概要

ファースト・チェアは、ミケーレ・デ・ルッキが1983年にメンフィス・ミラノのために設計した椅子である。円盤と球という幾何学的な形の組み合わせで構成される。

黒い円盤の座面、金属チューブのフレーム、円形の背もたれ、二つの球体のアームレストからなる。メンフィスの作品のなかでは量産された数少ない例にあたる。

特徴とデザイン・コンセプト

線(フレーム)、面(座面と背もたれ)、球(アームレスト)という三種の要素で構成される。要素ごとに形が異なるため、それぞれの役割が外から判別できる。

木製の円盤座面は金属の縁で囲まれ、4本の脚で支えられる。前脚から立ち上がる円形のフープが後方へ傾き、その上端に背もたれの円盤と二つの球体が取り付く。背もたれを支柱で支えれば背面に部材が生じるが、フープであれば前方から連続する一本の線で済む。

部材ごとに色が分かれる。単色で仕上げれば全体が一つの塊として見えるが、色を変えれば各要素が独立して読める。背もたれは角度を調節できる。

デザインの背景とエピソード

メンフィスの第三回コレクションとして1983年に発表された。

アームレストが球体であるため、腕を置く位置が一点に定まる。平らな肘掛けでは前後に動かせるが、球では接する箇所が限られる。

メンフィスの作品の多くが少量生産だったのに対し、本作は量産された。円盤・球・チューブという既存の規格材で構成できるため、専用の型を必要としない。

評価と影響

部材ごとに形と色を分けて要素を判別させる構成は、同じメンフィスのカールトン・ルームディバイダーとも共通する。あちらは面を色で分け、こちらは形そのものを変えている。

現在もメンフィス・ミラノが生産を続けており、真正性証明書が付される。4館の公開データでは、ファースト・チェアの収蔵は確認できていない。同館が収蔵するデ・ルッキの他作品(Sinerpica W.7-2010 ほか)は、いずれも本作とは異なる。

基本情報

デザイナー ミケーレ・デ・ルッキ(Michele De Lucchi)
ブランド メンフィス・ミラノ(Memphis Milano)
デザイン年 1983年
サイズ 幅 59cm × 奥行 50cm × 高さ 90cm
素材 ラッカー塗装木材、塗装金属フレーム
カラー ブラック(座面、アームレスト)、ターコイズブルー(背もたれ)、シルバー(フレーム)
生産状況 現在も製造継続中(真正性証明書付)
所蔵美術館 メトロポリタン美術館(ニューヨーク)ほか