概要

ジン・テーブルは、オリヴィエ・ムルグがエアボーン・インターナショナルのために設計した「ジン」シリーズの一点である。ムルグ自身はシリーズの発表を1964〜65年とし、その構成を2人掛け、シェーズロング、オットマン、ラウンジチェア、ローテーブルとしている。エアボーンによる製造は長く続き、ポンピドゥー・センターの収蔵記録はシリーズの製造期間を1964〜1997年としている。現在は製造されていない。

特徴・コンセプト

金属の骨格で曲面をつくる

V&Aが収蔵する同シリーズの椅子の記録によれば、鋼管のフレームにピレリ製のゴムのウェビングを鋲で留め、ウレタンフォームを接着して重ね、全体をウールのジャージーのカバーで包む。ポンピドゥー・センターの記録でも、シリーズの各製品は鋼管、ウレタンフォーム、着脱式のジャージーの組み合わせで作られている。骨格が外に出ないため、一続きの面として見える。

1960年代半ば、同じような曲面を求める試みの多くは樹脂の成形へ向かった。型を作れば複雑な曲面が一度で得られるためである。ムルグは金属のフレームという制約のなかで曲線を追い、フォームとカバーの側で面をつくる方法をとった。

接地部でカバーを守る

V&Aの椅子の記録では、床に触れる箇所に両端をわずかに反らせたクロムめっきの滑り材がねじ留めされ、カバーの擦れを防いでいる。布で包んだ本体のうち、床と擦れる部分だけを金属で受ける構成である。

カバーを交換する

外装のジャージーはファスナーで着脱できる。ムルグは2012年のV&Aとのやり取りで、衣服のようにカバーを替えて洗えることや、素材と部品を入れ替えて使い続ける考えがあったことを説明している。MoMAの解説も、カバーを季節ごとに替える想定に触れ、柔軟さと使い捨ての発想を試みたものと位置づけている。ジャージーはベルナール・ジョリエ製で、15色が用意された。

用途を定めない

オットマン、フットスツール、ローテーブルのいずれとしても使える。シリーズの他の製品と組み合わせれば、床に近い高さで揃えた構成になる。

エピソード

「ジン」の名は、イスラムの伝承に登場し、姿を変えるとされる精霊による。ムルグによれば、この名を持ち込んだのはエアボーンの広報担当フィリップ・オートフイユだった。

ジンシリーズが広く知られたのは、スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』(1968年)による。回転する宇宙ステーション内のヒルトンホテルの場面にジンの家具が置かれ、映画の描く未来像の一部になった。

ヴィトラ・デザイン・ミュージアムの収蔵データは、ジンのシリーズが1960年代末のエアボーンの挑発的な広告と並んで話題を呼んだと記している。

評価と影響

1970年代の石油危機を機に、エアボーンは戦略と経営体制の変更を重ねた。それでもシリーズの製造は続き、V&Aの記録によれば椅子は1970年代以降、背の骨組みを鋼管から積層合板に替えて作られている。メトロポリタン美術館には1986年頃に製造されたシェーズロングが収蔵されており、ポンピドゥー・センターはシリーズの製造期間を1964〜1997年としている。2010年以降のエアボーンの製品群にジンは含まれていない。

同時期のUP5_6 アームチェア&オットマンやボールチェアと同様、身体を包む形を新しい素材で成立させた仕事にあたる。

収蔵

ジンシリーズでは、以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館)。テーブル自体の収蔵は、各館の公開データでは確認できていない。

  • MoMA ジン シェーズロング(1964〜65年) 収蔵番号 347.1966
  • V&A ジン シェーズロング(1963年設計) 収蔵番号 CIRC.201-1969
  • V&A ジン チェア(1963年設計) 収蔵番号 CIRC.202-1969
  • Met ジン シェーズロング(1965年設計・1986年頃製造) 収蔵番号 1989.64
  • ポンピドゥー・センター ジン シェーズロング(1964〜65年) 収蔵番号 AM 1993-1-823
  • ポンピドゥー・センター ジン プフ・デュオ(Pouf duo Djinn、1964〜65年) 収蔵番号 AM 1993-1-824
  • ポンピドゥー・センター ジン アームチェア(Fauteuil Djinn、1964〜65年) 収蔵番号 AM 1993-1-825

シェーズロングについてはジン シェーズロングを参照。

基本情報

名称 ジン・テーブル / Djinn Table
デザイナー オリヴィエ・ムルグ(Olivier Mourgue)
ブランド エアボーン・インターナショナル(Airborne International)
発表年 1965年(シリーズは1964〜65年)
生産期間 エアボーンが製造(シリーズの製造期間はポンピドゥー・センターの記録で1964〜1997年)
分類 ローテーブル/スツール
構造 鋼管のフレームにゴムのウェビング、ウレタンフォーム、ウールのジャージー
カバー ファスナーで着脱可
生産状況 製造終了。現行品なし

Reference

Olivier Mourgue. Djinn Chaise Longue. 1964-65 | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/3358
Djinn Chair | Mourgue, Olivier | V&A Explore The Collections
https://collections.vam.ac.uk/item/O121252/
Djinn Chaise Longue | Mourgue, Olivier | V&A Explore The Collections
https://collections.vam.ac.uk/item/O139682/
"Djinn" Chaise Longue | The Metropolitan Museum of Art
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/485346
Pouf duo Djinn | Centre Pompidou
https://www.centrepompidou.fr/es/ressources/oeuvre/c5ed7jo
Fauteuil Djinn | Centre Pompidou
https://www.centrepompidou.fr/en/ressources/oeuvre/c49E7r
Olivier Mourgue - Designer Paris / France | Archilovers
https://www.archilovers.com/olivier-mourgue/
Airborne | Vitra Design Museum Collection
https://collection.design-museum.de/en/artists/artist/6345/