概要
ペンギン・ドンキーは、エゴン・リスが1939年に設計した書棚である。薄い合板を積層して曲げた本体に、中央の収納部と左右二つの区画を設ける。ペンギンブックスの文庫本の寸法に合わせて設計された。アイソコン・ファニチャー・カンパニーが製造した。
特徴・コンセプト
判型に合わせて寸法を決める
ペンギンブックスの文庫本は判型が標準化されている。リスはこの寸法に合わせて区画の幅と高さを決めた。可変の棚では、決まった判型の本を並べたときに空きが生じる。判型が一定であれば、本の側に合わせて棚を作れる。左右の区画には合わせて最大80冊が収まる。
中央の部分には新聞や雑誌を置ける。区画の大きさを変えることで、判型の違う印刷物を一つの家具に収めている。
合板を積層して曲げる
薄い合板を複数層重ねて成形し、曲面を得る。同じ時期にアルヴァ・アアルトらが進めていた成形合板の手法と重なる。板を組んで箱をつくれば角が残るが、曲げれば面が連続する。
脚は4本のみで、寸法は600×420×430mm。持ち運べる大きさに収まっている。
エピソード
形が荷を運ぶロバを思わせることから「ドンキー」と呼ばれ、左右の区画は荷かごになぞらえられた。
ペンギンブックスの創業者アレン・レーンは、この家具の区画が自社の文庫本にちょうど収まることに着目した。10万枚のリーフレットを書籍に挿入して宣伝する計画を立て、これを機に名称が「ペンギン・ドンキー」に改められている。
しかし1939年9月の第二次世界大戦の勃発により、計画は中断した。アイソコンの合板の供給元だったエストニアの製造業者が接収されたためである。製造は約100台にとどまった。
1963年、ジャック・プリチャードがアイソコンを再開し、アーネスト・レイスに再設計を依頼した。1982年以降はアイソコン・プラスがプリチャード家の承認のもとで製造している。2003年には安積伸・安積朋子による新しい解釈も加えられた。
評価と影響
ペンギンブックスは1935年に創業し、高品質な文学作品を手頃な価格で提供した。この家具は、判型の標準化された出版物と、それに合わせた収納という関係から生まれている。
合板を曲げて構成する点では、ベント・プライウッド・アームチェアも同じ時期の英国で成立した。あちらは一枚から切り出す方向、こちらは積層して曲面をつくる方向にある。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。V&Aは実作のほか設計図も収蔵している。
- MoMA ペンギン・ドンキー ブックケース(1939年) 収蔵番号 179.2021
- V&A ペンギン・ドンキー(1939年) 収蔵番号 W.19:1 to 3-1993
- V&A ペンギン・ドンキーの設計図(1939年5月22日) 収蔵番号 CIRC.240-1975
エゴン・リスの設計思想や経歴について詳しくはエゴン・リスプロフィールページをご覧ください。
アイソコンの歴史や他の製品について詳しくはアイソコンブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | ペンギン・ドンキー / Penguin Donkey |
|---|---|
| デザイナー | エゴン・リス(Egon Riss) |
| ブランド | アイソコン(Isokon)/アイソコン・プラス(1982年〜) |
| 発表年 | 1939年 |
| デザインの成立国 | イギリス |
| 分類 | 書棚/マガジンラック |
| 主要素材 | バーチ合板(積層して曲げ成形) |
| 構造 | 文庫本の判型に合わせて区画の寸法を決める。左右に最大80冊、中央に新聞・雑誌 |
| サイズ | 600 × 420 × 430mm |
| 当初の製造数 | 約100台(1939年の開戦により中断) |
| 後継 | Mark 2(アーネスト・レイス、1963年)、Donkey 3(安積伸・安積朋子、2003年) |
| 収蔵 | MoMA(179.2021)、V&A(W.19:1 to 3-1993、設計図 CIRC.240-1975) |
Reference
- Penguin Donkey bookcase | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/430146
- Penguin Donkey | Victoria and Albert Museum
- https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=W.19-1993