概要
Uten.Silo(ウーテンシロ)は、ドイツのデザイナー、ドロテ・ベッカー(Dorothee Becker)が1969年にデザインしたウォールオーガナイザーである。さまざまな形と大きさのコンパートメント(容器)に、金属製のフックやクリップを組み合わせた壁掛けの収納システムで、1960年代後期のプラスチックデザインを代表する製品として知られている。
当初はベッカーの夫であるインゴ・マウラーが営むDesign M社から発売され、ヨーロッパやアメリカで広く販売された。1970年代のオイルショックによる原材料費の高騰などを背景に一時生産が途絶えたが、その後Vitra(ヴィトラ)が復刻し、現在も現行品として製造されている。
デザインの背景
Uten.Siloは、もともと木製の教育玩具から発展した。1960年代、ベッカーはモンテッソーリ教育に着想を得て、幾何学的な形のパーツを木製プレートの穴にはめ込む玩具をデザインしたが、これを実用的な収納システムへと展開させた。背景には、ベッカーの父が営んでいた薬局の壁に掛かっていた、ポケットの並ぶ布製の収納袋の記憶があったとされる。
1960年代後期は、プラスチックがデザインの主要な素材になりつつあった時代である。成型が容易で着色しやすく、比較的安価なこの素材を用いて、ベッカーは多機能な壁掛け収納としてUten.Siloをまとめあげた。
特徴と機能
Uten.Siloの特徴は、形も大きさも異なる多数のコンパートメントにある。大型のUten.Silo Iと小型のUten.Silo IIでは、容器の数や形、配置が異なる。円形や長方形などさまざまな形の容器が、用途に応じて使い分けられる。
金属製のフックやクリップには、鍵やはさみ、ペンなどを掛けたり、封筒やカード、写真などを挟んだりできる。この多機能性により、キッチン、バスルーム、子供部屋、オフィス、工房など、さまざまな場所で使える。
製造と素材
製品化にあたり、インゴ・マウラーは約20万ドルを投じ、3トンを超える金属製の射出成形金型を製作したと伝えられる。プラスチックという当時の新素材への確信がうかがえる投資だった。
現在のVitra版は、ABSプラスチックと金属製フックでつくられている。リサイクル素材を用いたUten.Silo REシリーズでは、自動車産業などで生じるポストインダストリアル・リサイクルABSを使用し、製品自体も100%リサイクル可能とされている。
基本情報
| デザイナー | ドロテ・ベッカー(Dorothee Becker) |
|---|---|
| ブランド | Vitra(ヴィトラ)/オリジナルはDesign M |
| デザイン年 | 1969年(Uten.Silo I)/1970年(Uten.Silo II) |
| 素材 | ABSプラスチック(REシリーズはリサイクルABS)、金属製フック |
| サイズ(Uten.Silo I) | 幅67cm × 高さ87cm × 奥行6.5cm |
| サイズ(Uten.Silo II) | 幅52cm × 高さ68cm × 奥行6.5cm |
| カラー展開 | ホワイト、ブラック、ジャパニーズレッド、ホライゾンブルー など |
| 原型所蔵 | Vitra Design Museum |