概要
チフラ3は、1960年代半ばにイタリアの建築家ジーノ・ヴァッレが設計し、ソラリ・ディ・ウーディネが製造したフリップ式の卓上時計である。数字を印刷した多数のフラップ(羽根)を軸に巻いたローラーが回転し、時刻が切り替わるたびに一枚ずつ翻る。針も文字盤も持たず、空港や鉄道駅の案内板に用いられた表示方式による。
特徴・コンセプト
ローラー式フラップ機構
水平に配したローラーにフラップを並べる。この方式は1966年に特許が取得されている。針で位置を示す方式では読み取りに角度の判断を要するが、数字が直接現れれば判断の余地がない。フラップが翻る際には音が生じる。
フラップの枚数を絞ることで、時と分を一つの面に収めている。動作の原理は発売当初から変わっていない。
円筒形のケース
外形はフラップの回転軌跡を包む横長の円筒による。矩形の筐体では回転する部材の周囲に使われない空間が残るが、円筒であれば軌跡に沿って外殻が定まる。正面には透明な樹脂、背面には熱可塑性樹脂を用いる。
数字の書体
黒地に白の数字を配し、時と分で異なる書体を用いる。時の数字は分よりやや大きい。同じ大きさでは二つの数列が対等に見えるが、差をつければ時が先に読める。地が黒いため、明るい室内でも数字だけが判別できる。
エピソード
産業用機器から家庭用品へ
フラップ式の表示装置は、駅や空港の大型案内板のための技術である。遠くから多数の人が読むための仕組みを、机上の寸法まで縮めている。ヴァッレは1954年から同社と組み、先行するチフラ5を手がけていた。
復刻と現行生産
2015年に生産が再開された。現行品はケースをPC-ABS樹脂とし、駆動を交流電源から電池のステッピングモーターに改めている。交流電源では周波数が時刻の基準になるため、地域によって仕様を分ける必要があった。表示方式と外形は当初のままである。
評価と影響
数字が直接現れる表示は、ダトール5と同じ方向にある。針の位置で示すボールクロックやテンポ ウォールクロック、数字を目盛りとして残すリキクロックとは、読み取りに要する判断が異なる。
1970年代には各国のメーカーが同種のフリップ時計を製造し、卓上時計の一形式として普及した。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。MoMAは「Cifra 3 Clock」として登録し、素材は樹脂の筐体、製造元からの寄贈と記録されている。
- MoMA チフラ3 クロック(1965年) 収蔵番号 719.1966
- Met チフラ3 テーブルクロック(1965年) 収蔵番号 1993.232
- AIC チフラ3 シンクロン フリップクロック(1965年) 収蔵番号 2019.1226
ジノ・ヴァッレの設計思想や経歴について詳しくはジノ・ヴァッレプロフィールページをご覧ください。
ソラーリの歴史や他の製品について詳しくはソラーリブランドページをご覧ください。
基本情報
| 製品名 | Cifra 3(チフラ3) |
|---|---|
| デザイナー | ジーノ・ヴァッレ(Gino Valle) |
| デザイン年 | 1965年(ニューヨーク近代美術館の収蔵記録による。ローラー式フラップ機構の特許取得は1966年) |
| メーカー | ソラリ・ディ・ウーディネ(Solari di Udine)/現行生産はソラリ・リネアデザイン(Solari Lineadesign) |
| 製品カテゴリー | 卓上時計 |
| 表示方式 | ローラー式フラップ表示(24時間表示) |
| 書体 | マッシモ・ヴィニエッリ選定(時と分で異なる書体) |
| 素材 | 現行モデル:PC-ABS樹脂、透明ポリカーボネートカバー |
| サイズ | 現行モデル:W180 × D95 × H105mm |
| 駆動 | 現行モデル:ステッピングモーター、単1形乾電池2本(1.5V) |
| 収蔵 | ニューヨーク近代美術館(収蔵番号719.1966) |