概要

アイノ・アアルト グラスは、アイノ・アアルトが1932年に設計しイッタラが製造するプレスガラスのタンブラーである。原型は同年発表の「ボルゲブリック」で、水平方向のリング状のレリーフを持つ。1936年のミラノ・トリエンナーレで金賞を受けている。

現行は220mlのタンブラー、330mlのハイボール、約1,200mlのピッチャーで構成される。素材は無鉛ガラスで、食器洗浄機に対応する。複数の色が展開される。

デザインの特徴とコンセプト

リング状のレリーフは、握り、積み重ね、成型のいずれにも関わる。一つの形状が複数の役割を兼ねている。

波紋のレリーフ

外周のリングは指が掛かる段差になる。平滑な面では結露で滑るが、凹凸があれば摩擦が生じる。使用による細かな傷も、もとの凹凸に紛れて目立たない。

スタッキング構造

リングは積み重ねたときの受けにもなる。直線的なグラスでは深く入り込んで抜けにくくなるが、段差があれば一定の位置で止まる。

プレスガラス技法

成型にはプレスガラスの技法を用いる。型にガラスを流し込んで押し当てる方法のため、同じ寸法が繰り返し得られる。積み重ねるには個体差が小さいことが条件になる。宙吹きでは寸法が揃わない。

光と影の表情

リングの断面は光を屈折させる。平滑なグラスでは透過した光がそのまま抜けるが、凹凸があれば光が集まる箇所と散る箇所が生じ、テーブル上に輪状の模様が現れる。

背景とエピソード

デザインコンペティションと「ボルゲブリック」

1932年のデザインコンペティションに出品して入賞し、同年に製品化された。名称はスウェーデン語で水面の波紋を意味する。

ミラノ・トリエンナーレでの受賞

1936年の第6回ミラノ・トリエンナーレで金賞を受けている。

90年を超える生産の継続

製造は一時中断したのち1983年に再開され、1994年以降はイッタラ工場が引き継いでいる。現在は「アイノ・アアルト」のシリーズ名で展開される。

評価と影響

型を用いて同じ寸法を繰り返す点では、同じイッタラのカルティオ グラスウルティマツーレと同じ製法圏にある。ウルティマツーレは型の内側の凹凸で表面をつくり、アイノ・アアルトは水平のリングを刻む。型の輪郭を非対称にするサヴォイ・ベースや、型を使わないバード バイ トイッカとは条件が異なる。

1932年の製品化以来、生産が続いている。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、Met=メトロポリタン美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。V&Aは原型の名称「Bölgeblick」で複数点を登録している。

  • MoMA タンブラー(1932年、プレスガラス) 収蔵番号 431.1983
  • Met グラス(1932年) 収蔵番号 1988.31.50 / 1988.31.51 / 1988.31.52
  • Met ピッチャー(1932年) 収蔵番号 1988.31.53
  • V&A ボルゲブリック(1932年) 収蔵番号 C.228-1987 ほか

基本情報

正式名称 アイノ・アアルト グラス / Aino Aalto Glass
原型名 ボルゲブリック / Bölgeblick(スウェーデン語で「水面に広がる波紋」)
デザイナー アイノ・アアルト / Aino Aalto(1894–1949)フィンランド
デザイン年 1932年
製造ブランド イッタラ / Iittala(フィスカース・グループ)
製造国 フィンランド
素材 無鉛ガラス(Non-Lead Glass)
製法 プレスガラス成型
サイズ(タンブラー) 口径 約75mm × 高さ 約90mm / 容量 220ml
サイズ(ハイボール) 口径 約80mm × 高さ 約110mm / 容量 330ml
サイズ(ピッチャー) 容量 約1,200ml
カラーバリエーション クリア、ウォーターグリーン、シーブルー、ダークグレー ほか(アニュアルカラーにより毎年新色を追加)
食器洗浄機 使用可
耐熱性 耐熱ガラスではない(65℃以上の高温使用不可)
電子レンジ・オーブン 使用不可
スタッキング 可能
参考価格帯(税込目安) タンブラー 約1,650円/個、ハイボール 約1,980円/個、ピッチャー 約5,500円(正規品・2025年時点の参考価格)
主な受賞歴 ミラノ・トリエンナーレ 金賞(1936年)