概要

ラ・コニカは、アルド・ロッシがアレッシィのために設計した直火式のエスプレッソメーカーである。ねじで結合する二段の円筒を本体とし、その上に円錐形の蓋を載せ、頂部に小さな球を置く。本体は18/10ステンレススチール、底面は銅による。設計は1982年、生産の開始は1984年で、3カップと6カップの2種が現在も作られている。コーヒーを淹れる器具を、卓上に置く小さな建築として扱った製品である。

特徴・コンセプト

円筒に円錐を載せる

直火式のコーヒーメーカーは、下部に水、中央に粉、上部に抽出液を置く三層の構成をとる。上下の室をねじで結合する必要から、外形は円筒に落ち着く。ラ・コニカはこの円筒に装飾を加えず、輪郭を乱す膨らみも設けていない。形の操作は蓋に集約されており、円錐とその頂部の球だけが円筒の上に加わる。

ロッシは、コーヒーポットがドームや鐘塔と重ねやすい形を持ち、室内の静物のなかに置かれると塔や円蓋の並ぶ都市の風景に近づく、と書いている。円錐の蓋と球は、その読み替えを成り立たせるために要る最小限の部分にあたる。

1979年から翌年にかけてヴェネツィアの水上に浮かべられた「世界劇場(テアトロ・デル・モンド)」も、方形の躯体に多角形の屋根を載せ、頂部に球を置く構成をとっていた。ラ・コニカの立ち姿は、この建築と重ねて論じられることがある。

各部の形を決めたもの

中央の粉受けは、底に穴を開けた浅い椀で、下面が円錐にすぼまり、そこから細い管が下へ伸びる。沸いた湯を一点に集めて上の室へ送るための形である。下部の側面には安全弁があり、圧力が上がりすぎたときに逃がす。上部の室では中央から管が立ち上がり、上端の角形の開口から抽出液が注がれる。

注ぎ口は小さなV字の切り欠きにとどめ、取っ手は帯状の金属を逆L字に曲げた形をとる。どちらも面を持たないため、横から見たときに円筒と円錐の輪郭が保たれる。蓋の内側にはつばが立ち、円錐を本体の口に落とすだけで位置が定まる。

ステンレスと銅底

本体の18/10ステンレススチールは、磨いた面が円筒と円錐の稜線を明瞭に残す。ただしこの鋼は熱を伝えにくく、炎の当たる範囲だけが先に熱くなる。底面に本体よりわずかに径の大きい銅の円板を合わせているのはこのためで、銅が熱を面へ広げ、下部の水を均等に温める。上下の室の接合部にはゴムのパッキンが入り、圧力のかかる内部を密閉する。

エピソード

発端は、1979年にアレッサンドロ・メンディーニの企画で始まったティー&コーヒー ピアッツァである。11名の建築家に銀のコーヒー・ティーセットを委嘱する企画で、ロッシは小さな神殿の形をした陳列ケースに器物を収める案を出した。量産を前提としない仕事だったが、ここで扱った円錐形のポットが続く製品の起点になった。

ロッシはこの前後からコーヒー器具の図面を繰り返し描いている。球・円筒・円錐・立方体を組み合わせる描き方で、1980年の試作「ペルコレーター」がその最初にあたる。アレッシィの資料には1980年と1982年の図面が残り、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は設計年を1982年、製造の開始を1984年として登録している。ロッシがアレッシィのために設計したもののうち、量産に移されたのはラ・コニカが最初である。

最初の案は、側面に長い柄を付けた形だった。イタリアの古い器具にならう持ち方だが、量産の条件に合わせて現在の逆L字の取っ手に改められている。アレッシィはこの初案を2021年に特別版として製品化した。

生産が始まった1984年には、ロッシの図面と本人の文章による『「La conica」e altre caffettiere』がアレッシィから刊行されている。メトロポリタン美術館はアレッシィからの寄贈でこの一冊を収蔵する(収蔵番号1987.1142.2)。

名称についてはロッシ自身が書き残している。円錐を指すコニカと、簡潔を意味するラコニカが重なること。ラコニックの語はスパルタのあるラコニア地方に由来し、切り詰めた話し方を指すこと。古代の高温の浴室がコーヒーメーカーのボイラーに似ていること。そのうえで、こうした連想は忘れて器具を使えばよい、とも書き添えている。

評価と影響

ラ・コニカは、当時新設されたオフィチーナ・アレッシィの製品として売り出され、建築家が日用品を設計した1980年代の例として参照されてきた。建築の語彙を器物へ持ち込む試みという点から、ポストモダンの文脈で扱われることが多い。

ロッシはその後もアレッシィのために器具の設計を続け、1986年にケトル「イル・コニコ」、1988年にラ・クーポラを発表している。円錐からドームへ輪郭は変わるが、器具を建築の形で扱う方法は共通する。同じアレッシィの直火式では、1979年に発売された9090 エスプレッソコーヒーメーカーが先行する。

収蔵

ステンレススチールと銅による本体について、以下の収蔵が確認できる。

  • ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 収蔵番号 M.5 to C-1990(設計1982年・製造1984年として登録)
  • ブルックリン美術館 収蔵番号 1999.40.23a-b(設計1982年として登録。アレッシィからの寄贈)
  • インディアナポリス美術館 収蔵番号 2013.229A-D(制作1980〜1984年として登録。アレッシィ博物館からの寄贈)

基本情報

名称 ラ・コニカ / La Conica
デザイナー アルド・ロッシ(Aldo Rossi)
ブランド アレッシィ(Alessi)
発表年 1984年(設計は1982年)
製品番号 90002
デザインの成立国 イタリア
分類 直火式エスプレッソメーカー
主要素材 本体:18/10ステンレススチール/底:銅/パッキン:ゴム
サイズ展開 3カップ(高さ23.5cm・径7.5cm・容量15cl)、6カップ(高さ28.5cm・径9cm・容量30cl)
関連製品 イル・コニコ(1986年)、ラ・クーポラ(1988年)
収蔵 V&A(M.5 to C-1990)、ブルックリン美術館(1999.40.23a-b)ほか

Reference

La conica | Alessi
https://us.alessi.com/products/la-conica-espresso-coffee-maker
Coffee maker「La Conica」| Victoria and Albert Museum
https://collections.vam.ac.uk/item/O146020/
Espresso/Coffee Maker and Lid,「La Conica」| Brooklyn Museum
https://www.brooklynmuseum.org/objects/160060
90002 La conica espresso coffee maker | Indianapolis Museum of Art
http://collection.imamuseum.org/artwork/51660/
「La conica」e altre caffettiere | The Metropolitan Museum of Art
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/356426
La caffettiera Conica di Aldo Rossi | doppiozero
https://www.doppiozero.com/la-caffettiera-conica-di-aldo-rossi
Aldo Rossi: design 1960-97 | weArch
https://www.wearch.eu/aldo-rossi-design-1960-97/