概要
タンチェア(F577)は、ピエール・ポーランが1967年にアーティフォートのために設計したラウンジチェアである。脚を持たず、床に近い低い座面をとる。金属のフレームにフォームを被せ、ストレッチファブリックで包むことで、継ぎ目のない外形をつくる。
特徴・コンセプト
伸びる布で包む
三次元に曲がる面へ普通の布を張るには、生地を分割して縫い合わせる必要があり、縫い目が表に出る。伸縮するジャージーなら、一枚のまま曲面に沿わせられる。フレームとフォームで形をつくり、その上を伸びる布で覆うことで、どの角度から見ても継ぎ目が現れない。
この手法は、ポーランが1954年のトーネ在籍時から試していたもので、タンチェアで最も明快な形になった。
脚を持たない
脚がないため座面が床に近く、腰を落とした姿勢になる。椅子としての高さを決める部材がないので、外形は曲面だけで完結する。床に置いた塊として見える。
色を単色でとる
張り地は単色で選ばれることが多い。継ぎ目や部材の切り替えがないため、色が面全体に均一に乗る。オレンジ、ライムグリーン、レッド、ブルーなどで展開されてきた。張り替えにも対応する。
エピソード
ポーランは、南仏の海辺で水着が身体の曲線に沿う様子から、伸縮素材を椅子の張り地に用いる着想を得たと伝えられる。
タンチェアは、ポーランがアーティフォートで手がけた一連の椅子の一つにあたる。同じ系列にはマッシュルームチェア(F560)やリボンチェア(F582、1966年)がある。
評価と影響
発表から半世紀を経て、アーティフォートによる生産が続いている。同じポーランでもパンプキンチェアやパシャ ラウンジチェアはステッチの線を表に出しており、継ぎ目を消す本作とは逆の方向にある。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、AIC=シカゴ美術館)。
- MoMA タンチェア(モデル577、1967〜1968年) 収蔵番号 1231.1968
- MoMA タンチェア(モデル577、1967年) 収蔵番号 453.2008.1-3
- AIC タンチェア(1967年) 収蔵番号 2015.603
ピエール・ポーランの設計思想や経歴について詳しくはピエール・ポーランプロフィールページをご覧ください。
アーティフォートの歴史や他の製品について詳しくはアーティフォートブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | タンチェア / Tongue Chair(モデル F577) |
|---|---|
| デザイナー | ピエール・ポーラン(Pierre Paulin) |
| ブランド | アーティフォート(Artifort) |
| 発表年 | 1967年 |
| デザインの成立国 | フランス |
| 分類 | ラウンジチェア |
| 構造 | スチールパイプのフレームにフォームを重ね、伸縮ジャージーで包む。脚を持たない |
| サイズ | 幅85cm × 奥行90cm × 高さ64cm、座面高約36cm |
| 関連モデル | マッシュルームチェア(F560)、リボンチェア(F582) |
| 収蔵 | MoMA(1231.1968、453.2008.1-3)、AIC(2015.603) |
Reference
- Tongue Chair (model 577) | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/3573
- Tongue Chair | The Art Institute of Chicago
- https://www.artic.edu/artworks/2015.603