モノ-A カトラリーは、ペーター・ラーケが1950年代末に設計し、1959年に発売されたフラットウェアである。装飾を一切持たない直線的な造形は、発売当時「カトラリーになりたがっている板金」と評されるほど市場から遠かったが、現在はモノ社の製品群の基礎をなす定番として生産が続いている。
デザインの特徴
ハンドルからボウルへ、ハンドルからブレードへと、幅と厚みだけが連続的に変化する。曲面はあるが、模様や段差はない。
素材は18/10ステンレススチール。ナイフのブレードには、切れ味を長く保つ硬化ブレード鋼を用いる。仕上げはサテンブラッシュが標準で、鏡面仕上げも選べる。ナイフのブレードは、ラーケが当初設計した短いものと、後年追加された長いものの二種があり、どちらも同じように使える。
製造
製造はドイツ・メットマンのモノ社の工場で行われる。バリ取り、研磨、サンディング、ブラッシングといった金属加工の工程を経て仕上げられる。テーブルカトラリーのほか、サラダサーバー、ケーキサーバー、エスカルゴフォークなど、サービングピースも揃う。
コンセプトと背景
1950年代末、モノ社の三代目にあたるヘルベルト・ザイベルは、父ハインリヒ・ザイベルが続けてきた中低価格帯のカトラリー製造とは別の道を探していた。彼が依頼したのが、カッセルの造形大学で工業デザインを教えていたペーター・ラーケである。目標は、長く使える造形と、無理のない製法を両立させたカトラリーだった。
戦後の家財の買い換え需要のなか、当時のドイツの食卓では装飾のあるカトラリーが好まれていた。角張った輪郭、工業用ステンレスの質感、装飾の不在という選択は、その好みの逆を行くものだった。
エピソード
1959年の発売直後、この簡素さは小売業者にも消費者にも受け入れられなかった。ラーケとザイベルは、自分たちの設計が市場より先に出すぎたことを認めている。それでも生産は続けられた。
発売から14年後の1973年、モノ-Aは連邦優良デザイン賞(Bundespreis für gute Form)を受賞する。「カトラリーになりたがっている板金」という当初の評は、いまでは製品史を語る際の定型句になっている。
パッケージとロゴは、ラーケと同じくカッセルの造形大学で教えていたカール・オスカー・ブラーゼが手がけた。
評価と影響
発売から60年以上を経て、モノ-Aは戦後ドイツの工業デザインを語るうえで欠かせない例として扱われている。以下の美術館・デザイン機関が収蔵している。
主要収蔵機関
- フィラデルフィア美術館(アメリカ)
- カナダ国立美術館、オタワ(カナダ)
- ステデリック美術館、アムステルダム(オランダ)
- ドイツ刃物博物館、ゾーリンゲン(ドイツ)
- デザインセンター、シュトゥットガルト(ドイツ)
- ハウス・インダストリーフォルム、エッセン(ドイツ)
- カッセル州立美術館(ドイツ)
受賞歴
- 1973年
- 連邦優良デザイン賞(Bundespreis für gute Form)、ハノーファー
- 1997年
- iF エコロジーデザイン賞、ハノーファー
- 2016年
- アイコニック・インテリア・アワード、フランクフルト
- 2019年
- ジャーマン・デザイン・アワード、フランクフルト
基本情報
| 名称 | Mono-A Cutlery / モノ-A カトラリー |
|---|---|
| デザイナー | ペーター・ラーケ(Peter Raacke) |
| 発表年 | 1959年 |
| メーカー | Mono GmbH(ドイツ・メットマン) |
| 素材 | 18/10 ステンレススチール、硬化ブレード鋼(ナイフブレード) |
| 仕上げ | サテンブラッシュ仕上げ、鏡面仕上げ |
| デザイン国 | ドイツ |
| ナイフ | ショートブレード(オリジナル)/ロングブレード |