概要
ジン・テーブルは、オリヴィエ・ムルグがエアボーン・インターナショナルのために設計した「ジン」シリーズの一点である。シリーズは1964年のシェーズロングに始まり、翌1965年にラウンジチェア、2人掛けソファ、スツール兼ローテーブルが加わった。1976年に生産を終えている。
特徴・コンセプト
金属の骨格で曲面をつくる
スチールパイプのフレームにゴムのウェビングを張り、ポリエーテルフォームを被せ、その上をナイロンジャージーで包む。骨格が外に出ないため、一続きの面として見える。
1960年代半ば、同じような曲面を求める試みの多くは樹脂の成形へ向かった。型を作れば複雑な曲面が一度で得られるためである。ムルグは金属のフレームという制約のなかで曲線を追い、フォームとカバーの側で面をつくる方法をとった。
接地を細く抑える
脚部には平鋼のランナー(スキー)が用いられる。点で接地する脚と違い、線で床に触れるため荷重が分散する。同時に接地部の見えがかりが細く保たれ、本体が床から浮いて見える。
カバーを交換する
外装のストレッチジャージーはファスナーで着脱できる。ムルグは1965年、26歳のときに物は短命であるべきだと述べており、カバーを交換できる構成はその考えを形にしたものにあたる。
用途を定めない
オットマン、フットスツール、ローテーブルのいずれとしても使える。シリーズの他の製品と組み合わせれば、床に近い高さで揃えた構成になる。
エピソード
「ジン」の名は、イスラムの伝承に登場する精霊による。人にも動物にも姿を変えるとされる性質が、シリーズの造形に重ねられている。
ジンシリーズが広く知られたのは、スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』(1968年)による。宇宙ステーションのロビーに置かれたジンのチェアとソファが、映画の描く未来像の一部になった。
発表当初、エアボーンは販売に苦戦した。前衛的すぎるという声が小売業者や顧客から寄せられたためである。1968年に展開した広告は物議を醸しながら注目を集めた。
評価と影響
ムルグは1968年、ジン・ラウンジチェアに対してAID International Design Awardを受けた。エアボーンは1974年のオイルショック後に経営が傾き、シリーズは1976年に生産を終えている。以後、正規の再生産は行われていない。
ウール混のストレッチジャージーは虫害や経年の劣化を受けやすく、良好な状態で残る個体は限られる。同時期のUP5_6 アームチェア&オットマンやボールチェアと同様、身体を包む形を新しい素材で成立させた仕事にあたる。
収蔵
ジンシリーズでは、以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。テーブル自体の収蔵は、4館の公開データでは確認できていない。
- MoMA ジン シェーズロング(1964〜65年) 収蔵番号 347.1966
- V&A ジン シェーズロング(1963年) 収蔵番号 CIRC.201-1969
- V&A ジン チェア(1963年) 収蔵番号 CIRC.202-1969
オリヴィエ・ムルグの設計思想や経歴について詳しくはオリヴィエ・ムルグプロフィールページをご覧ください。
エアボーンの歴史や他の製品について詳しくはエアボーンブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | ジン・テーブル / Djinn Table |
|---|---|
| デザイナー | オリヴィエ・ムルグ(Olivier Mourgue) |
| ブランド | エアボーン・インターナショナル(Airborne International) |
| 発表年 | 1965年(シリーズ初出は1964年のシェーズロング) |
| 生産期間 | 1965年〜1976年 |
| デザインの成立国 | フランス |
| 分類 | ローテーブル/スツール |
| 構造 | スチールパイプのフレームにゴムのウェビング、フォーム、ストレッチジャージー。脚は平鋼のランナー |
| カバー | ファスナーで着脱可 |
| 受賞 | 1968年 AID International Design Award(ジン・ラウンジチェアに対して) |
| 生産状況 | 生産終了(1976年以降、正規の再生産なし) |
Reference
- Djinn Chaise Longue | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/3625
- Djinn Chaise Longue | Victoria and Albert Museum
- https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=CIRC.201-1969