概要

シリンダラインは、アルネ・ヤコブセンがステルトンのために設計し、1967年に発表したステンレス鋼のテーブルウェアである。すべての品目が円筒形を基本とし、装飾を持たない。つや消しの金属面と黒い樹脂の把手で構成される。発表から設計を変えずに生産が続いている。

特徴・コンセプト

円筒に揃える

ポット、ピッチャー、シュガーボウル、クリーマー、トレイ、アイスバケット、カクテルシェーカーが、いずれも同じ円筒形を基礎とする。品目ごとに形を変えず、直径と高さだけを変える。単体でも成立するが、複数を並べたときに寸法の比が見える。

当初の構想は、規格化されたステンレス鋼管を基礎にするというものだった。この案は断念されたが、円筒という骨格は最終形に残っている。

つや消しにする

表面はつや消しに仕上げられる。当時のテーブルウェアは鏡面の輝きを競っていたが、鏡面は周囲を映し込むため、置かれた場所によって見え方が変わる。つや消しなら映り込みが拡散し、形そのものが読める。

把手を直線で出す

ポットの把手には黒いベークライトが用いられる。熱を伝えにくいという要求に応えると同時に、銀色の面に黒が入ることで、円筒だけで構成された各品目に区切りが生まれる。把手は本体から直線的に伸び、円筒の輪郭を崩さない位置に収まる。

製法を作るところから始めた

単純に見える円筒だが、1960年代当時この形状を量産する方法は確立されていなかった。ヤコブセンが形の変更を認めなかったため、ステルトン側が製法を組み立て直す形で開発が進んだ。設計と製造技術の開発に3年を要している。

エピソード

発端は1964年春の家族の夕食である。ステルトンを率いていたペーター・ホルムブラッドは、義父にあたるヤコブセンに新しいシリーズの設計を依頼したいと考えていたが、当時のヤコブセンはオックスフォードのカレッジの仕事に追われていた。そこでホルムブラッドは自分で描いたスケッチを見せた。それを見たヤコブセンは紙ナプキンを取り、自ら線を引き始めたという。

依頼はコーヒーとティーの一式に加え、カクテルシェーカー、アイスバケット、灰皿までを含んでいた。テーブルウェアのシリーズにシェーカーが含まれること自体が、当時としては新しかった。当初のラインナップは15点で構成される。

評価と影響

1967年にデンマーク・インダストリアルデザイン協会のIDプライズ、翌1968年に米国室内デザイナー協会のインターナショナル・デザイン・アワードを受けている。

ヤコブセンは1950年代の家具で扱った有機的な曲線から離れ、1960年代には基礎的な幾何形態の反復へ移った。エッグチェアのような曲面の仕事と、AJ カトラリーやシリンダラインのような幾何形態の仕事が、同じ設計者のなかで並んでいる。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。

  • MoMA シリンダ アイスバケット(1964〜67年) 収蔵番号 347.1969.a-b
  • MoMA シリンダ ソルト&ペッパーシェーカー(1964〜67年) 収蔵番号 348.1969.1-2
  • MoMA シリンダ カクテルシェーカー(1964年) 収蔵番号 144.1988.a-b
  • MoMA シリンダ シュガーボウルとクリーマー(1964〜67年) 収蔵番号 165.1991.1-3
  • MoMA シリンダ 灰皿(1964〜67年) 収蔵番号 1250.1968.a-b

基本情報

名称 シリンダライン / Cylinda Line
デザイナー アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)
ブランド ステルトン(Stelton)
発表年 1967年(開発開始は1964年)
デザインの成立国 デンマーク
分類 テーブルウェア
主要素材 ステンレス鋼(つや消し仕上げ)、ベークライト(把手・つまみ)
構成 発表時は15点。ポット、ピッチャー、シュガーボウル、クリーマー、トレイ、アイスバケット、カクテルシェーカー、灰皿ほか
受賞 1967年 IDプライズ/1968年 インターナショナル・デザイン・アワード
収蔵 MoMA(347.1969.a-b、348.1969.1-2、144.1988.a-b、165.1991.1-3、1250.1968.a-b)

Reference