概要

Feltri Chair は、ガエターノ・ペッシェが1987年にカッシーナのために設計したラウンジチェアである。厚手のウールフェルト一枚から全体を構成し、下部に樹脂を含浸させて自立させる。

1987年のミラノ家具見本市で発表された。

特徴・コンセプト

革新的な素材使用

フェルトは繊維を絡めた布で、そのままでは自立しない。下部に熱硬化性樹脂を含浸させれば、硬化した部分が構造体となる。上部は含浸させずに残すため、柔らかいまま身体に沿う。同じ一枚の素材が、部位によって役割を変える。

背もたれの高さ

背もたれは頭部より高く立ち上がり、左右が前方へ回り込む。座る人を三方から囲むため、視界が正面に限られる。

可変性と個性

上部が柔らかいままであるため、背もたれを外側へ広げたり内側へ折り込んだりできる。硬化させた部材では形が固定されるが、布であれば使う人が形を決められる。10種類の色と複数の内装生地が用意される。

エピソード

雨の日の着想

フェルトは水を含むと重くなるが、形は保たれる。この性質が、液状の樹脂を含浸させて硬化させる着想につながったとされる。

カッシーナ研究センターでの実験

フェルトに樹脂を含浸させる技術は、カッシーナの研究開発部門で確立され、特許が取得された。含浸させる範囲と量によって、硬化の度合いが決まる。

限定仕様

2018年には、ヴィンテージのキルトで装飾した100脚限定の仕様が発表された。布を素材とするため、別の布を重ねる仕様が成立する。

評価と影響

一枚の素材で構造と座面を兼ねる点では、樹脂を成形するパントンチェアやガラスを曲げるゴーストチェアと同じ方向にある。ただし、これらが全体を等しく硬化させるのに対し、Feltri は部位ごとに硬さを変える。

同時期のイタリアの家具では、カールトン・ルームディバイダーファースト・チェアが部材ごとに色や形を分けて要素を判別させる。Feltri は素材を一つに保ったまま、硬さの差で役割を分ける。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。同館は「Feltri Chair」として1986年の設計で登録しており、製造元からの寄贈にあたる。

  • MoMA フェルトリ チェア(1986年) 収蔵番号 403.1988.1-2

基本情報

デザイナー ガエターノ・ペッシェ(Gaetano Pesce)
ブランド カッシーナ(Cassina)
発表年 1987年
分類 ラウンジチェア
サイズ W140 x D71 x H127cm(ハイバック)/ W140 x D70 x H95cm(ローバック)
重量 約20kg
素材 ウールフェルト、熱硬化性樹脂、麻紐、キルティング生地、ポリエステル充填材
カラー 10種類のカラーバリエーション(フレーム6色×内装生地の組み合わせ)
製造 イタリア製(カッシーナ社特許製造技術)
価格帯 正規品(参考):約¥1,000,000〜¥1,500,000(税込目安)/ ヴィンテージ:オークション落札で約2,700〜9,900ドル