Foscarini(フォスカリーニ)

Foscariniは、イタリア・ヴェネツィア県マルコンに本社を置く装飾照明のメーカーである。1981年にムラーノ島でRiccardo Olivieriが設立し、当初は建築空間向けの受注照明を扱った。1988年、技術部門にいたCarlo UrbinatiとAlessandro Vecchiatoが会社を買い取り、外部の設計者を起用する体制へ切り替えている。自社の工場と炉を持たず、製品ごとに加工技術を持つ外部の工房へ生産を委ねる方式を創業時から続けている。吹きガラスから樹脂、複合材、コンクリート、陶器へと扱う素材を広げてきたのは、この構造による。2022年にはドイツのIngo Maurer GmbHの株式90%を取得した。

事業と製造の実体

Foscariniは生産設備を保有しない。マルコンの拠点が担うのは事務所機能、製品開発、試験、倉庫と物流であり、成形も組立も外部の企業が行う。2025年に公表した資料でも、自社を工場を持たない会社と規定し、生産活動を直接管理していないと記している。

この形は創業時の会社から引き継いだものである。設立当初のFoscariniは製造能力を持たず、設計を外部の専門家へ委ねる技術部門と、部材ごとの供給元の網によって運営されていた。自前の炉を持たないことはムラーノの同業他社に対する弱みだったが、UrbinatiとVecchiatoはこれを設計の自由度として運用し、素材や工法の選択を製品ごとに変える方針へ組み替えた。

供給元の構成は公表されている。戦略的な取引先は25〜30社で、品質に加えて環境・安全・情報開示を対象とする監査を隔年で実施する。調達は半径100km以内の企業を優先し、供給元の92%がイタリア国内、うちヴェネト州が51%、ロンバルディア州が20%、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州が19%を占める。ランプの組立を担う企業の1社は、就労が困難な人の雇用を目的とする社会的協同組合である。

加工技術は素材ごとに系統が分かれる。吹きガラスは創業期からの中心で、ムラーノの工房が担った。1992年のOrbitalでは、厚みの均一さと色数を確保するために吹きガラスではなく塗装した工業用のガラス板を用いている。1993年のHavanaではポリエチレンをブロー成形して傘とし、樹脂が加わった。2000年代前半には回転成形や、透明なシリコーン樹脂で被覆した金網も試されている。

複合材の採用は工程そのものの調達を伴った。2000年のMiteとTiteでは、ファイバーグラスの織布に炭素繊維またはケブラーの糸を巻き付け、樹脂とともに型上で成形して焼成する。釣り竿やボートのオールに用いられていた技術で、供給元は自社の工程を作り替えて対応した。糸の量と配置が透過の度合いを決め、同時に強度と柔軟性を与えるため、構造材と発光体を1つの部材で兼ねることができる。2010年代以降はコンクリートと陶器が加わり、後者は2022年にCeramica Gatti 1928との共同研究として進められた。

製品の安全と品質は、外注を前提とした管理の仕組みで支えられている。1992年以降、イタリアのIMQ、ドイツのVDE、北米のULの各基準に適合するよう仕様を整え、自社の試験室と外部機関の双方で試験を行う。1990年には苦情を集計する仕組みを設け、1996年にはイタリアの照明業界では早い段階でUNI EN ISO 9001を取得した。環境管理のUNI EN ISO 14001は2012年に加えている。

沿革

ムラーノでの創業

1981年、Riccardo OlivieriがムラーノのFondamenta Manin 1に会社を設立した。ロゴはヴェネツィアのゴンドラの舳先を飾る金具フェッロをかたどったFで、事業は建築空間向けの受注照明であり、初期の受注はアラブ諸国からのものが多かった。

技術部門にいたCarlo UrbinatiとAlessandro Vecchiatoは、それぞれローマとヴェネツィアで建築を学んでおり、VecchiatoはFratelli Tosoとの仕事を通じて島のガラス産業を知っていた。受注仕事を補うカタログ製品の生産を2人が提案したものの当時の所有者は関心を示さず、2人は独自に進めた。1982年に設計したGraphosとClessidraが同年9月のEuroluceで発表され、1983年11月13日にはムラーノの本社で最初のカタログが披露されている。1985年には規格品が売上の2割に達し、Adam D. TihanyとJoseph ManciniによるWassily off the Wallが外部の設計者による最初のコレクションとなった。

経営権の移転とムラーノからの離脱

1988年、VecchiatoとUrbinatiが会社を買い取った。Rodolfo Dordoniが1988年から1993年までアートディレクター兼設計者を務め、1989年にはロゴからムラーノへの言及を外している。ヴェネツィアとの結び付きを前面に出さないという判断であり、素材と市場を広げる下地になった。

1990年のLumiereが最初の大きな商業的成功にあたる。1992年のOrbitalはムラーノガラスを使わない最初の製品で、1993年のHavanaでは樹脂が用いられた。同じ1993年5月、業務部門がムラーノを離れてマルコンへ移り、1994年に全社が本土へ移転する。この時期にグラフィック、広報、製品開発が独立した専門家へ委ねられ、社外の資源を組み合わせる運営の形が整った。

素材開発と組織の確立

2000年、2年の開発を経てMarc SadlerのMiteとTiteが発表され、翌2001年に、専用に設計された素材の使い方における技術的な新しさを理由としてCompasso d'Oro ADIを受けた。2003年11月には、最初のカタログから20年にあたる年としてマルコンの新社屋が開設されている。

2010年、Beppe Finessiとともに出版企画Inventarioを立ち上げた。費用は全額を同社が負担する一方で編集は独立しており、自社のランプを題材にしない方針をとる。2013年にはミラノのSpazio BreraとニューヨークのSpazio Sohoを開いた。2014年、InventarioがCompasso d'Oro ADIを受け、同じ年にCarlo Urbinatiが単独の代表者となっている。

Ingo Maurerの取得

2019年、ミラノの拠点を照明の販売店が集まるCorso Monforteへ移し、Spazio Monforteとして開いた。2022年5月25日にはIngo Maurer GmbHの株式90%を取得する契約を結び、27日に手続きを終えている。残る10%は創業者の娘Sarah Utermöhlenが保有する。Ingo Maurerは別のブランドとして運営が続き、製造はミュンヘンで行われている。

デザイナーとの協働

社内に意匠の部門を置かず、製品ごとに外部の設計者へ委嘱する。1985年のWassily off the Wallが外部起用の最初で、1988年の経営交代以降は製品と広報の双方で独立した設計者を使う方針が定着した。Rodolfo Dordoniはアートディレクターを兼ね、ロゴと企業イメージの設計も担っている。1993年に協働が終わったのは、単一の設計者と結び付けられることを避け、扱う表現の幅を広げるという判断による。

その後の協働相手には、1992年から関係が続くFerruccio Laviani、Marc Sadler、Jozeph Forakis、Tom Dixon、Patricia Urquiola、Ludovica + Roberto Palomba、Luca Nichetto、Ionna Vautrin、Lucidi Pevere、Andrea Anastasio、Garcia Cumini、Eugeni Quitllet、Felicia Arvidらが挙げられる。2018年にはローザンヌのECALのプロダクトデザイン修士課程と組み、携帯できる照明を主題とする課題に取り組んだ。

主な製品群

現在の製品は、吊り下げ、フロア、壁付け、天井付け、テーブル、屋外の6つの用途で整理されている。同じ設計を寸法違いで展開する例が多く、既存の型を大型化した版を別の製品として加える運用も採られてきた。2020年代には充電式の卓上照明が加わった。

カボシェは2005年にPatricia UrquiolaとEliana Gerottoが設計したもので、透明な球を連ねて傘を構成する。2021年には構造を整理した改良版が加えられた。

