ラ・クーポラは、1988年にイタリアの建築家アルド・ロッシがアレッシィのためにデザインした直火式エスプレッソメーカーである。「クーポラ」とはイタリア語で「ドーム」を意味し、その名の通り、聖堂の丸屋根を想起させる優美なドーム型の蓋を特徴とする。発売以来100万台以上を販売し、現代インダストリアルデザインの象徴的存在として、今なお世界中で愛用され続けている。
20世紀後半を代表するイタリア建築家であるロッシが、建築と日用品デザインの融合を追求した結実がこのラ・クーポラである。日常の珈琲を淹れるという行為に、建築的な詩情と荘厳さを付与し、キッチンに佇む小さな記念碑として、家庭の風景を一変させた。
特徴・コンセプト
ラ・クーポラは、建築とプロダクトデザインの統合という、ロッシの長年にわたる探求の結晶である。アレッシィの公式解説によれば、本作は「小さな記念碑」であり、「塔であり聖堂でもあるコーヒーハウス・テンプル」として構想された。既存の建築作品の形態と比率を明確に参照しながら、聖なるものと俗なるものを皮肉を込めて融合させ、珈琲の儀式を祝福している。
建築的着想
その造形は、イタリア・ノヴァーラにあるサン・ガウデンツィオ聖堂の大ドームに着想を得ている。19世紀の建築家アレッサンドロ・アントネッリが設計したこのドームは、高さ121メートルに達し、煉瓦造りでありながら世界で最も大胆な石造建築の一つとして知られる。ロッシは自身のスケッチにおいて、このコーヒーメーカーを都市の風景の中に配置し、サン・ガウデンツィオ聖堂と並置して描いている。
「ドメスティック・ランドスケープ」の夢
ロッシは、都市空間のアナログとして構築された「家庭の風景」という夢を追求した。彼の意図は、詩的で喚起的でありながら、何よりも実用的で、一般の人々が手に取りやすいオブジェクトを創造することにあった。キッチンのテーブルに置かれた小さな建築として、ラ・クーポラは日常の中に記念碑性をもたらし、家庭空間にトーテムを打ち立てる。
素材と構造
本体はアルミニウム鋳造で製作され、優れた熱伝導性により均一な加熱を実現する。取っ手とつまみには熱可塑性樹脂(ポリアミド)を採用し、安全性と操作性を確保している。厚みのあるアルミニウム製のフランジ付きベースは、熱の均一な分配を保証するとともに、本体を炎から保護する機能を果たす。
エピソード
ラ・クーポラの誕生は、1970年代後半に遡る。当時アレッシィのアーティスティック・ディレクターを務めていたアレッサンドロ・メンディーニが提唱した「ティー&コーヒー・ピアッツァ」プロジェクトが、その端緒となった。この野心的な試みは、世界的に著名な11人の建築家にティー&コーヒーセットのデザインを委嘱するもので、ロッシもこのプロジェクトに参加した。
この共同研究から生まれた最初の量産品が、1984年発表の「ラ・コニカ」である。円錐形の蓋を持つこのエスプレッソメーカーは、ステンレススチール製の本体と銅製の底部を特徴とし、即座に商業的成功を収めた。ラ・クーポラは、このラ・コニカの発展形として構想された。鋭角的な円錐から柔らかなドーム形へと形態を変化させることで、より親しみやすく、かつ建築的な荘厳さを備えた造形を実現した。
ドムス誌1988年1月号(691号)において、マルコ・ロマネッリは「高さ25センチメートルのアルミニウム製コーヒーメーカー」と題した論考で本作を紹介し、ロッシの建築作品とデザインプロジェクトの間に存在する強固な結びつきに注目した。ロマネッリは、ラ・コニカと同様に、ラ・クーポラにおいてもロッシが教会や記念碑の純粋な形態と頂部装飾へと回帰し、「球形への、ブレの教訓への回帰」を果たしたと評している。
評価
ラ・クーポラは発売直後からイタリア国内で即座に成功を収め、不朽の古典となった。発売以来100万台以上を販売し、約40年を経た今日もなお生産が続けられている。この事実は、ロッシの「すべての人のための詩的なオブジェクト」という理念が、広く受け入れられたことを証明している。
建築史家・批評家のヴィンセント・スカリーは、ロッシを画家兼建築家としてル・コルビュジエに比している。また、建築批評家でプリツカー賞審査員を務めたエイダ・ルイーズ・ハクスタブルは、ロッシを「たまたま建築家である詩人」と評した。ラ・クーポラは、まさにこの詩人としての資質が、日用品のデザインに昇華された好例である。
プリツカー賞の授賞式において、ハーバード大学建築学科長のホセ・ラファエル・モネオは次のように述べている。「将来の歴史家が、我々の都市を脅かした破壊的傾向がなぜ変化したのかを説明しようとするとき、ロッシの名はより賢明で敬意ある態度の確立に貢献した人物の一人として登場するであろう」。
受賞歴・コレクション
アルド・ロッシは1990年にプリツカー建築賞を受賞し、イタリア人建築家として初の栄誉に輝いた。ラ・クーポラは、この授賞の2年前に発表された作品であり、ロッシの円熟期を代表するデザインとして位置づけられる。
ラ・クーポラは、世界の主要なデザインミュージアムの永久コレクションに収蔵されている。ミラノのトリエンナーレ・デザイン・ミュージアム、パリのポンピドゥー・センター、ミュンヘンのディ・ノイエ・ザムルングなどがその代表である。また、フィラデルフィア美術館にも収蔵されており、20世紀後半を代表するプロダクトデザインとしての地位を確立している。
基本情報
| 製品名 | La Cupola(ラ・クーポラ) |
|---|---|
| デザイナー | アルド・ロッシ(Aldo Rossi, 1931-1997) |
| ブランド | アレッシィ(Alessi) |
| 発表年 | 1988年 |
| 製品番号 | A9095 |
| 素材 | 本体:アルミニウム鋳造/取っ手・つまみ:熱可塑性樹脂(ポリアミド) |
| サイズ展開 | 1カップ、3カップ、6カップ |
| 寸法(3カップ) | 高さ約22.4cm、直径約8.6cm |
| 生産国 | イタリア |
| 対応熱源 | ガス、電気、セラミック(IH非対応)※IH対応モデルあり |
| 主要コレクション | トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム(ミラノ)、ポンピドゥー・センター(パリ)、ディ・ノイエ・ザムルング(ミュンヘン)、フィラデルフィア美術館 |