バーディー(Birdie)は、ドイツの照明デザイナー、インゴ・マウラーが2002年に発表したペンダントランプである。天蓋から放射状に伸びる12本の錫メッキ銅線の先端に、それぞれ電球が取り付けられ、その電球には本物のガチョウの羽根でつくられた一対の翼が添えられている。点灯すると、12羽の小鳥が天井から飛び立とうとしているかのように見える。
特徴・コンセプト
翼を持つ電球
この作品の核にあるのは、電球そのものに翼を付けるという発想である。マウラーは1992年、電球に一対の羽根を取り付けた「ルーチェリーノ(Lucellino)」を発表した。名称はイタリア語のluce(光)とuccellino(小鳥)を組み合わせたもので、以後この翼付き電球はマウラーの作品群を貫くモチーフとなった。バーディーは、その電球を12灯まとめて一つの器具に構成した吊り下げ照明にあたる。
使用者が形を決める
12本のロッドは錫メッキを施した銅線でできており、手で曲げ伸ばしできる。電球の高さ、角度、間隔は使用者が自由に決められるため、同じ製品でも設置後の姿は一つずつ異なる。水平に広げれば群れが散開したように、束ねれば密集したように見える。完成形を設計者が固定しない点が、この照明の性格を決めている。
素材と製法
翼にはガチョウの羽根が使われ、一枚ずつ手作業で取り付けられる。ロッドも一本ずつ手で成形される。製造はミュンヘンにあるインゴ・マウラー社の工房で行われ、機械による量産にはよらない。天然素材を用いるため、浴室や屋外など高湿度の環境では使用できない。
光源とバリエーション
発表当初のバーディーは、インゴ・マウラー社が自社製品用に特注した低電圧の小型ハロゲン電球(12灯)を使用していた。現行モデルはLEDに置き換えられており、1灯あたり1.5W、全光束1200lm、色温度2600K、演色性CRI 95以上、定格寿命15,000時間の専用電球を12灯備える。電圧は220–240Vまたは110–130Vで、天蓋に変圧器が内蔵され、二次側は12V交流となる。調光には対応するが、調光器は付属しない。
翼付き電球を用いた照明は「バーズ(Birds)」と呼ばれる一群をなしている。
- Birds Birds Birds
- 24灯の大型シャンデリア。アームを個別に調整できる。翼付き電球によるシャンデリアとしては最初期のもの。
- Birdie
- 12灯のペンダント。総全長100cm、直径約70cm。
- Birdie's Nest
- 10灯のモデル。柔軟な金属フレームを用いる。
- Lucellino
- 1992年発表の単灯モデル。テーブルランプ、ウォールランプなどの型がある。
評価
バーディーは、光源を隠さず、むしろそれ自体を生きもののように見せる点で、照明器具というより光のオブジェとして受け取られてきた。点灯時には羽根が光を透かし、壁面や天井に翼の影が落ちる。消灯時にも、天井から吊られた12羽のシルエットが空間に残る。
マウラーは「光の詩人」と呼ばれ、電球という工業製品を主題に据えた作品を数多く残した。バーディーは、その手法が最も広く知られた形の一つである。
基本情報
| 名称 | バーディー(Birdie) |
|---|---|
| デザイナー | インゴ・マウラー(Ingo Maurer) |
| 発表年 | 2002年(現行品はLED仕様) |
| 製造 | インゴ・マウラー社(Ingo Maurer GmbH) |
| 製造国 | ドイツ(ミュンヘン) |
| 種類 | ペンダントランプ(サスペンション) |
| サイズ | 直径 約700mm、総全長 約1000mm |
| 光源 | 専用LED電球 1.5W × 12灯(1200lm、2600K、CRI 95以上、定格寿命15,000時間) |
| 主要素材 | ガチョウの羽根、錫メッキ銅線、金属 |
| 調光 | 対応(調光器は別売) |
| 設置 | 天井直付。天井高260cm以上を想定 |