概要

エゴン・リス(1901-1964)は、オーストリア出身でイギリスで活動した建築家である。1939年、成形合板による書架ペンギン・ドンキーを設計した。ペンギン・ブックスの文庫本の寸法に合わせた収納で、4つの区画に本を並べる構成をとる。以後は炭鉱の建築を主とした。

バイオグラフィー

1901年、オーストリアに生まれた。ウィーンで建築を学んでいる。

1938年、オーストリアのドイツ併合を受けてイギリスへ移った。ロンドンのアイソコンに関わっている。

1939年、ペンギン・ドンキーを設計した。ペンギン・ブックスの文庫本の寸法に合わせた書架である。

第二次世界大戦後は国営石炭公社の建築部門に勤め、炭鉱の建物を設計した。1964年に没している。

デザインの思想と方法

1935年に始まったペンギン・ブックスの文庫本は、寸法が統一されていた。リスが設計したのは、この判型だけを収める書架である。対象を一つに絞れば、寸法に無駄が生じない。

判型に合わせて区画を決める

4つの区画は、いずれも文庫本の寸法に合う。ほかの本は入らないが、そのぶん本が倒れず、隙間も生じない。汎用の書架では得られない収まりになる。

成形合板で曲面をつくる

アイソコンは成形合板の技術を持っていた。板を曲げて区画の仕切りとすることで、部材の点数が減る。

低く抑える

床に置き、上面を卓としても使える高さにとどめる。壁面の書架とは別の位置づけになる。

亡命先の技術を用いる

ウィーンで建築を学び、イギリスへ移った後にこの書架を設計した。現地のメーカーが持つ技術を前提としている。

代表作にみる方法

ペンギン・ドンキー(1939年、アイソコン)

成形合板による書架である。4つの区画はいずれもペンギン・ブックスの文庫本の寸法に合う。ほかの本は入らないが、本が倒れず隙間も生じない。上面を卓としても使える。ニューヨーク近代美術館とV&Aが収蔵している。→ペンギン・ドンキー

ペンギン・ドンキーの図面(1939年)

V&Aが設計図を複数点収蔵している。1939年5月22日の日付を持つものを含む。

アイソコンでの仕事(1939年〜)

ロンドンの家具メーカーである。同社は成形合板の技術を持ち、亡命した設計者を複数受け入れている。

炭鉱の建築(1940-60年代)

国営石炭公社の建築部門に勤め、炭鉱の建物を設計した。家具とは別の領域にあたる。

評価と影響

リスは、ペンギン・ドンキーの設計者として言及される。特定の判型だけを収める書架という、対象を絞った構成が特徴にあたる。

1938年にオーストリアからイギリスへ移った。アイソコンは、同時期に複数の亡命した設計者を受け入れている。

戦後は炭鉱の建築を主とし、家具の設計はペンギン・ドンキーに限られる。同書架は後年に再生産されている。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。計8件が確認できた。

  • MoMA ペンギン・ドンキー 書架(1939年) 収蔵番号 179.2021
  • V&A ペンギン・ドンキー(1939年) 収蔵番号 W.19:1 to 3-1993
  • V&A ペンギン・ドンキーの設計図(1939年5月22日) 収蔵番号 CIRC.240-1975
  • V&A ペンギン・ドンキーの設計図(1939年頃) 収蔵番号 CIRC.239-1975
  • V&A 図面(1939年) 収蔵番号 CIRC.248-1975、CIRC.249-1975、CIRC.250-1975
  • V&A 図面 収蔵番号 CIRC.241-1975

Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。

作品一覧

区分 作品名 ブランド / 場所
1939年 書架 ペンギン・ドンキー Isokon
1939年 図面 ペンギン・ドンキーの設計図 Isokon
1940-60年代 建築 炭鉱の建物 国営石炭公社、イギリス
1920-30年代 建築 ウィーンでの設計 オーストリア

プロフィール

生没年 1901年〜1964年
出身地 オーストリア
国籍 オーストリア(のちイギリス)
活動拠点 ウィーン、ロンドン
分野 建築、家具
主な協働ブランド Isokon

Reference

Isokon Plus
https://www.isokonplus.com/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
Victoria and Albert Museum Collections
https://collections.vam.ac.uk/