ける形になる。
アーティフォートの歴史や他の製品について詳しくはアーティフォート ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
オレンジスライス(1960年、アーティフォート)
2枚の殻を金属の枠に取り付けた椅子である。殻の輪郭が果実の切片を思わせることから名が付いた。→オレンジスライスチェア
マッシュルーム F560(1963年、アーティフォート)
鋼線の骨組みに発泡材を巻き、筒状に縫った布を被せた椅子である。留めるのは座面の下だけで、上面に縫い目が現れない。輪郭が一続きの面になる。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号451.2008)。→マッシュルームチェア
リボン F582(1966年、アーティフォート)
帯が一回ねじれて輪を描く形の椅子である。骨組みは連続した曲線をとり、布はその全体を覆う。ニューヨーク近代美術館とV&Aが収蔵している。→リボンチェア
タン F577(1967年、アーティフォート)
背もたれも肘掛けも持たない低い椅子である。床に近い位置で身体を預ける形になり、座る向きも姿勢も一つに定まらない。ニューヨーク近代美術館が4点、シカゴ美術館が1点を収蔵している。→タンチェア (F577)
フランス大統領官邸の内装(1971-72年、1984年)
1971年から1972年にかけて私的空間を、1984年には執務室を手がけた。家具と内装を同時に設計する仕事にあたる。
評価と影響
ポーランは一般に、1960年代のフランスの家具設計を代表する人物と評価されている。伸縮する布を骨組みに被せることで、輪郭から接合部を消すという構成が特徴にあたる。
オランダのアーティフォートとの協働は1958年から続いた。同社は現在も一連の椅子の生産を続けている。
1970年代から80年代にかけて、フランス大統領官邸の内装を二度手がけた。家具の設計者が公共の空間を担当した例にあたる。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。
- MoMA リング アームチェア(モデル273、1953-54年) 収蔵番号 449.2008
- MoMA マッシュルーム チェア(モデル560、1963年) 収蔵番号 451.2008
- MoMA バタフライ チェア(モデル675、1963年) 収蔵番号 450.2008
- MoMA チェア(モデル300、1965-66年) 収蔵番号 1230.1968
- MoMA リボン チェア(モデル582、1966年) 収蔵番号 452.2008
- MoMA タン チェア(モデル577、1967年) 収蔵番号 453.2008.1-3、1231.1968
- V&A モデル582(1965年) 収蔵番号 CIRC.303-1970
- Met B-167-3 チェア(1959年) 収蔵番号 1986.236.1
- Met B-167-3 オットマン(1959年) 収蔵番号 1986.236.2
- AIC タン チェア(1967年) 収蔵番号 2015.603
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1960年 | 椅子 | オレンジスライスチェア | Artifort |
| 1963年 | 椅子 | マッシュルームチェア | Artifort |
| 1966年 | 椅子 | リボンチェア | Artifort |
| 1967年 | 椅子 | タンチェア (F577) | Artifort |
| 1971年 | 椅子 | パンプキンチェア | Ligne Roset |
| 1971-72年 | 内装 | エリゼ宮 私的空間 | パリ、フランス |
| 1975年 | 椅子 | パシャ ラウンジチェア | Gubi |
| 1984年 | 内装 | エリゼ宮 執務室 | パリ、フランス |
| 1980年代 | ソファ | ABCD ソファ | Artifort |
プロフィール
| 生没年 | 1927年7月9日〜2009年6月13日 |
|---|---|
| 出身地 | フランス・パリ |
| 国籍 | フランス |
| 活動拠点 | パリ |
| 分野 | 家具、インテリア |
| 主な協働ブランド | Artifort、Ligne Roset、Gubi |
Reference
- Pierre Paulin | Artifort
- https://www.artifort.com/en/designers/
- Paulin, Paulin, Paulin
- https://www.paulinpaulinpaulin.com/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection