表地をボタンで詰め物の奥へ引き込み、一定の間隔で留めて膨らみと折りひだをつくる張り技法。英語では deep buttoning と呼ぶ。
カピトネ
カピトネとは、表地をボタンで詰め物の奥へ引き込み、一定の間隔で留めることで、区画ごとの膨らみと折りひだをつくる張り技法のこと。英語では deep buttoning、日本語ではキャピトネとも表記する。
解説
下地にボタンの位置を割り付けたうえで、40センチほどの長針を使って表地・詰め物・下地を貫き、裏側で糸を引き締めてボタンを沈める。ボタンとボタンの間隔がそのまま膨らみの大きさになるため、割り付けの寸法が仕上がりを決める。引き込んだぶん表地は余るので、余りは折りひだとして畳み込む。ひだの向きと深さを揃える作業は現在も手で行われ、引く強さが区画ごとの張り具合を左右する。留め位置を千鳥に配ると、ひだが斜めに走って菱形の割り付けが現れる。
この技法が生まれた理由は装飾ではない。詰め物が馬毛や藁といったほぐれた繊維だった時代、中身は使ううちに移動し、座面や背の形が崩れていった。表地ごと詰め物を貫いて点で留めれば、そのずれは区画のなかに閉じ込められ、外へ広がらない。19世紀の英国では、コイルスプリングを組み込んだ厚みのある座が普及するのにあわせてこの押さえが必要になり、革張りのソファの標準的な仕上げとして定着した。チェスターフィールドと呼ばれる形式の見た目は、この必要から生まれた副産物である。
語はフランス語の capitonner(詰め物をして張る)に由来する。名詞形の capitonnage は、椅子などに詰め物をして仕上げる仕事そのものを指す。日本の家具業界ではカピトネとキャピトネの表記が併用され、英語圏では deep buttoning のほか button tufting とも呼ばれる。
詰め物がウレタンフォームに替わった現在、形を保つという当初の役割は小さくなり、意匠として選ばれることが増えた。それでも、ボタンを引く強さで表情が変わる性質は変わらないため、手仕事で仕上げる製品が残っている。チェスターでは、背と肘掛けの革をこの方法で留めている。一方、成形したフォームにあらかじめ窪みをつけ、表地をかぶせて似た見た目をつくる仕上げもある。ボタンが表地を貫いて裏側で留まっているかどうかが、両者を分ける目安になる。
キルティングとの違い
キルティングは表地と裏地の間に中綿を挟み、線状に縫って層全体を押さえる。押さえは連続した縫い目として現れ、面はおおむね平坦に保たれる。カピトネは点で引き込むため、留めた位置が深く沈み、その周囲に立体的なひだが立ち上がる。自動車の内装などで見られる菱形のステッチは、縫い目だけで菱形の模様をつくるもので、ボタンによる引き込みを伴わないことが多い。
Reference
- capitonnage(プログレッシブ仏和辞典 第2版/コトバンク)
- https://kotobank.jp/frjaword/capitonnage
- Deep Buttoning Upholstery Craftsmanship(George Smith)
- https://www.georgesmith.com/deep-buttoning-upholstery-craftsmanship/