フロス タラクサカム88(Flos Taraxacum 88)が長く愛される理由
タラクサカム88(Taraxacum 88)は、アキッレ・カスティリオーニ(1918–2002)が1988年にフロス(Flos)のために設計したペンダントライトです。1960年に兄ピエール・ジャコモとともに発表した同名の照明を、まったく異なる構造で設計し直した作品にあたります。プレス成形・研磨した20枚のアルミニウム正三角形パネルを組んで正二十面体をつくり、各パネルに3個ずつ、計60個のクリア電球を配します。
「タラクサカム」はタンポポの属名に由来し、末尾の「88」はデザイン年である1988年を示します。電球をシェードで覆わず、そのまま造形の主役に据えるという構成は、カスティリオーニが繰り返し用いた手法です。発表から35年以上を経た現在もフロス社が継続生産しており、国内正規品はLED電球を同梱する仕様に切り替わっています。なお、原型にあたる1960年版のタラクサカムは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されています(Object number 374.1963)。
このページでは、各バリエーションの仕様と価格帯、購入ルート、設置条件、メンテナンス方法、コーディネート提案を解説します。
タラクサカム88のデザインストーリーについて詳しくはタラクサカム88紹介ページをご覧ください。
アキッレ・カスティリオーニの設計思想や経歴について詳しくはアキッレ・カスティリオーニ プロフィールページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
フロス社は、タラクサカム88を中心に「タラクサカム・ファミリー」として複数のバリエーションを製造しています。いずれもイタリア製のフロス正規品です。現行モデルは2025年よりLED電球への移行が進んでおり、フロス専用のクリアLEDグローブランプが同梱されます。
タラクサカム88 S LED(Taraxacum 88 S LED)——ペンダントライト
| 正式名称 | Taraxacum 88 S LED(タラクサカム88 S LED) |
|---|---|
| デザイナー | アキッレ・カスティリオーニ(Achille Castiglioni, 1918–2002) オリジナル:アキッレ&ピエール・ジャコモ・カスティリオーニ(1960年) |
| デザイン年 | 1988年(オリジナル・タラクサカム:1960年) |
| メーカー | フロス(Flos)/1962年創業、イタリア |
| 製造国 | イタリア |
| カテゴリ | ペンダントライト/シャンデリア |
| サイズ | 直径 φ800mm × 本体高さ 730mm 全長:最大6000mm(ケーブル含む) |
| 重量 | 12.8kg |
| 素材 | プレス成形・研磨アルミニウム(リフレクター20枚)、スチール(フレーム) |
| 光源 | E26口金 クリアボール球(φ125mm)× 60灯 国内正規現行品は専用LED電球(1灯あたり3.5W、色温度2200K、全光束310lm、定格寿命15,000時間)を同梱。器具全体の消費電力210W |
| 配光 | 直接光+反射光(アルミリフレクターによる拡散) |
| 設置 | ボルト吊施工(天井直付、電気工事必要) |
| 仕上げ | アルミ磨き仕上げ |
| 関連収蔵 | 原型となる1960年版タラクサカムがニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵(Object number 374.1963) |
| 参考価格帯(税込目安) | 日本国内正規:¥1,540,000(税込目安。電気工事費は含まれません) |
タラクサカム・ファミリー:バリエーション一覧
タラクサカムには、1988年版(88シリーズ)と1960年版(コクーン仕様)の二系統があり、それぞれサイズ違いが展開されています。
- Taraxacum 88 S LED(タラクサカム88 S)——ペンダント
- φ800mm、本体高730mm、60灯、質量12.8kg。1988年版の標準モデル。ホテルロビー、邸宅のダイニング、吹き抜けなど天井高のある空間を想定した大型シャンデリアです。参考価格:¥1,540,000(税込目安)。
- Taraxacum 88 C/W(タラクサカム88 C/W)——シーリング/ブラケット
- 直径610mm × 高さ310mm、15灯、質量2.3kg。正三角形パネル5枚で構成する小型モデルです。天井取付(シーリング)と壁面取付(ブラケット)の両方に対応し、一般的な住宅の天井高でも設置できます。参考価格:¥396,000(税込目安)。
- Taraxacum S1(タラクサカム S1)——コクーンペンダント
- 1960年版タラクサカムに基づくペンダント。スチールフレームにコクーン樹脂を吹き付けたシェードから、拡散した柔らかい光が広がります。88シリーズの露出電球とは対照的な光の質です。参考価格:¥385,000(税込目安)。
- Taraxacum S2(タラクサカム S2)——大型コクーンペンダント
- S1の大型版。直径約870mm × 高さ約640mm、質量2.8kg。光源は1灯(E26)で、シェード全体が発光面となります。参考価格:¥440,000(税込目安)。
類似商品・競合との比較
タラクサカム88はフロス社が独占的に製造する正規品であり、同一デザインのリプロダクトは存在しません。ここでは、大型シャンデリア・ペンダントランプとして購入を検討する際に比較対象となり得る名作照明を紹介します。
| 比較項目 | Taraxacum 88 S(Flos) | Flos 2097(Gino Sarfatti) | PH Artichoke(Louis Poulsen) |
|---|---|---|---|
| デザイン年 | 1988年(原型1960年) | 1958年 | 1958年 |
| デザイン方向性 | 幾何学×自然モチーフ 露出電球の美学 |
多灯シャンデリア 放射状のアーム構造 |
有機的多層構造 グレアを抑えた拡散光 |
| サイズ | φ800mm | φ880mm(30灯) φ1000mm(50灯) |
φ600mm / φ720mm / φ840mm |
| 光源数 | 60灯 | 18灯/30灯/50灯 | 1灯(多層リーフによる拡散) |
| 光の特性 | 放射状の多点光源+アルミ反射 強い直接光と反射光 |
多灯による面的な明るさ シャンデリアに近い輪郭 |
72枚のリーフによる拡散 光源が直接見えない均一な光 |
| 参考価格帯 | ¥1,540,000 | ¥400,000〜900,000 | ¥700,000〜2,500,000 |
- 光源そのものを見せたい方に
- タラクサカム88は、60灯のクリア電球が球面に並ぶ姿がそのまま造形になっています。点灯時の光量も大きく、天井高のある空間の主照明として機能します。
- 多灯シャンデリアの華やかさを求める方に
- Flos 2097は、ジーノ・サルファッティが1958年にアルテルーチェ社のために設計したシャンデリアです。同社は1974年にフロスの傘下に入り、現在はフロスから販売されています。放射状に伸びるアームの構成は、古典的なシャンデリアの輪郭に近いものです。
- まぶしさを抑えた光を求める方に
- PHアーティチョーク(Louis Poulsen)は、72枚のリーフが光源を覆い、どの角度から見ても電球が直接目に入らない構造です。露出電球のタラクサカム88とは、光の質が対照的です。
- より小型のタラクサカムを求める方に
- Taraxacum 88 C/W(¥396,000/税込目安)は、同じ構成を15灯に縮めた天井・壁面兼用モデルです。一般的な住宅の天井高でも設置できます。
使用感と暮らしへの取り入れ方
光の質と広がり方
60灯のクリア電球は正二十面体の全方位を向いており、そのまま外へ光を放ちます。同時に、研磨されたアルミニウムパネルが背後から光を反射するため、直接光と反射光が重なります。クリアガラス越しに発光体が見えることで、60個の光点が球面上に散る様子がそのまま見て取れます。
カスティリオーニは、この作品を共用エリアやロビー、特別な機会に多くの光を必要とする部屋のために設計したと述べています。60灯という光量は、空間全体を照らすメインライトとして想定されたものです。
設置条件と注意事項
- 天井高・空間の要件
- タラクサカム88 S(φ800mm、本体高730mm)は、3m以上の天井高がある空間を想定した製品です。全長は最大6000mmまで調整できるため、吹き抜けにも対応します。一般的な住宅の天井高(約2.4m)には88 C/W(シーリング/ブラケット型)が適しています。
- 構造的要件と電気工事
- タラクサカム88 Sは質量12.8kgのため、ボルト吊施工が必要です。石膏ボードのみの天井には取り付けられず、下地構造への固定が前提となります。取り付けには電気工事士による作業が必要です。設置面の構造強度を事前に確認してください。
- 電球仕様
- 国内正規の現行品は、E26口金の専用クリアLEDボール球(φ125mm、1灯あたり3.5W、2200K、310lm)× 60灯を同梱します。器具全体の消費電力は210Wです。専用電球は正規販売店から1個単位で購入できます。旧仕様の白熱球(25W × 60灯)版も流通しています。
空間別のコーディネート提案
- 邸宅のダイニングルーム
- カスティリオーニが特別な機会のための照明として構想した作品であり、フォーマルなダイニングルームは想定された用途に近い設置場所です。φ800mmという直径に対し、テーブル天板からの吊り下げ高さは80〜100cm程度が目安になります。
