概要

ソラーリの表示板は、駅や空港の待合に据えられる大型の案内表示装置である。文字を刷った札を軸に巻き、これを回して一字ずつ組み替えることで、行先や発車時刻を書き替える。機構を考案したのはソラーリのレミジオ・ソラーリで、表示子と表示板の意匠は建築家ジノ・ヴァッレが担った。1950年代半ばにイタリア国鉄の駅で使われはじめ、1956年にはベルギーのリエージュ駅に一式が納められている。1962年にコンパッソ・ドーロを受け、以後およそ30年にわたり、欧州を中心に各国の駅と空港へ据えられた。

特徴・コンセプト

一文字を二枚の札で作る

札は文字の高さの半分しかない。一枚の札の表と裏に、隣り合う文字の下半分と上半分を分けて刷り、上下二枚が合わさって一文字を作る。文字全体を一枚に刷る方式では、札の高さは文字の高さと等しくなり、軸に巻いたときの径も回転に要する奥行きも倍になる。半分に割れば、同じ文字の大きさでも装置は薄く収まり、動かす質量が減るぶん切り替えも早く終わる。

札は薄い合成樹脂で、文字はシルクスクリーンで刷られている。紙や金属板では、数十桁が同時に翻る速さに耐えられない。

四十枚で一単位とする

一本の軸に四十枚の札を巻き、英字・数字・記号と空白をこの中に収める。数字だけを出す桁も地名を綴る桁も、同じ枚数・同じ構成の表示子を使う。

枚数を揃えたことで得られたのは、すでに出ている一行を上下の行へそのまま送る操作である。発着案内は、先頭の便が発つたびに残りが一行ずつ繰り上がる掲示であり、この送りをいかに簡単に行えるかが装置の使い勝手を決める。桁ごとに構成が違えば一字ずつ送り量を計算しなければならないが、すべての軸が同じ四十枚であれば、一律の制御で板全体を動かせる。

表示子を並べて板を組む

表示子は一文字分の独立した部品である。横に並べれば一行になり、縦に積めば複数行の板になる。行数と桁数は設置先の必要に応じて決まるため、装置そのものに定まった寸法はない。ニューヨーク近代美術館が収蔵する一台は九行十一桁で、幅はおよそ3.3メートルある。

1962年のコンパッソ・ドーロの選評は、この構成を評価している。離れた人に情報を伝えるという課題が、構成の単純さと標識としての明快さによって解かれており、しかもその解決が個々の要素それ自体のうちに収まっているため、要素が組み込まれる全体の質もそこで決まる、という趣旨である。

遠くから読ませる

地と文字は明度差の大きい二色でまとめ、書体は装飾のないサンセリフによる。文字は自ら光らず、周囲の明かりを反射して見える。角度を変えても明るさがほとんど変わらないのはこのためで、逆光の窓際でも斜め下からでも読める。表示が変わらないあいだは電力をほとんど使わず、給電が絶えても最後に出ていた内容がそのまま残る。

切り替えのたびに札が連なって鳴る。掲示を見ていない人にも更新を知らせる音であり、この装置の使われ方と切り離せない。

エピソード

ジェノヴァ駅からの求め

発端は鉄道からの求めだった。ソラーリは、曜日を略さず綴って示す札を備えた時計を作っていた。これを見たイタリア国鉄ジェノヴァ・ピアッツァ・プリンチペ駅の電気設備担当者が、行先・列車の種別・発車時刻を示し、離れた場所から操作できる装置を作れないかと持ちかけたと伝えられる。

駅で手間になるのは、掲示を書き替える作業そのものよりも、複数のホームと待合で内容を揃える作業である。遠隔操作を前提としたのはこのためで、イタリア語の名称テレインディカトーレは「遠隔の表示器」を意味する。

札を軽くする

初期の機構では、電磁石が軸を一周させるのに一分近い時間を要した。駅の掲示は数十桁が同時に動くため、この速さでは間に合わない。レミジオ・ソラーリは札を合成樹脂に替え、軸が背負う重さを減らす試みに入る。

