概要
アルベルト・メダ(1945年生まれ)は、イタリアのデザイナーである。ミラノ工科大学で機械工学を学び、カルテルの技術部門を経て1979年に独立した。材料の強度と重量の関係を計算したうえで形を決める進め方をとり、炭素繊維を用いたライト・ライト・チェアや、ヴィトラのメダ・チェアを設計している。コンパッソ・ドーロ賞を複数回受けた。
バイオグラフィー
1945年5月9日、イタリア・コモ湖畔のトレメッツィーナに生まれた。ミラノ工科大学で機械工学を学び、1969年に修了している。設計者としては例外的に、工学の学位から出発した経歴にあたる。
1969年から1973年まで、自動車部品メーカーのマニエッティ・マレッリで生産管理に携わった。1973年からはカルテルの技術部門の責任者となり、樹脂成形による家具と実験器具の開発にあたっている。
1979年に独立し、ミラノにスタジオを構えた。アレッシィ、アリアス、ルーチェプラン、ヴィトラ、カルテルなどのために設計を行っている。照明のパオロ・リッツァットとは20年以上にわたり協働した。
ミラノ工科大学でも教えている。現在は息子のフランチェスコ・メダとの協働も行っている。
デザインの思想と方法
メダの出発点は機械工学である。この分野では、部材の断面は荷重と材料の性質から計算で決まる。必要な強度を満たす最小の断面を求めれば、形は自ずと定まる——この順序が設計の基本にある。造形の選択は、計算の結果として残された範囲でしか行われない。
必要な強度から断面を決める
椅子の脚は、座る人の体重と衝撃に耐えればよい。過剰な断面は材料の無駄であり、重量も増す。メダは材料ごとの強度を前提として断面を絞り込み、そこから残る形を製品とする。結果として部材は細くなるが、これは軽く見せるための意匠ではなく計算の帰結にあたる。
他分野の材料を持ち込む
1987年のライト・ライト・チェアでは、航空機や競技用自転車で用いられていた炭素繊維の複合材を家具に使った。当時この材料は家具の分野で前例がなく、成形の方法から検討する必要があった。重量は約1キログラムで、木や金属では到達できない値になる。
機構を持たずに動きを得る
1996年のメダ・チェアは、座る人の姿勢の変化に背もたれが追従する事務椅子である。多数の部品からなる調整機構を持たず、部材の弾性と支点の位置だけで追従を成立させる。部品が少ないほど故障も減り、保守の手間も下がる。
照明で薄さを追う
パオロ・リッツァットとの協働による照明では、断面を極限まで薄くする方向をとった。光源を収める体積が減れば、器具は空間の中で目立たなくなる。構造上必要な厚みをどこまで削れるかという計算が、そのまま形を決めている。
ヴィトラの歴史や他の製品について詳しくはヴィトラ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ライト・ライト・チェア(1987年、アリアス)
炭素繊維の複合材とノーメックスのハニカム材で構成した椅子である。航空機の構造材に用いられる材料を家具に適用した早い例にあたり、重量は約1キログラムに収まる。当時の生産技術では単価が高く、製造数は限られた。ニューヨーク近代美術館が1994年に収蔵している(収蔵番号397.1994)。
ソフト・ライト チェア(1988年)
ライト・ライト・チェアの構成を受け継ぎつつ、座面に柔軟性を持たせた椅子である。硬い炭素繊維の枠に、たわむ面を組み合わせる。軽量と座り心地を両立させる方向の検討にあたる。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号398.1994)。
ティタニア(1989年、ルーチェプラン)
パオロ・リッツァットとの共同設計による吊り照明である。楕円形の骨組みに薄い金属の羽根を並べ、内部に色付きの板を差し替えられる。骨組みの内側は空洞で、体積の割に軽い。差し替えによって光の色が変わる構成をとる。
ロング・フレーム(1994年、アリアス)
アルミニウムの押出材の枠に、網状の布を張った寝椅子である。骨組みと張り面という二つの部材だけで構成され、詰め物を持たない。布の張力が身体を支えるため、材料の総量が少なくて済む。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号243.1998)。
メダ・チェア(1996年、ヴィトラ)
座る人の姿勢に背もたれが追従する事務椅子である。多数の部品からなる調整機構を持たず、部材の弾性と支点の配置だけで追従を成立させる。部品点数が少ないため、保守と分別が容易になる。現在も同社の主要な製品群の一つにあたる。→メダ・チェア
評価と影響
メダは一般に、工学の計算を設計の出発点とする方向を代表するイタリアの設計者と評価されている。造形の選択より前に材料と強度の条件を確定させるという順序が、繰り返し論じられる。
炭素繊維の複合材を家具に用いた1987年の試みは、材料の転用の例として言及される。当時の単価では量産に至らなかったが、他分野の材料を検討の対象に含めるという方向を示した。
ヴィトラのメダ・チェアは、機構ではなく部材の弾性で追従を得るという構成で、事務椅子の分野に一つの解法を示した。ルーチェプランでのパオロ・リッツァットとの協働も20年以上に及んでいる。
受賞・収蔵
受賞
- コンパッソ・ドーロ賞を複数回受賞(1989年 ロラ、1994年 ティタニア ほか)
- 1997年 グッドデザイン賞 金賞(日本、メダ・チェア)
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。
- MoMA オン・オフ テーブルランプ(1983年) 収蔵番号 239.1994.1-2
- MoMA ライト・ライト・チェア(1987年頃) 収蔵番号 397.1994
- MoMA ソフト・ライト サイドチェア(1988年頃) 収蔵番号 398.1994
- MoMA ロング・フレーム シェーズロング(1994年) 収蔵番号 243.1998
- MoMA ミックス ランプ(2005年) 収蔵番号 82.2009
- V&A カフスボタン(2018年) 収蔵番号 CD.31-2020
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1983年 | 照明 | オン・オフ | Luceplan |
| 1987年 | 椅子 | ライト・ライト・チェア | Alias |
| 1988年 | 椅子 | ソフト・ライト | Alias |
| 1989年 | 照明 | ティタニア(パオロ・リッツァットと共同) | Luceplan |
| 1990年 | 照明 | ロラ(パオロ・リッツァットと共同) | Luceplan |
| 1994年 | シェーズロング | ロング・フレーム | Alias |
| 1996年 | オフィスチェア | メダ・チェア | Vitra |
| 1999年 | 椅子 | フレーム コレクション | Alias |
| 2005年 | 照明 | ミックス | Luceplan |
| 2000年代 | 椅子 | ヴィトラのためのオフィスチェア各種 | Vitra |
| 2000年代 | 什器 | カルテルのための製品 | Kartell |
| 2000年代 | 照明 | アルテミデのための照明 | Artemide |
プロフィール
| 生年 | 1945年5月9日 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・トレメッツィーナ |
| 国籍 | イタリア |
| 活動拠点 | ミラノ |
| 分野 | 家具、照明、オフィスチェア |
| 主な協働ブランド | Vitra、Alias、Luceplan、Kartell、Artemide、Alessi |
Reference
- Alberto Meda | Vitra
- https://www.vitra.com/en-us/product/designer/alberto-meda
- Alberto Meda | Alias
- https://www.aliasdesign.it/en/designers/alberto-meda
- Alberto Meda | Luceplan
- https://www.luceplan.com/en/designers/alberto-meda
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/