概要
カイ・ボイスンの木製動物は、デンマークの銀細工師カイ・ボイスンが手がけた木製の玩具・置物の一群である。1930年代から動物の制作が始まり、1951年のモンキー、1952年のベア、1953年のエレファントが広く知られている。
共通するのは、実在の動物を写実的に再現しないという姿勢と、手に取ったときの感触を優先した丸みのある造形である。多くのモデルが可動する関節を備え、姿勢を変えて置くことができる。
カイ・ボイスンの設計思想や経歴について詳しくはカイ・ボイスン プロフィールページをご覧ください。
共通する設計原理
ボイスンは、造形が丸く、柔らかく、手に持って心地よいものであるべきだと考えていた。動物の特徴を細部まで写し取るのではなく、輪郭を単純化したうえで、表情や姿勢に性格を持たせている。製品の線が「笑っている」ことを求めたという考え方が、モンキーをはじめとする各モデルに共通する。
構造面では、複数の部材を組み合わせ、関節部を可動にする方法が共通する。モンキーは31個の部材から成り、手足がフックの形をしているため、棚の縁に引っ掛けて吊り下げられる。エレファントは鼻と脚が動き、ヒポポタマスは顎が開く。可動部の位置は動物ごとに変わるが、部材を組んで動かすという構成そのものは変わらない。
素材は無垢材で、モデルによってチークとリンバ、オーク、オークとメープル、ブナなどが使い分けられる。着色しない仕上げが基本で、木の個体差がそのまま製品の表情の違いとなる。現在はFSC認証材を中心に生産されている。
成立と展開の経緯
出発点は1922年である。デンマークの労働環境協会が催した玩具のコンペティションにボイスンが参加して受賞し、以後、木製の玩具を継続して手がけるようになった。1932年にコペンハーゲンのブレズゲーゼ47番地へ工房を兼ねた店を構え、ここが制作と販売の拠点になる。
動物は1930年代から順次加わった。1934年のダックスフント、1935年のゼブラ、1936年のロッキングホースが早い時期の例にあたる。1940年には国王クリスチャン10世の70歳を記念して近衛兵の人形がつくられ、量産は1942年から始まっている。よく知られる3点はいずれも1950年代前半で、1951年のモンキーは子ども用家具の展覧会に向けたコートラックの依頼が発端だったと同社は伝えている。長い腕でフックを子どもの手が届く高さまで下ろし、短い脚のあいだに帽子やマフラーを掛けるという構想である。1952年のベアは、コペンハーゲン動物園の飼育員夫妻が育てた子熊ウルスラに着想を得たとされる。
ボイスンの死後、妻エルナが1986年まで事業を続け、1991年に木製デザインと木製の近衛兵、グランプリのステンレス食器の権利がエリック・ローゼンダールへ譲渡された。以後は当時つくられながら生産されずにいた設計や、長く生産が止まっていたモデルの復活が展開の中心となる。2011年にダックスフント、ヒポポタマス、ラビットが、2012年には生前に製品化されなかったソングバードが家族のアルバムの写真をもとに、2013年にパフィンとサンタクロース、2017年にセダンとポストマンが加わった。
メンバー一覧
| 発表年 | 区分 | 製品名 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 1951年 | アート・オブジェ | カイ・ボイスン モンキー | シリーズで最も知られるモデル。チークとリンバの二色を組み合わせ、手足のフックで吊り下げられる。 |
| 1952年 | キッズ・ベビー | カイ・ボイスン ベア | オークとメープルによるモデル。実在の子熊が着想の元とされる数少ない例。 |
| 1953年 | インテリア雑貨 | カイ・ボイスン エレファント | オーク製で、鼻と脚が動く。3点のなかで可動部が最も大きい。 |
このほか、ダックスフント、ゼブラ、ラビット、ヒポポタマス、ロッキングホース、近衛兵の人形などが同じ考え方のもとで制作されている。
評価と影響
玩具として作られながら、子ども部屋を離れて住まいの置物としても扱われてきた点が、この一群の受け取られ方を特徴づけている。塗装せず、壊れても部材を交換できる構成は、玩具が長く使われることを前提にした設計として参照される。
デンマークでは出産や進学の贈り物として定着しており、製品としての機能よりも、贈り手と受け手のあいだの意味づけによって長く使われる例が多い。
ローゼンダールの歴史や他の製品について詳しくはローゼンダール ブランドページをご覧ください。
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、木製動物の収蔵は確認できなかった。V&Aはボイスンのグランプリのカトラリー、Metは木製のサラダボウルを所蔵しているが、いずれもこの一群には含まれない。
基本情報
| デザイナー | カイ・ボイスン |
|---|---|
| ブランド | ローゼンダール(1991年に木製デザインの権利を取得) |
| 共通構造 | 複数部材の組み合わせと可動する関節 |
| 共通素材 | 無垢材(チーク、リンバ、オーク、メープル、ブナなど) |
| 仕上げ | 着色しない仕上げが基本 |
| 生産 | ローゼンダール・デザイングループがボイスン家と協働して継続 |
Reference
- Kay Bojesen timeline - Rosendahl
- https://us.rosendahl.com/pages/kay-bojesen-timeline
- Designer Kay Bojesen - Rosendahl
- https://us.rosendahl.com/pages/about-kay-bojesen
- Reworked Monkey - Rosendahl
- https://us.rosendahl.com/pages/reworked-monkey
このシリーズの製品
カイ・ボイスン モンキー Kay Bojesen Monkey
1951年、デンマークのデザイナー、カイ・ボイスンが孫のために生み出した木製フィギュア。チーク材とリンバ材を組み合わせた愛らしい姿と可動する手足が特徴。「線は微笑まなければならない」という言葉どおりの造形で、北欧デザインのアイコンとして70年以上愛され続ける名作。
カイ・ボイスン ベア Kay Bojesen Bear
カイ・ボイスンが1952年にデザインした木製のクマ。オーク材とメープル材の温かみのある質感と、360度可動する手足が特徴。「線は微笑みにならなければならない」という哲学のもと生まれた、世代を超えて使われ続ける北欧デザインの名作。
カイ・ボイスン エレファント Kay Bojesen Elephant
1953年、デンマークのデザイナー、カイ・ボイスンが生んだオーク無垢材の木製象。丸みを帯びた愛らしいフォルムと可動する鼻や脚を持ち、子どもの玩具から大人のインテリアオブジェまで、世代を超えて愛され続ける北欧デザインの名作。