彼が1957年に没したのち、この置き換えを仕上げたのがベルギーの発明家ジョン・マイヤーである。樹脂の札に文字を刷る方法が定まり、どの軸も四十枚とする構成もこのとき決まった。切り替えの速さを決めたのは駆動側の力ではなく、動かされる側を軽くしたことだった。

リエージュから各国へ

1956年、ベルギーのリエージュ駅に案内表示の一式が納められる。ソラーリはこれを自社の最初の設置として記録している。1964年に同社はピレリの傘下に入り、資本と販路を得た表示板は欧州にとどまらず南北アメリカ、アジア、アフリカへ広がった。1980年代にはパリのサン=ラザール駅、ニューヨークのJFK空港、ミラノのマルペンサ空港とリナーテ空港といった大規模な設置が続いている。

評価と影響

エーロ・サーリネンが設計したJFK空港のTWAターミナルには、卵形の殻に収めた表示板が置かれた。殻の表面はスピリンベルゴのモザイク職人が葺いた白いタイルで覆われている。2019年、このターミナルの建物がホテルとして再生された際、ソラーリはおよそ34,000点の部品を手作業で組んで表示板を作り直した。2004年の映画『ターミナル』では、大型の表示板が舞台装置として使われている。

同じ機構は室内向けの製品にも移された。ソラーリの卓上時計ダトール5やチフラ3は、駅と空港の板で確立した表示方式を机上の寸法まで縮めたものにあたる。

ソラーリ自身は1990年代以降、LEDや液晶による表示装置へ軸足を移している。札の板は各国の駅と空港から減りつつあるが、ボストンの交通局はサウス駅とノース駅の表示を更新した際、乗車案内に合わせて札の音を電子的に鳴らす仕組みを残した。

受賞歴・収蔵

  • コンパッソ・ドーロ 1962年(第7回)「空港・鉄道駅のための英数字テレインディカトーレ」デザイン:ジノ・ヴァッレ/製造:Solari & C.
  • ニューヨーク近代美術館 スプリットフラップ式発着案内表示装置(1996年) 収蔵番号 500.2004

収蔵記録は、ジノ・ヴァッレが意匠を担った1960年代の個体ではなく、製造者をソラーリとする1996年製の一台として登録されている。塗装した鋼とアルミニウム、合成樹脂塗料による九行十一桁の板で、A+D Circleからの寄贈。館の記録によれば、展示で流している便名や時刻はミラノ・マルペンサ空港で使われていた当時の時刻表にもとづく。

基本情報

製品名 Teleindicatore(テレインディカトーレ)/Split-Flap Display
デザイナー ジノ・ヴァッレ(Gino Valle)/機構の考案はレミジオ・ソラーリ(Remigio Solari)
ブランド ソラーリ(Solari di Udine)
発表年 1956年(1950年代半ばよりイタリア国鉄の駅で使用)
デザインの成立国 イタリア
表示方式 反転フラップ式(一軸四十枚、二枚で一文字)
表示できる文字 英字・数字・記号
主要素材 塗装鋼、アルミニウム、合成樹脂(ニューヨーク近代美術館収蔵品の記録による)
サイズ 設置先に応じて表示子の数で構成(収蔵品はW3,305 × H1,666 × D200mm)
受賞 コンパッソ・ドーロ(1962年)
収蔵 ニューヨーク近代美術館(収蔵番号500.2004)

Reference

Solari Spa - History
https://www.solari.it/en/history/
ADI Design Museum - Teleindicatori alfa-numerici per aeroporti e stazioni ferroviarie
https://www.adidesignmuseum.org/i-premiati/teleindicatori-alfa-numerici-per-aeroporti-stazioni-ferroviarie/
Treccani, Dizionario Biografico degli Italiani - VALLE, Gino
https://www.treccani.it/enciclopedia/gino-valle_(Dizionario-Biografico)/
The Museum of Modern Art - Split Flap Board Flight Information Display System
https://www.moma.org/collection/works/91954
MoMA Inside/Out - Hacking the Solari
https://www.moma.org/explore/inside_out/2011/09/30/hacking-the-solari/
Fondazione Pirelli - Gino Valle, gli orologi e la sintesi tra tecnologia e design
https://www.fondazionepirelli.org/it/iniziative/le-mostre/gino-valle-gli-orologi-e-la-sintesi-tra-tecnologia-e-design/