アルベルト・メダ:テクノロジーと詩情が交差する軽やかさの巨匠
イタリアデザイン界において、アルベルト・メダは「デザイナー・エンジニア」として独自の地位を確立している。機械工学のバックグラウンドを持ちながら、航空宇宙技術を家具に応用し、複雑なテクノロジーから究極のシンプルさを導き出す彼の作品は、6度のコンパッソ・ドーロ受賞という偉業とともに、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに収蔵され、現代デザインの基準を再定義し続けている。
バイオグラフィー
1945年、イタリア・コモ湖畔の美しい町トレメッツィーナ(レンノ)に生まれたアルベルト・メダは、イタリアデザイン界において稀有な経歴を持つ。多くのイタリア人デザイナーが建築学を学ぶ中、メダはミラノ工科大学で機械工学を専攻し、1969年に学位(Laurea)を取得。ピエトロ・ロカテッリとレオ・フィンツィという巨匠のもとで学び、材料、生産プロセス、技術革新に関する深い理解を身につけた。
卒業後はマニエッティ・マレッリ社(1969-1973年)で中央生産管理部門のアシスタントとして産業経験を積み、その後カルテル社の技術ディレクター(1973-1979年)に就任。この6年間、プラスチック素材の実験的開発に携わり、材料の「共作用(coaction)」という革新的なプロセスの特許を取得した。
1979年、メダは34歳でミラノに独立デザインスタジオを開設。エンジニアリングの厳密さと実用主義的なアプローチをデザインに持ち込み、材料と生産プロセスへの深い洞察を武器に、産業デザイナーとしてのキャリアを本格的に始動させた。
現在79歳(2025年時点)となったメダは、ミラノを拠点に活動を続け、息子フランチェスコ・メダとのコラボレーションを深めながら、2023年にはミラノ・トリエンナーレで大規模な回顧展「Tensione e Leggerezza(緊張と軽やかさ)」を開催。半世紀以上にわたる創造活動の軌跡を世界に示した。
デザイン思想と哲学
アルベルト・メダのデザイン哲学は、一つの逆説的な命題に集約される。「テクノロジーが複雑になればなるほど、よりシンプルで日常的な、ほとんど『有機的な』イメージを持つオブジェクトを生み出すのに適している」。この思想は、彼の全作品を貫く核心である。
関係性への注目
メダの独特なアプローチは、あらかじめ決められた形態言語ではなく、コンポーネント間の「関係性」を優先する点にある。「シンプルさは、複雑さを徐々にほどいていく長いプロセスの結果である。私の焦点は形式的な外観にあるのではなく、コンポーネント間の、そしてオブジェクトとユーザーとの間の『関係性』にある」と彼は述べる。
思考と実践の循環
メダの方法論は「少し斜視の(cross-eyed)」、つまり複数の視点を同時に見る能力と自ら表現される。「デザインプロセスは直線的ではない。形は最初から『ア・プリオリ』に与えられるものではなく、思考と実践のサイクルから派生する」。
倫理としてのテクノロジー
メダにとって、テクノロジーは自由を提供すると同時に制約を課すものである。「選択は自由だが、一度選択したら、それが課す制限を尊重しなければならない。テクノロジーとその美学には、私たちが尊重すべき『倫理的』側面がある」。
主要代表作
Light Light Chair(1987年/アリアス)
デザイン史におけるランドマーク的作品。航空宇宙産業の炭素繊維複合材を家具に応用した世界初の試みであり、わずか1kgという驚異的な軽量性を実現。MoMAの永久コレクション(1994年取得)に選定され、現代デザインの金字塔となっている。
Meda Chair(1996年/Vitra)
「ダイナミックな快適性」を目指し、複雑な隠れたメカニズムなしに身体の動きに応答する画期的なオフィスチェア。グッドデザイン金賞(日本、1997年)、I.D.デザインレビュー「ベスト・オブ・カテゴリー」(1998年)、ブンデスプライス・プロダクトデザイン(2000年)を受賞。
Titania サスペンションランプ(1989年/ルーチェプラン)
パオロ・リッツァットとの20年にわたる協働で生まれた照明デザインの傑作。「羽のように薄く、浮遊するボリューム」として、極めて薄いプロファイルを実現。デザインプラス賞(1992年)を受賞。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1985年 | 照明 | Berenice ランプ | Luceplan |
| 1987年 | 椅子 | Light Light Chair | Alias |
| 1989年 | 照明 | Lola ランプ | Luceplan |
| 1989年 | 照明 | Titania サスペンションランプ | Luceplan |
| 1994年 | 椅子 | Frame コレクション | Alias |
| 1994年 | 照明 | Metropoli ランプシリーズ | Luceplan |
| 1994年 | 椅子 | Longframe | Alias |
| 1996年 | 椅子 | Meda Chair | Vitra |
| 1998年 | 照明 | Fortebraccio ランプ | Luceplan |
| 2000年 | 収納 | Partner 書棚 | Kartell |
| 2001年 | アクセサリー | Upper 梯子 | Kartell |
| 2005年 | 照明 | Mix ランプ | Luceplan |
| 2007年 | プロダクト | Solar Bottle | - |
| 2007年 | システム | Medamorph System | Vitra |
| 2008年 | 椅子 | Honeycomb 折りたたみ椅子 | Kartell |
| 2011年 | テーブル | チーク材折りたたみテーブル | Alias |
| 2011年 | 照明 | Otto Watt ランプ | Luceplan |
| 2012年 | 椅子 | Physix Chair | Vitra |
| 2016年 | アコースティック | Flap アコースティックパネル | Caimi Brevetti |
| 2016年 | 照明 | Aledin ランプ | Kartell |
| 2018年 | ラジエーター | Origami | Tubes Radiatori |
| 2019年 | アイウェア | アイウェアコレクション | JINS |
| 2020年 | ラジエーター | Step-by-Step | Tubes Radiatori |
| 2022年 | 照明 | Chiaroscura フロアランプ | Foscarini |
| 2022年 | システム | HUB System | Alias |
| 2022年 | テーブル | Frametable Outdoor | Alias |
Reference
- Alberto Meda - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Alberto_Meda
- Alberto Meda | MoMA
- https://www.moma.org/artists/7277
- Alberto Meda - Vitra
- https://www.vitra.com/en-us/about-vitra/designer/details/alberto-meda
- Engineer and designer Alberto Meda - Alias Design
- https://alias.design/en/furniture-designers/alberto-meda
- Alberto Meda in Five Objects | Triennale Milano
- https://triennale.org/en/magazine/alberto-meda-cinque-oggetti1
- Alberto Meda: tension and lightness at the Triennale museum | STIRworld
- https://www.stirworld.com/inspire-people-alberto-medas-playful-designs-demonstrate-tension-and-lightness-at-triennale-milano
- Keeping It Simple: In conversation with Designer Alberto Meda — C41 Magazine
- https://www.c41magazine.com/keeping-it-simple-in-conversation-with-designer-alberto-meda/
- Alberto Meda - Luceplan
- https://www.luceplan.com/designers/alberto-meda/
- Alberto Meda, Designer | Archiproducts
- https://www.archiproducts.com/en/designers/alberto-meda
- Alberto Meda Official Website
- https://www.albertomeda.com/