概要

バード バイ トイッカは、フィンランドを代表するガラスデザイナー、オイバ・トイッカが1972年に創始した象徴的なガラスオブジェコレクションである。フィンランド・ヌータヤルヴィガラス工場で誕生した最初の作品「フライキャッチャー(シエッポ)」を起点に、半世紀以上にわたり400種以上の鳥が生み出されてきた。宙吹きの技法により一つひとつ手作業で制作される。

特徴とデザインコンセプト

マウスブロー技法による個体ごとの個性

吹き管で溶融ガラスを膨らませ、手作業で形を整える。型に流し込む方法では同じ形が複製されるが、宙吹きでは色の濃淡、気泡の位置、ガラスの厚みが個体ごとに異なる。複数の色を加える場合は工程が繰り返される。

形の単純化

写実的な再現ではなく、輪郭を単純化した形をとる。羽根の一枚ずつを表現すれば凹凸が増え、光の透過が分散する。面を大きく保てば、ガラスの内部を光が通る。寸法は数センチメートルから30センチメートル近くまでの幅がある。

豊かな色彩表現

色ガラスは、金属の酸化物を溶融ガラスに加えて発色させる。赤系は必要な温度と時間の管理が難しく、製造の歩留まりが低い。透明、メタリック、ラスター仕上げなど複数の色調が用いられる。

歴史的エピソード

1972年:シリーズの誕生

1972年、フィンランド・ウルヤラのヌータヤルヴィガラス工場において、トイッカとガラス職人たちによって最初のバード作品「フライキャッチャー(シエッポ)」が誕生した。ヌータヤルヴィガラス工場は1793年創業のフィンランド最古のガラス工場であり、その伝統と技術力がこの革新的なプロジェクトを可能にした。当初フライキャッチャーは、脚のあるバージョンと脚のないバージョンの2種類が制作された。グラデーションカラーを持つフライキャッチャーは特に希少とされている。この時期の作品には「Oiva」というサインが刻印されている。

コレクションとしての確立

1972年の誕生当初、バードは他のアイテムと共にヌータヤルヴィのコレクションの一部として展開されていた。1976年には、より大型で技術的に挑戦的なキーックリが制作された。このデザインは、トイッカが数年前にデザインしたポンポン(パンプラ)花瓶からインスピレーションを得ている。1981年には、フェザント(キジ)、ターミガン(雷鳥)、ウィローグラウス、ロングテールドダックの4種類の新作が発表され、プロ・アルテコレクションの一部となった。企業のギフトアイテムとして人気を博し、1994年に独立したコレクション「Birds by Toikka」として正式に確立された。

アニュアルバードの伝統

1993年のヌータヤルヴィガラス工場創業200周年記念を契機に、アニュアルバードの伝統が生まれた。1996年以降、トイッカは毎年新しいデザインのアニュアルバードを発表し続けた。これらの限定生産作品は、コレクターにとって特別な価値を持ち、発表年のみの製造という希少性が市場価値を高めている。2018年のアニュアルバード「パイロット」は、トイッカが手がけた最後のアニュアルバード作品の一つとなった。

工場の移転

2013年、220年以上の歴史を誇ったヌータヤルヴィガラス工場が閉鎖され、翌2014年にバード バイ トイッカの製造はヘメーンリンナのイッタラガラス工場へ移管された。工場の移転にもかかわらず、伝統的な製造技法と品質基準は忠実に継承され、イッタラの熟練職人たちによって制作が続けられている。各バードには「O.Toikka IITTALA」のサインが刻印され、その真正性を保証している。

評価と影響

同じイッタラのウルティマツーレカルティオ グラスは型を用いて同じ形を繰り返す。バードは宙吹きのため、同じ名称の作品でも個体ごとに形が異なる。用途を持たない置物であるため、寸法の統一が要求されない。

ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が、トイッカによるガラス作品を複数収蔵している(Capercaillie C.12-2009、Curlew C.13-2009、Jewelled Kiwi C.14-2009 など)。

製品の特性と鑑賞

個体差の美学

バード バイ トイッカの重要な特徴は、同一モデルであっても各個体が異なる表情を持つことである。ガラス内部の気泡、色彩の濃淡、形状の微妙な違い、ガラスパーツの接合部の見え方など、手工芸ならではの個性が一つひとつに宿る。手吹きという制作工程の性質上、均一な仕上がりにはならず、むしろ個々の特性こそが価値の源泉となっている。

光と透明性の表現

ガラスという素材の本質的な特性である透明性と光の屈折を、トイッカは芸術表現の核心に据えている。明るい場所に配置されたバードは、自然光や人工光を取り込み、内部で複雑な光の屈折と反射を生み出す。時間帯や光源の変化により、同じバードでも異なる表情を見せる。この動的な視覚体験は、静的な彫刻作品とは一線を画す、ガラスオブジェ特有の魅力を形成している。

サイズバリエーションの重要性

コレクションには、小型のフライキャッチャーやリトルターンのような手のひらサイズの作品から、30センチメートル近い大型作品まで、幅広いスケールのバードが存在する。サイズの多様性は、ディスプレイの柔軟性を提供し、限られたスペースでも楽しめる作品から、空間の主役となる大型作品まで、様々な環境に対応可能としている。特に小型作品は、バードコレクションへの入門として、また日常生活に身近に置けるオブジェとして、重要な役割を果たしている。

基本情報

名称 バード バイ トイッカ(Birds by Toikka)
デザイナー オイバ・トイッカ(Oiva Toikka、1931-2019)
ブランド イッタラ(iittala)
分類 ガラスオブジェ
初作品発表年 1972年
初作品名 フライキャッチャー(Flycatcher / Sieppo)
製造工場 ヌータヤルヴィガラス工場(1972-2013)
イッタラガラス工場(2013-現在)
製造技法 マウスブロー(手吹きガラス)
材質 無鉛ガラス
製造国 フィンランド
シリーズ総数 400種類以上(2019年時点)
アニュアルバード 1996年より毎年発表
サイズ範囲 約5cm~30cm(モデルにより異なる)
サイン 初期作品:「O. Toikka」「Nuutajärvi」刻印
現行品:「O. Toikka IITTALA」刻印