概要
アイノ・アアルト(1894-1949)は、フィンランドの建築家・デザイナーである。1924年にアルヴァ・アアルトの事務所へ入り、以後生涯にわたって共同で設計を行った。1935年にアルテックを共同で設立し、1941年から没するまで同社の設計責任者を務めている。1932年のガラス器「ボルゲブリック」は、同心円状の段を持つ形で知られる。
バイオグラフィー
1894年1月25日、ヘルシンキにアイノ・マルシオとして生まれた。ヘルシンキ工科大学で建築を学び、1920年に修了している。当時のフィンランドで建築の学位を得た女性は少ない。
卒業後、オイヴァ・カッリオの事務所などに勤めた。1924年にアルヴァ・アアルトの事務所へ入り、同年に結婚している。
1932年、カルフラ=イッタラのガラス器の競技設計で「ボルゲブリック」が2位に入選した。翌1933年から生産が始まっている。
1935年、アルヴァ、マイレ・グリクセン、ニルス=グスタフ・ハールとともにアルテックを設立した。1941年から1949年まで同社の設計責任者を務めている。1949年1月13日、54歳で没した。
デザインの思想と方法
アイノ・アアルトの仕事は、建築の設計、家具の設計、製品の設計、会社の運営にまたがる。共同名義で発表されたものが多く、個々の担当を切り分けられない場合が多いが、ガラス器と室内の設計には彼女の名で記録されたものが残る。
型で作れる形を選ぶ
ボルゲブリックは、同心円状の段を持つガラス器である。段があることで型から抜きやすく、押し型による量産に向く。当時のフィンランドのガラス産業は手吹きが中心で、押し型の製品は安価に供給できた。製法の条件が形を決めた例にあたる。
段が持ちやすさを兼ねる
外面の段は、指がかかる面としても働く。濡れた手でも滑りにくく、重ねたときに互いがずれない。装飾として付けた形ではなく、複数の要求を同時に満たす形状にあたる。
室内を一つのまとまりとして構成する
アルヴァとの共同による建築では、家具、照明、テキスタイル、食器までを含めて室内を構成した。アイノは特に室内と製品の側を担当したとされる。アルテックの設立は、この構成を実際に供給できる体制をつくるためでもあった。
会社の運営を担う
1941年から1949年まで、アルテックの設計責任者を務めた。製品の選定、展示、販売の方針を決める立場にあたり、設計と経営の両方に関わっている。
イッタラの歴史や他の製品について詳しくはイッタラ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ボルゲブリック(1932年)
同心円状の段を持つガラス器の系列である。1932年のカルフラ=イッタラの競技設計で2位に入選し、翌年から生産が始まった。段は型抜きを容易にし、指がかかる面としても働き、重ねたときのずれも防ぐ。1936年のミラノ・トリエンナーレで金賞を受けた。現在は「アイノ・アアルト」の名で生産が続いている。→アイノ・アアルト グラス
子供用椅子 モデル103(1931年)
成形合板による子供用の椅子である。座面と背を一続きの面で構成し、部材を減らしている。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号55.1946)。
アルテックの設立(1935年)
アルヴァ、マイレ・グリクセン、ニルス=グスタフ・ハールとともに設立した。家具の製造と販売に加えて、展示と出版も業務に含まれる。設計した室内を実際に供給できる体制をつくるという目的があった。
パイミオのサナトリウム 室内(1929-33年)
アルヴァとの共同による建築で、室内と家具の設計に関わった。長期の療養者が過ごす空間として、家具の寸法、色、素材が決められている。
ヴィラ・マイレア 室内(1938-39年)
マイレ・グリクセンの依頼による住宅で、アルヴァとの共同設計にあたる。アイノは室内と家具の側を担当したとされる。既存の樹木と地形に合わせた配置をとる。
評価と影響
アイノ・アアルトは、長らくアルヴァ・アアルトの協働者として扱われてきたが、近年は個別の仕事として検討されることが増えている。ボルゲブリックのように彼女の名で記録された設計が、その手がかりにあたる。
1941年から1949年までのアルテックの設計責任者としての役割は、製品の選定と会社の方針を決める立場である。設計と経営の両方に関わった例として言及される。
ボルゲブリックは90年以上にわたって生産が続いており、現在は「アイノ・アアルト」の名で供給されている。
受賞・収蔵
受賞
- 1932年 カルフラ=イッタラ ガラス器競技設計 2位(ボルゲブリック)
- 1936年 第6回ミラノ・トリエンナーレ 金賞
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館)。
- MoMA 子供用椅子 モデル103(1931年設計) 収蔵番号 55.1946
- MoMA タンブラー(1932年) 収蔵番号 431.1983
- V&A ボルゲブリック(1932年) 収蔵番号 C.228-1987
- V&A ボルゲブリック(1936年) 収蔵番号 C.228A-1987
- V&A ボルゲブリック(1932-36年) 収蔵番号 C.371-1993 ほか
- Met グラス(1932年) 収蔵番号 1988.31.50、1988.31.51、1988.31.52
- Met ピッチャー(1932年) 収蔵番号 1988.31.53
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1929-33年 | 建築・室内 | パイミオのサナトリウム(アルヴァと共同) | パイミオ、フィンランド |
| 1931年 | 椅子 | 子供用椅子 モデル103 | Artek |
| 1932年 | ガラス器 | アイノ・アアルト グラス | Karhula-Iittala / Iittala |
| 1935年 | 会社 | アルテック 設立(共同) | ヘルシンキ、フィンランド |
| 1938-39年 | 建築・室内 | ヴィラ・マイレア(アルヴァと共同) | ノールマルック、フィンランド |
| 1941-1949年 | 経営 | アルテック 設計責任者 | Artek |
| 1930-40年代 | 家具・テキスタイル | アルテックのための家具・織物 | Artek |
プロフィール
| 生没年 | 1894年1月25日〜1949年1月13日 |
|---|---|
| 出身地 | フィンランド・ヘルシンキ |
| 国籍 | フィンランド |
| 活動拠点 | ヘルシンキ、ユヴァスキュラ |
| 分野 | 建築、室内、ガラス器、家具 |
| 主な協働ブランド | Artek、Iittala |
Reference
- Alvar Aalto Foundation
- https://www.alvaraalto.fi/en/
- Aino Aalto | Artek
- https://www.artek.fi/en/company/designers
- Aino Aalto | Iittala
- https://www.iittala.com/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/