概要
CH88は、ハンス・J・ウェグナーが1955年に設計したダイニングチェアである。スウェーデン・ヘルシンボリで開かれた国際博覧会「H55」のために描かれたが、当時は試作にとどまった。カール・ハンセン&サンが2014年に製品化し、板座のCH88Tと張座のCH88Pの2種を展開している。
特徴・コンセプト
木とスチールを組み合わせる
楕円形の木製座面と、曲げ木による背もたれを、直線的なスチールのフレームが支える。ウェグナーは木を主材とする設計者として知られるが、この椅子では脚部を金属に置き換えている。木で同じ細さの脚をつくれば強度が足りず、スチールにすることで軽さと剛性を両立させた。この選択により、積み重ねができる椅子にもなっている。
反り返る背もたれの端
背もたれは蒸気曲げ加工による無垢材で、身体を受ける曲面を描く。その両端は緩やかに上方へ反り返り、肘を預けられる高さで終わる。肘掛けを別部材として取り付けるのではなく、背もたれの輪郭を延長することで同じ役割を果たしている。鞄を掛ける場所としても働く。
二つの座面仕様
CH88Tは木の板座で、積み重ねに対応する。CH88Pは座面をファブリックまたはレザーで張った仕様である。背もたれの木材はビーチ材またはオーク材から、フレームはステンレススチール、ブラックの粉体塗装、クロームから選べる。
エピソード
1955年のヘルシンボリ国際博覧会(H55)は、現代の生活環境を主題とした国際展示会であった。ウェグナーはこの機会に、木材とスチールを組み合わせる構成に取り組んでいる。しかし無垢材の曲げ加工とスチールフレームの接合を両立させる工程は当時の製造技術では量産に向かず、CH88は試作の段階にとどまった。
2014年、カール・ハンセン&サンはウェグナー生誕100年にあたってこの椅子を製品化した。製造技術の進展により、背もたれの曲面の再現と量産が両立できるようになったためである。製品化にあたり、座面・アームレスト・背もたれの高さが現在の生活に合わせて調整され、積み重ねの機能も加えられた。同年のストックホルム家具フェアで発表されている。
評価と影響
ウェグナーが生涯に手がけた椅子のなかでは、木以外の素材を構造に用いた例にあたる。同じ時期に手がけたCH445 ウイングチェアでも脚部にステンレススチールが用いられており、素材を組み合わせる関心が共通して見られる。住宅のほか、レストランやオフィスでも用いられる。
ハンス・J・ウェグナーの設計思想や経歴について詳しくはハンス・J・ウェグナープロフィールページをご覧ください。
カール・ハンセン&サンの歴史や他の製品について詳しくはカール・ハンセン&サンブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | CH88 チェア(CH88T:板座/CH88P:張座) |
|---|---|
| デザイナー | ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner) |
| ブランド | カール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Søn) |
| 発表年 | 1955年(H55のための試作)/2014年 製品化 |
| デザインの成立国 | デンマーク |
| 分類 | ダイニングチェア |
| 主要素材 | 背もたれ・座面:オーク材またはビーチ材/フレーム:ステンレススチール、ブラック粉体塗装、クローム |
| サイズ | 幅57cm × 奥行44.5cm × 高さ76.5cm、座面高44.5cm |
| スタッキング | 可(CH88T) |
Reference
- CH88T | Chair | Carl Hansen & Søn
- https://www.carlhansen.com/en/en/collection/chairs/dining-chairs/ch88t