概要

スツール60は、アルヴァ・アアルトが1933年に発表した3本脚のスツールである。座面と脚だけで構成され、脚を直角に曲げるために開発された「L-レッグ」の技法が用いられている。1933年11月にロンドンで開かれた展覧会「Wood Only」で公開され、現在はアルテックがフィンランドで製造している。

特徴・コンセプト

L-レッグという解き方

木を直角に曲げるには、繊維が折れないよう別の方法が要る。L-レッグでは、まっすぐな無垢材の一端に複数のスリットを刻み、できた隙間に薄板と接着剤を差し込む。これを加熱して曲げると、繊維が層ごとにずれながら曲がるため割れない。曲げ終えたあと、余分な部材を落とし、隙間を埋めて仕上げる。

この技法により、脚と座面を金具でつながずに接合できる。座面の裏に脚の上端をそのまま留めるだけで、荷重は曲がりの部分を通って床へ流れる。当時主流だった鋼管の家具と同じ構造上の課題を、木材で解いたことになる。

3本脚と積み重ね

3点で接地するため、床に多少の凹凸があってもがたつかない。脚の数が少ないぶん、床面の見通しも残る。一方、座面の縁に偏った荷重をかけると倒れやすいという性質もある。1934年からは4本脚のE60も作られている。

脚が座面の縁に沿って取り付けられているため、複数脚を重ねると自然にらせんを描いて積み上がる。使わないときにまとめて収められることは、公共施設や教育施設で使われる条件になっている。

バーチ材と仕上げ

材にはフィンランド産のバーチが用いられる。明るい色調ときめの細かい木目を持ち、加工しやすい。座面の仕上げは、木地を活かすラッカーのほか、色付きのラッカー、リノリウム、ラミネートから選べる。リノリウムの仕様は1965年から生産されている。

エピソード

L-レッグは、家具職人オットー・コルホーネンとの協働のなかで生まれた。当時ヨーロッパで広がっていた鋼管家具の構造を、フィンランドで手に入る木材に置き換えるという課題から出発している。

1933年の「Wood Only」展で公開された後、当初はアアルトの家具を扱うためにイギリスで設立されたfinmar社から販売され、1934年から1935年にかけてアルテックの名での販売に切り替わった。1935年には、アアルトが設計したヴィープリ図書館の講堂に設置されている。

1935年、アルヴァ・アアルトは妻のアイノ・アアルト、マイレ・グリクセン、ニルス・グスタフ・ハールとともにヘルシンキでアルテックを設立した。社名は「Art」と「Technology」を組み合わせた造語である。同社は家具の販売だけでなく、展示会や啓蒙活動を通じてモダニズムの文化を広めることを目的として掲げていた。

評価と影響

平たく梱包して運び、簡単に組み立てられるという性質は、後の組み立て式家具に引き継がれた。90年以上を経て生産が続いており、座具としてだけでなくサイドテーブルや台としても使われている。2023年には90年を機に、L-レッグの構造を見せる仕様や、木の節を活かした仕様などの限定版が発表された。

美術館コレクション

ニューヨーク近代美術館は、バーチ材による1933年のスタッキングスツール(model 60)を収蔵番号146.1958で登録している(フィリス・B・ランバート基金による取得。高さ43.8cm、座面直径35cm)。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館も1933年の個体を収蔵番号CIRC.29-1969およびW.50A-1977で、2016年の個体を収蔵番号W.27-2016で登録している。

基本情報

名称 スツール60 / Stool 60
デザイナー アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)
ブランド アルテック(Artek)
発表年 1933年
デザインの成立国 フィンランド
分類 スツール
主要素材 フィンランド産バーチ材
構造 L-レッグ(スリットに薄板を挟んで加熱・曲げ加工)/3本脚
仕上げ ナチュラルラッカー、カラーラッカー、リノリウム、ラミネート
スタッキング 可(らせん状に積み上がる)
関連モデル E60(4本脚、1934年〜)
収蔵 ニューヨーク近代美術館(146.1958)

Reference