Kay Bojesen Bear(カイ・ボイスンのクマ)は、1952年にデンマークの巨匠デザイナー、カイ・ボイスンによって生み出された木製オブジェである。銀細工師として名を馳せたボイスンが、1930年代から手掛けるようになった木製動物シリーズの中でも、特に愛される存在となった。オーク材とメープル材を組み合わせた温かみのある素材感と、丸みを帯びた親しみやすいフォルムが特徴的である。

この愛らしいクマは、単なる玩具の枠を超え、デンマークデザインを象徴する存在として、子どもから大人まで幅広い世代に愛され続けている。現在は、ローゼンダール・デザイングループがボイスン家との密接な協力のもと、オリジナルデザインに忠実に製造を継続している。

特徴・コンセプト

デザインの特徴

Kay Bojesen Bearは、オーク材の温かみのあるボディと、メープル材を用いた明るい色調のお腹部分のコントラストが印象的である。首、肩、股関節、手足のすべての関節が360度可動する構造により、さまざまなポーズを取ることができる。この可動性は、単に玩具としての遊び心だけでなく、インテリアオブジェとしての表現の幅を広げる要素となっている。

丸い鼻と愛らしい表情、ふっくらとしたお腹は、見る者に安心感と親しみやすさを与える。すべてのパーツに角がなく、滑らかな曲線で構成されたデザインは、子どもが手に取った際の安全性と触り心地の良さを考慮した結果である。

デザイン哲学

カイ・ボイスンは「動物のデザイン上の線(line)は微笑み(smile)にならなければならない」という信条のもと、木製動物シリーズを制作した。彼にとって重要だったのは、動物の写実的な再現ではなく、その本質を捉えた愛らしさと温かみの表現であった。

「木製の動物は本物の動物の真似であってはならない」というもう一つの信念は、デザインにおける抽象化と単純化の重要性を示している。ボイスンは自身の作品について「サーカスを連想させるべきだ」と語り、遊び心と楽しさ、そして人々を笑顔にする力を重視していた。

素材と製法

現在製造されているKay Bojesen BearはFSC認証を取得した持続可能な森林から調達されたオーク材とメープル材を使用している。各パーツは熟練の職人によって一つひとつ手作業で丁寧に仕上げられ、表面には無害な天然オイルで仕上げが施されている。

可動部分はゴムや紐で接合されており、柔軟性と耐久性を両立させている。この伝統的な製法により、世代を超えて受け継がれる品質が保証されている。

エピソード

誕生の背景

カイ・ボイスンが木製玩具の制作を始めたきっかけは、1930年代の長男の誕生であった。銀細工師として確固たる地位を築いていた彼が、新たな素材である木に魅了され、子どものための温かみのある玩具作りに情熱を注ぐようになったのは、父親としての愛情の表れでもあった。

Kay Bojesen Bearは、モンキー(1951年)に続いて1952年に発表された。動物園を頻繁に訪れていたボイスンは、そこで観察した動物たちの愛らしさと生命力を、独自の解釈で木製オブジェとして表現した。クマは、その温和な性格と親しみやすさから、子どもたちに安心感を与える存在として選ばれた。

継承される製造

1958年のカイ・ボイスン逝去後、妻のエルナ・ボイスンが1986年まで工房と店舗の運営を継続した。その後、1990年にデンマークのデザインハウスであるローゼンダール社(現ローゼンダール・デザイングループ)が木製玩具の商業権を取得し、2010年には「カイ・ボイスン デンマーク」というブランド名のもと、オリジナルデザインに忠実な復刻生産を行っている。

評価

Kay Bojesen Bearは、デンマークデザインの黄金期を代表する作品の一つとして、国際的に高い評価を得ている。スカンジナビアンデザインの理念である機能性と美しさの融合を体現し、同時に普遍的な愛らしさと温かみを持つことで、文化や世代を超えて愛される存在となった。

世界中の美術館やデザインコレクションに収蔵され、現代においてもデザインの教科書的存在として引用される。特に、子どものための玩具でありながら大人も魅了する洗練されたデザインは、「良いデザインはすべての人のためのもの」というボイスンの理念を具現化している。

現在では、洗礼式、誕生日、卒業式、結婚式、記念日など、人生の大切な節目の贈り物として選ばれることも多く、世代を超えて受け継がれる「一生の友」として位置づけられている。インテリアデザインの分野においても、北欧スタイルの空間演出に欠かせないアイコニックな存在として認識されている。

デザイナーについて

カイ・ボイスン(Kay Bojesen, 1886-1958)は、デンマークを代表するデザイナーの一人である。1906年から4年間、ジョージ・ジェンセンのもとで銀細工を学び、1910年に独立。銀細工師として活動を開始した。

1938年にデザインしたカトラリーシリーズは、1951年のミラノ・トリエンナーレで3年連続最優秀賞を受賞し、「グランプリ」と名付けられた。このカトラリーはデンマーク王室御用達となり、現在も世界各国のデンマーク大使館で使用されている。

1931年には、デンマークデザインの優れた作品を展示・販売する「デン・パーマネンテ」の創設に関わり、デンマークの機能主義デザインの発展に大きく貢献した。ボイスンの作品は、素材を問わず温かみと機能性を併せ持ち、「デザインは人間的で、温かく、生き生きとしているべきだ」という理念のもと制作された。

デザイナー カイ・ボイスン(Kay Bojesen)
デザイン年 1952年
製造元 Kay Bojesen Denmark(ローゼンダール・デザイングループ)
素材 オーク材、メープル材
サイズ Small: H14.5cm × W8.9cm × D6.1cm
Medium: H25cm × W16cm × D10.5cm
Large: H40cm × W25.5cm × D17cm
仕上げ 天然オイル仕上げ
製造国 デンマーク
認証 FSC認証