ミスター・インポッシブル
ミスター・インポッシブルは、フィリップ・スタルクとエウジェニ・キトレットが2008年にイタリアのプラスチック家具メーカー、カルテルのためにデザインしたチェアである。接着剤を使わず、2枚の楕円形ポリカーボネートシェルをレーザー溶接で一体化させるという、当時は困難とされた製法に挑み、これを実現した。その製造上の難しさが「ミスター・インポッシブル(Mr. Impossible)」という名の由来となっている。
透明なシェルと着色したシェルが接合部で溶け合い、二層の重なりが厚みとして見える。脚は中空の透明な4本による。
概要
スタルクはカルテルとの協働でルイゴーストなどのポリカーボネート製の椅子を発表してきた。それらは一体成形による単層のシェルだが、本作は2枚のシェルを重ねている。
特徴・コンセプト
レーザー溶接による接合技術
2枚の楕円形のシェルをレーザー溶接で接合する。接着剤を用いれば接合面に別の層が生じ、透明な素材では線として見えてしまう。溶接なら素材どうしが直接つながるため、境界が視覚的に途切れない。透明なシェルと着色したシェルの色が、接合部で連続して変化する。
浮遊感を生むトランスペアレント構造
脚は中空の円形断面をとる。中空にすることで、同じ外径のまま重量を抑えられる。透明なため、着色されたシェルの色だけが浮いて見える。
屋内外を問わない多用途性
ポリカーボネートは耐衝撃性と耐候性があり、屋外でも使える。
オーガニックフォルムと座り心地
シェルは卵形を基調とする。ポリカーボネートは荷重を受けてわずかにしなるため、硬い素材でありながら身体の動きに追随する。
エピソード
「ミスター・インポッシブル」という名称は、開発過程に由来する。接着剤を使わずに2枚のポリカーボネートシェルを一体化させるという発想は、当初は技術的に「不可能」と見なされていた。カルテルは、同社が長年培ってきたプラスチック加工の知見とレーザー溶接技術の応用によってこの課題を解決し、その達成を記念してこの名が付けられたとされる。
発表後には、シートシェルを不透明な光沢仕上げとしたバリエーション「スーパー・インポッシブル(Super Impossible)」も展開されており、オリジナルの透明感とは異なる艶やかな魅力を持つ派生モデルとして人気を得ている。
評価と影響
2008年にGood Design Awardを受賞している。
透明な樹脂の椅子では、ルイゴーストが既存の様式の輪郭を引き継ぎ、マスターズチェアが複数の椅子の輪郭を重ねる。ミスター・インポッシブルは、輪郭ではなく素材の層の重なりを主題としている。
4館の公開データでは、ミスター・インポッシブルの収蔵は確認できていない。
フィリップ・スタルクの設計思想や経歴について詳しくはフィリップ・スタルクプロフィールページをご覧ください。
カルテルの歴史や他の製品について詳しくはカルテルブランドページをご覧ください。
基本情報
| 商品名(日本語) | ミスター・インポッシブル |
|---|---|
| 商品名(英語) | Mr. Impossible |
| デザイナー | Philippe Starck(フィリップ・スタルク)with Eugeni Quitllet(エウジェニ・キトレット) |
| デザイン年 | 2008年 |
| ブランド | Kartell(カルテル) |
| 製造国 | イタリア |
| 素材 | ポリカーボネート(構造体:透明ポリカーボネート/シート・背面:透明または着色ポリカーボネート) |
| サイズ | W55 × D54 × H84 cm(座面高:46 cm) |
| 重量 | 約5.5 kg |
| カラーバリエーション | トランスペアレント(クリスタル、グリーン、グレー、オーカー、バイオレット、オレンジレッド)/オペーク(ホワイト、ブラック) |
| 耐候性 | 耐衝撃性・耐候性あり(屋外使用可) |
| 用途 | 住宅(ダイニング・リビング・書斎)、コントラクト(レストラン・ホテル・オフィス)、屋外 |
| スタッキング | 不可 |
| 受賞歴 | Good Design Award 2008(シカゴ・アテネウム建築デザインミュージアム) |
| 参考価格 | 約83,800円(税込目安)※販売店・カラーにより異なる |