- ホテルロビー・グランドエントランス
- 高い天井と広い床面を持つロビーは、60灯分の光量を活かせる設置場所です。全長6000mmまでのケーブル調整により、吹き抜けの高さに合わせた吊り下げ位置を設定できます。
- リビングの吹き抜け
- 吹き抜けに設置すると、1階からは見上げる角度、2階からは目線に近い角度で見ることになります。全長最大6000mmのケーブルにより、吊り下げ位置を調整できます。
- 住宅の天井高に合わせて(C/Wモデル)
- 一般的な住宅の天井高(約2.4m)には、88 C/W(直径610mm × 高さ310mm、15灯、2.3kg)が適しています。天井に付ければシーリングライト、壁面に付ければブラケットライトとして使えます。
経年変化とメンテナンス
素材ごとの特性
- 研磨アルミニウム(リフレクター)
- 研磨仕上げのアルミニウムパネルは長期間にわたり光沢を保ちます。時間の経過とともにわずかに酸化が進み、やや落ち着いた光沢へ変化します。指紋や油脂は残りやすいため、取り扱いの際は手袋の使用を推奨します。
- スチールフレーム
- 内部構造のスチールフレームは、通常の室内環境では長期間にわたって安定した状態を維持します。高湿度環境では錆のリスクがあるため避けてください。
- クリア電球
- 専用LED電球の定格寿命は15,000時間です。60灯のうち数灯が切れると全体の見え方に影響するため、早めの交換を推奨します。専用電球はフロスの正規販売店から1個単位で購入できます。国内在庫がある場合は数営業日、イタリアからの取り寄せとなる場合は数か月を要することがあります。
日常メンテナンス
- アルミニウムパネルのお手入れ
- 柔らかい乾いた布で軽くホコリを払ってください。頑固な汚れは、中性洗剤を薄めた液で湿らせた布で拭いた後、乾いた布で仕上げます。研磨剤やアルカリ性洗剤はアルミニウムの光沢を損なうため使用しないでください。
- 電球のお手入れ
- クリア電球は指紋や汚れが目立ちやすいため、定期的に柔らかい布で拭き取ってください。切れた電球は速やかに交換するか、まとめて交換すると見え方が揃います。
- 修理・パーツ交換
- 正規販売店を通じて、パーツ破損や不具合の修理を依頼できます(有償)。電球の単体購入も正規販売店で対応しています。
どこで買うか:正規販売店と購入方法
国内正規販売
- ヤマギワ(YAMAGIWA)
- フロスの正規販売代理店。Taraxacum 88 S LED(参考¥1,540,000/税込目安)を取り扱っています。専用ランプ同梱、ボルト吊施工・要電気工事。納期は在庫状況により変動します。
- FLYMEe(フライミー)
- タラクサカム88 S、88 C/W、S1、S2などのバリエーションを取り扱うデザイナーズ家具・照明の通販サイトです。
- ザ・コンランショップ
- conranshop.jp にてTaraxacum 88 Sの取り扱いがあります。
- Shinwa Shop(シンワショップ)
- shinwashop.com にてTaraxacum 88 S Suspensionの取り扱いがあります。
- MMIS(エムエムアイエス)
- タラクサカム88本体のほか、専用LED電球の単体販売(1個単位)も行っています。
- その他の正規取扱店
- シバタ照明、イケダ照明などのフロス正規取扱照明専門店でも購入できます。価格は改定されることがあるため、購入時に各店へ確認してください。
海外正規販売
- Flos公式
- flos.com にて全バリエーションの仕様詳細・ディーラー情報を提供しています。
- 海外正規ディーラー
- Lumens、Lightopia、TRNK、HORNE など、国際的なデザイン照明ショップで取り扱いがあります。北米版にはE26口金・25W G40クリア白熱球×60灯の仕様も存在します。
中古・ヴィンテージ市場
タラクサカム88は1988年の発表以来、継続生産されています。1stDibsなどのヴィンテージマーケットで旧モデル(白熱球仕様)が出品されることがあります。中古品を購入する場合は、60灯すべての点灯確認、アルミニウムパネルの変形・傷の有無、ケーブルとソケットの状態、天井取付金具の完備を確認してください。白熱球仕様は消費電力が1500Wに達するため、回路容量の確認も必要です。
購入時チェックリスト
- バリエーションの選択(88 S φ800mm 60灯 / 88 C/W φ610mm 15灯 / S1・S2 コクーン仕様)
- 天井高の確認(88 S:3m以上推奨 / 88 C/W:一般住宅の天井高に対応)
- 天井構造の確認(ボルト吊施工。下地構造への固定が必須で、石膏ボードのみは不可)
- 重量への対応(88 S:12.8kg / 88 C/W:2.3kg。構造強度を施工業者と事前確認)
- 電気工事の手配(天井直付、専門電気工事店が必要。価格に工事費は含まれない)
