概要

インゴ・マウラー(1932-2019)は、ドイツの照明デザイナーである。1966年、電球の形をそのまま器具にした「バルブ」を最初の製品として発表し、同じ年にミュンヘンで自社デザイン・M(現インゴ・マウラー社)を始めた。紙、鳥の羽根、割れた磁器といった照明用でない材料を使い、設計から製造までを自社で行った。

バイオグラフィー

1932年5月12日、ドイツ・ボーデン湖のライヒェナウ島に生まれた。植字工の訓練を受けたのち、1954年から1958年までミュンヘンでグラフィックデザインを学んでいる。

1960年から1963年までアメリカに滞在し、ニューヨークとサンフランシスコでフリーランスのグラフィックデザイナーとして働いた。ヨーロッパに戻ってミュンヘンに定住し、1966年にデザイン・Mを始め、最初の照明「バルブ」を発表した。

1984年に低電圧の照明システム「ヤ・ヤ・ホー」を発表している。1998年11月にはニューヨーク近代美術館で、フェルナンドとウンベルトのカンパーナ兄弟とともに展覧会「Projects 66」が開かれた。2011年にイタリア工業デザイン協会(ADI)からコンパッソ・ドーロの生涯功労賞を受けている。2019年10月21日、ミュンヘンで没した。

デザインの思想と方法

マウラーの照明は、光源を覆い隠す器具ではなく、電球そのものを見せる構成をとることが多い。そのうえで、光を通す、受ける、影をつくるといった性質をもつ物であれば、照明用でない材料も取り入れた。

電球を主題にする

最初の製品バルブから、電球の形そのものを器具の形にしている。羽根を付けたルチェッリーノも、電球を覆わずに見せる構成をとる。

照明用でない材料を使う

ツェッテルツでは和紙、ルチェッリーノやバーディーでは鵞鳥の羽根、ポルカ・ミゼリア!では磁器の破片を用いた。

配線を構造に使う

ヤ・ヤ・ホーでは、張り渡した2本のケーブルが給電と支持を兼ね、光源の位置は使い手が動かして決める。

設計から製造までを自社で行う

自社で設計、製造、販売を行い、ミュンヘンでの手作業による製造を続けた。ポルカ・ミゼリア!のように、設置する空間に合わせて1点ずつ手作業でつくる限定生産の照明も製品として扱っている。

代表作にみる方法

バルブ(1966年)

電球の形をしたガラスの覆いの中に電球を収め、クロムめっきの金属の台に載せた卓上灯である。照明器具の形を光源そのものの形にしており、マウラーの最初の製品にあたる。→バルブ

ヤ・ヤ・ホー(1984年)

壁から壁へ、または天井に張った2本のケーブルに光源を取り付ける低電圧の照明システムである。光源の要素はケーブルに沿って動かせ、組み合わせと位置を使い手が決める。→ヤ・ヤ・ホー

ルチェッリーノ(1992年)

電球に鵞鳥の羽根の翼を付けた照明である。名称はイタリア語の「luce(光)」と「uccellino(小鳥)」を合わせたもの。電球そのものは覆われない。→ルチェリーノ

ポルカ・ミゼリア!(1994年)

割れた磁器の破片を金属の骨組みに取り付けた吊り照明である。食器という材料の用途を移しており、1点ごとに手作業でつくられる。

ツェッテルツ(1997年)

金属の骨組みに、文字の印刷された和紙と白紙を吊るした照明である。白紙には使い手が自分の言葉や絵を書き込め、紙の配置も変えられる。→ツェッテルツ 5 / ツェッテルツ 6

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。

  • MoMA バルブ(1966年) 収蔵番号 298.1999
  • MoMA 吊り照明の構造体(1966年、ピーター・ハンバーガーとの共作) 収蔵番号 458.1974
  • MoMA ヤ・ヤ・ホー 可変照明システム(1983-84年) 収蔵番号 148.1988
  • MoMA リトル・ブラック・ナッシング(1986年) 収蔵番号 149.1988
  • MoMA ルチェッリーノ 壁付け照明(1992年) 収蔵番号 300.1999
  • MoMA ロス・ミニマロス・ドス(1994年) 収蔵番号 299.1999
  • MoMA ポルカ・ミゼリア!(1994年) 収蔵番号 116.2003
  • MoMA ヴォ・ビスト・ドゥ、エジソン…?(1997年) 収蔵番号 301.1999
  • MoMA ツェッテルツ 吊り照明(1997年) 収蔵番号 302.1999
  • V&A ビビビビ(1982年) 収蔵番号 M.23-1992
  • Met 本人のデザインによる収蔵は確認できなかった(同館の「ディライト」ランプ〈2001.349.4〉はフランス・ファン・ニューウェンボルフとマルタイン・ヴェフマンのデザインで、インゴ・マウラー社は製造者)
  • AIC ヴォ・ビスト・ドゥ、エジソン…?(1997年) 収蔵番号 2007.113
  • AIC マイ・ニュー・フレイム(2012年、モーリッツ・ヴァルデマイヤーとの共作) 収蔵番号 2016.9.1

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1966年 照明 バルブ Ingo Maurer
1982年 照明 ビビビビ Ingo Maurer
1984年 照明 ヤ・ヤ・ホー Ingo Maurer
1992年 照明 ルチェリーノ Ingo Maurer
1994年 照明 ポルカ・ミゼリア! Ingo Maurer
1997年 照明 ツェッテルツ 5 Ingo Maurer
1998年 照明 ツェッテルツ 6 Ingo Maurer
2002年 照明 バーディー Ingo Maurer
2012年 照明 マイ・ニュー・フレイム(モーリッツ・ヴァルデマイヤーと共作) Ingo Maurer

プロフィール

生没年 1932年5月12日〜2019年10月21日
出身地 ドイツ・ライヒェナウ島
国籍 ドイツ
活動拠点 ミュンヘン
分野 照明
主な協働ブランド Ingo Maurer

Reference

Ingo Maurer(公式)Biography
https://www.ingo-maurer.com/media/1603_biographie_en.pdf
Ingo Maurer(公式)Bulb
https://www.ingo-maurer.com/en/products/bulb/
Ingo Maurer(公式)About us
https://www.ingo-maurer.com/en/info/about-us/
The Museum of Modern Art Collection: Ingo Maurer, Bulb
https://www.moma.org/collection/works/3230
The Museum of Modern Art: Projects 66(1998)Lucellino
https://www.moma.org/interactives/exhibitions/1998/projects66/i05.html
V&A Explore the Collections: Bibibibi
https://collections.vam.ac.uk/item/O322748/
The Art Institute of Chicago: "Wo Bist Du, Edison...?" Ceiling Lamp
https://www.artic.edu/artworks/191199
Dezeen「German industrial designer and "poet of light" Ingo Maurer dies aged 87」(2019年10月22日)
https://www.dezeen.com/2019/10/22/ingo-maurer-lighting-designer-obituary/