2009年からの10年間は、Diesel Livingの照明コレクションの開発と販売を担った。自社の名で出す製品とは別に、他社ブランドの製品を引き受けた例にあたる。

受賞・収蔵

Compasso d'Oro ADIは2001年と2014年の2回受けている。2001年はMarc SadlerのMiteおよび吊り下げ型のTite、2014年は出版企画Inventarioが対象だった。名誉賞では、2009年の展示構成Infinityが2011年に、AplombやBinicなど5点が2014年に、Satellightが2020年に選ばれている。2017年には、Andrea AnastasioのFiloがミラノサローネの設ける賞のEuroluce部門を受けた。

美術館の収蔵では、ニューヨーク近代美術館がJoseph Forakis設計のHavana吊り下げ照明を収蔵番号227.1998で所蔵する。1993年の製品で、ブロー成形したポリエチレンによる傘を持ち、1998年に製造元からの寄贈として登録された。

現在の展開

本社はマルコンのVia delle Industrie 27にあり、米国、英国、日本、中国に販売会社を置く。製品は80か国で扱われ、販売網は約1,500の複合取扱店と、ミラノのSpazio Monforte、ニューヨークのSpazio Sohoの2つの直営ショールームからなる。2025年時点の従業員は89人で、生産を外部に委ねる構造がこの規模と対応している。株式は外部資本の傘下になく、独立系の企業として運営されている。

マルコンの敷地では2018年から2023年にかけて改修が行われ、倉庫屋根の断熱化、三重ガラス窓、熱回収式の換気設備、ヒートポンプの導入などが実施された。99kWpの太陽光発電設備を備え、2025年の消費電力の約4割を自家発電でまかなっている。残りは再生可能エネルギー由来の保証書付きで購入しており、暖房用のメタンガス設備は2026年に置き換える計画が公表されている。

文化事業では、2008年から2014年までヴェネツィア・ビエンナーレの公式スポンサーを務めた。Inventarioのほか、供給元の職人の仕事を記録するMaestrie、ランプが置かれた住宅とその住み手を扱うViteといった企画を続けている。Euroluceが開かれない年のミラノデザインウィークは研究の発表に充てており、2026年にはJozeph ForakisとLorenzo Palmeriに委嘱した3Dニットと光の実験を公開した。

基本情報

ブランド名 Foscarini(フォスカリーニ)
設立 1981年
創業者 Riccardo Olivieri
創業地 イタリア・ヴェネツィア(ムラーノ島)
本社所在地 イタリア・ヴェネツィア県マルコン
資本関係 Ingo Maurer GmbHの株式90%を保有(2022年取得)
事業内容 装飾照明の企画・開発および販売。製造は外部の企業へ委託
公式サイト https://www.foscarini.com/

Reference

Foscarini - Being Foscarini(沿革タイムライン)
https://www.foscarini.com/en/essere-foscarini/
Foscarini - 83'03 Twenty Years of Lighting Design(社史モノグラフ、Alberto Bassi編)
https://cdn1.foscarini.com/Catalogues/Foscarini_83_03_EN.pdf
Foscarini - Sustainability, Our commitment ed. 2025
https://www.foscarini.com/wp-content/uploads/2026/06/Foscarini_Sustainability-Document_ed2025_EN.pdf
Foscarini - Maestrie(供給元の職人技に関する企画)
https://www.foscarini.com/en/maestrie/
Foscarini - Ingo Maurer enters the Foscarini hub of creativity
https://www.foscarini.com/en/ingo-maurer-enters-the-foscarini-hub-of-creativity/
MoMA - Joseph Forakis, Havana Hanging Lighting Fixture, 1993(収蔵番号 227.1998)
https://www.moma.org/collection/works/2840
IFDM - Foscarini, headquarter in lighting street(Spazio Monforte開設)
https://ifdm.design/2019/03/29/foscarini-headquarter-in-lighting-street/