- 電球仕様の確認(現行LED版:E26専用クリアLEDボール球 3.5W × 60灯、同梱)
- 交換電球の入手性確認(1個単位で正規販売店から購入可能。取り寄せに時間を要する場合あり)
- 搬入経路の確認(φ800mm、梱包サイズを事前確認)
コーディネート事例
カスティリオーニの系譜——フロス・クラシック・コレクション
タラクサカム88を核に、カスティリオーニがフロスのために手がけた照明で空間を構成するコーディネートです。リビングにアルコ(Arco)フロアランプ、ダイニングにタラクサカム88、書斎にタッチア(Taccia)テーブルランプ、廊下にパレンテシ(Parentesi)。既製部品や日用品の転用という共通の手法が、部屋ごとの照明をつなぎます。
20世紀イタリアの家具と合わせる
アルミニウムの幾何学的な構成を核に、20世紀イタリアの家具で空間をまとめるコーディネートです。カッシーナのLC2ソファ、ザノッタのメッツァドロ スツール(カスティリオーニ兄弟)、ポルトローナ・フラウのヴァニティ フェアなど、金属と革・木を組み合わせた家具と並べやすい構成です。
相性の良い他のデザイナーズアイテム
- フロス・ファミリー(カスティリオーニ作品)
- アルコ(Arco)、タッチア(Taccia)、パレンテシ(Parentesi)、トイオ(Toio)、スヌーピー(Snoopy)。カスティリオーニの作品群は素材と手法を共有しており、組み合わせやすい。
- フロス・ファミリー(他のデザイナー)
- Flos 2097(ジーノ・サルファッティ)、IC Lights(マイケル・アナスタシアデス)、Skygarden(マルセル・ワンダース)、K Tribe(フィリップ・スタルク)
- イタリアン・モダンの名作
- メッツァドロ(Zanotta/カスティリオーニ)、スーパーレッジェーラ(Cassina/ジオ・ポンティ)、CABチェア(Cassina/マリオ・ベリーニ)、ボビーワゴン(B-LINE/ジョー・コロンボ)
よくある質問
- 正規品の価格はどのくらいですか?
- Taraxacum 88 S LED(φ800mm、60灯ペンダント)は日本国内正規で参考¥1,540,000(税込目安)です。88 C/W(15灯シーリング/ブラケット)は約¥396,000、Taraxacum S1(コクーン)は約¥385,000、S2は約¥440,000。いずれも税込目安であり、電気工事費は含まれません。価格は改定されることがあります。
- どこで購入できますか?
- 日本国内ではヤマギワ、FLYMEe、ザ・コンランショップ、Shinwa Shop、MMIS、シバタ照明など、フロスジャパン正規取引店で購入可能です。海外ではFlos公式サイト、Lumens、Lightopia、ShopDecor、TRNK等の正規ディーラーで取り扱いがあります。
- 実物を確認できる場所はありますか?
- ヤマギワの店舗やフロス正規取扱店のショールームで展示されている場合があります。直径800mmという大きさと点灯時の光量は写真では把握しにくいため、可能な限り実物の点灯状態をご確認ください。訪問前に展示状況をお問い合わせください。
- 一般住宅の天井高(約2.4m)でも設置できますか?
- タラクサカム88 S(φ800mm、本体高730mm)は3m以上の天井高を推奨します。一般住宅の天井高には88 C/W(直径610mm×高さ310mm、15灯、2.3kg)が適しています。
- 電球の交換は可能ですか?
- はい。国内正規の現行品はE26口金のフロス専用クリアLEDボール球(3.5W、2200K、定格寿命15,000時間)を使用します。正規販売店から1個単位で購入できます。取り寄せとなる場合は納品まで時間を要することがあります。切れた電球は速やかに交換してください。
- 電気工事は必要ですか?
- はい。タラクサカム88 Sおよび88 C/Wはいずれも天井直付のため、電気工事士による取り付けが必要です。88 S(12.8kg)はボルト吊施工となり、天井の下地構造への固定が必須です。石膏ボードのみの天井には取り付けられません。価格に工事費は含まれません。
- 納期はどのくらいですか?
- 国内在庫がある場合は数週間で出荷されます。メーカー欠品時はイタリアからの取り寄せとなり、数か月を要する場合があります。お急ぎの場合は事前に在庫状況をお問い合わせください。
- 他に検討すべきデザイナーズ照明はありますか?
- 同じフロスの多灯シャンデリアとしてはFlos 2097(ジーノ・サルファッティ)が挙げられます。まぶしさを抑えた拡散光を求める方にはPHアーティチョーク(Louis Poulsen、ポール・ヘニングセン)、光源そのものを見せる照明としてはバーディー(Ingo Maurer)が比較対象になります。同じカスティリオーニの作品ではアルコ(Flos)も併せてご検討ください。