TP1は、1959年にブラウンが発表した携帯型オーディオ機器である。小型のトランジスタラジオと電池式レコードプレーヤー「P1」を一組とし、アルマイト処理を施したアルミのトレーと革のストラップで束ねて持ち運ぶ構成をとる。屋外や移動先でも音楽を聴けるようにという発想のもと、当時まだ大型が当たり前だった音響機器を、片手で提げられる大きさにまとめた製品である。
デザインを手がけたディーター・ラムスは、操作を必要最小限のダイヤルへ絞り、機能に直接関係しない要素を画面から排した。本体はレコード盤とほぼ同じ寸法に収められ、7インチのシングル盤を再生するのに過不足のない大きさに設計されている。
フォルムと構成
TP1は、レコードプレーヤーとラジオという二つのユニットを、共通のトレーの上で組み合わせて使う。上面には回転盤とトーンアーム、そしてラジオの目盛りとスピーカーグリルが整然と並び、つまみの数は最小限にとどめられている。二つのユニットはケーブルで接続され、ラジオ側がアンプとスピーカーの役割を担う。
グレーの樹脂ハウジングに、加工を抑えた革のストラップを合わせた配色は、後年のポータブルスピーカーにも影響を残した組み合わせとして知られる。持ち運びの取っ手をそのまま製品の表情に取り込んだ点に、道具としての性格がよく表れている。
素材と仕上げ
筐体にはプラスチックが用いられ、二つのユニットを支えるトレーにはアルマイト処理のアルミが使われている。革のストラップは持ち手を兼ね、金属と樹脂の硬質な面に手触りの異なる素材を添える。目盛りやグリルの配置は視認性と操作のしやすさを基準に整理され、装飾のための要素は加えられていない。
デザイン史における位置づけ
TP1は、ラムスがブラウンで手がけた一連の携帯型オーディオのなかに位置づけられる製品である。この系統は主に電池駆動で、共通する形の言語と機能上のつながりを持っていた。1960年代半ば、ブラウンの音響機器の主軸が据え置き型のハイファイへ移るのにともない、TP1は1962年に生産を終えた。
現存する個体は多くないが、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などのコレクションに収められており、20世紀の工業デザインを代表する小型機器の一つとして参照され続けている。現在は公式の復刻はなく、実物は主にヴィンテージ市場で取引されている。
基本情報
| 正式名称 | TP1(TP1 Portable Radio & Record Player) |
|---|---|
| デザイナー | ディーター・ラムス |
| デザイン年 | 1959年 |
| 製造ブランド | Braun(ブラウン) |
| 製造国 | ドイツ |
| 主な素材 | プラスチック筐体、アルミニウム(アルマイト仕上げ)トレー、レザーストラップ |
| 構成 | トランジスタラジオ + レコードプレーヤー(P1) |
| 生産期間 | 1959年〜1962年 |
| 主な収蔵美術館 | ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 |