Artifort(アーティフォート)
Artifortは、オランダ・スヒンデルに拠点を置く家具ブランドである。1890年にJules Wagemansがマーストリヒトで開いた張り師の事業を起点とし、1928年にArtifortの商標が導入された。1950年代後半にKho Liang Ieを美的顧問に迎えたことで、Pierre PaulinやGeoffrey Harcourtの設計による椅子を扱うようになる。1970年代の経営難を経て、1998年にオランダのLande Groupが商標を取得し、現在は同グループのブランドとして生産が続いている。
事業と製造の実体
現在のArtifortは、オランダ・スヒンデルに本社を置き、同地とベルギーのラナケン、トルコのブルサの生産設備で家具を製造している。いずれもLande Groupの拠点にあたり、同グループが持つ家具の構造に関する技術と、Artifortが受け継いだ張りの技術を組み合わせる構成が採られている。
製造技術の系譜は二つに分かれる。一つは内部のばね構造で、1930年代前半に取得したEpedaの特許にもとづく。一本の鋼線を編んで作るばねで、藁や馬毛を詰める従来の方法に比べて製作の手数が少なくてすむ。もう一つは1950年代末以降にPierre Paulinが持ち込んだ方法で、鋼管の骨組みに発泡材をかぶせ、伸縮する布で全体を継ぎ目なく包む構成である。骨組みの形がそのまま外形になるため、彫刻的な曲面を張り地家具として量産できる条件が生まれた。
この方法は製品ごとに型と骨組みを起こす必要があり、布の裁断と縫製にも精度を要する。マッシュルームチェアやリボンチェアのように連続した曲面を持つ製品は、この工程を前提として設計されている。一方オレンジスライスチェアでは、圧縮成形したブナ材の殻に発泡材を重ねる構成が用いられる。
沿革
張り師の事業から家具工場へ
1890年、Jules Wagemansがマーストリヒトで張り師の事業を興した。息子のHenricus Wagemansが家具の製造へ範囲を広げ、1920年代の終わりにはアムステルダムに展示場を構えている。当時の社名はH. Wagemans & Van Tuinenだった。1928年、Artifortの商標が導入される。ラテン語のarsとfortisを組み合わせた名称にあたる。
1930年代前半、同社はEpedaの特許の使用許諾を得た。一本の鋼線から編むこの内部ばねは製作の時間を大きく減らし、事業の転機となっている。1945年にHarry Wagemansが経営に就き、Theo Ruthとともに生産の近代化を進めた。1952年のCongo Chairがその成果の一つにあたる。
Kho Liang IeとPierre Paulin
1958年、室内設計者のKho Liang Ieが美的顧問として関わり始めた。Khoは製品構成、起用する設計者、展示や印刷物までを含めて助言する立場にあり、1975年に死去するまでこの役割を担った。Khoの推薦により、1958年からPierre Paulinが、1962年からGeoffrey Harcourtが同社の設計を手がけるようになる。
Paulinは鋼管の骨組みに発泡材と伸縮する布を組み合わせる方法を持ち込み、マッシュルームチェア(1960年)、オレンジスライスチェア(1960年)、リボンチェア(1966年)、タンチェア (F577)(1967年)を設計した。Paulinの協働は1979年まで続いている。Harcourtは事務空間や公共空間向けの製品を担当し、この分野での事業の拡大につながった。
経営の断絶と商標の移動
1975年のKho Liang Ieの死去と、その後の景気の後退により、同社は経営が行き詰まった。1998年、スヒンデルのLande Groupが Artifortの商標を取得する。スヒンデルとベルギーのラナケンに生産設備が設けられ、Lande Groupの構造に関する技術とArtifortの張りの技術を組み合わせる体制が組まれた。2014年にはKhodi Feizがアートディレクターに就いている。
デザイナーとの協働
Artifortの製品開発は、外部の設計者との協働によって進む。1958年以降は、製品構成と起用する設計者を助言する美的顧問を置く方式が採られ、この役割がKho Liang Ieに委ねられた。設計者が持ち込む造形に対して、それを量産できる工程を自社が用意する分担が、この時期の製品の性格を決めている。
20世紀の協働相手にはTheo Ruth、Pierre Paulin、Geoffrey Harcourt、Kho Liang Ieが挙げられる。1990年代以降はJasper Morrison、Wolfgang Mezger、René Holten、Jan Pesman、Patrick Norguet、Khodi Feizらとの協働が続いている。
Pierre Paulinの設計思想や経歴について詳しくはPierre Paulinプロフィールページをご覧ください。
主な製品群
Pierre Paulinの設計による椅子が製品の中心にある。鋼管の骨組みに発泡材と伸縮する布を重ねる構成では、マッシュルームチェア、リボンチェア、タンチェア (F577)がある。いずれも継ぎ目のない曲面を持ち、脚部を布で覆うか台座に載せる形を採る。
圧縮成形した木の殻を用いる構成ではオレンジスライスチェアがある。二つの同じ形の殻を金属の枠に載せる構造にあたる。ソファではABCD ソファを扱う。
現在は住宅向けに加えて、事務空間や公共空間向けの製品も製品群の主要な部分を占める。
基本情報
| ブランド名 | Artifort(アーティフォート) |
|---|---|
| 創業 | 1890年(マーストリヒトの張り師の事業として) |
| 創業者 | Jules Wagemans |
| 商標の導入 | 1928年(当時の社名はH. Wagemans & Van Tuinen) |
| 本社所在地 | オランダ・スヒンデル |
| 生産拠点 | オランダ・スヒンデル、ベルギー・ラナケン、トルコ・ブルサ |
| 資本関係 | 1998年よりLande Groupのブランド |
| 事業内容 | 張り地家具を中心とする家具の設計、製造および販売 |
| 公式サイト | https://www.artifort.com |
Reference
- Wikipedia - Artifort
- https://en.wikipedia.org/wiki/Artifort
- Louis Kalff Instituut - Artifort
- https://www.louiskalffinstituut.nl/en/artifort-2/
- Dutch Glory - Artifort: powerful design
- https://www.dutchglory.com/2016/08/11/artifort/