概要
ベオグラム4000シリーズは、バング・オルフセンが1972年から1980年ごろにかけて生産したレコードプレーヤーである。デザインはヤコブ・イェンセン。2本のアームを電子制御で直線移動させるタンジェンシャル・トラッキングを軸とし、同社が最後にレコードプレーヤーを作るまで用いた方式の出発点にあたる。
1972年のベオグラム4000と、1974年にこれを置き換えたベオグラム4002の2機種で構成される。外観の変更は小さいが、内部の設計は大きく異なる。
ヤコブ・イェンセンの設計思想や経歴について詳しくはヤコブ・イェンセン プロフィールページをご覧ください。
共通する設計原理
タンジェンシャル・トラッキング
通常のトーンアームは支点を中心に弧を描いて内周へ向かうため、針が溝に対してつくる角度が場所によって変わる。タンジェンシャル方式では、アームが盤に対して一定の角度を保ったまま直線的に移動する。原盤をカッティングしたときのカッターと同じ角度で溝をたどることになり、内向きの力も生じない。
アームは電子式のアナログサーボで駆動される。弧を描かないため短く剛性の高いアームにでき、ダイナミックバランスの採用でカウンターウェイトも不要になった。支点の位置を最適化する構成とあわせ、アームはさらに短くまとめられている。
2本目のアームによる自動判別
アームは2本ある。ピックアップを支えるアームの左に並ぶもう1本の先端には、下向きの光源とセンサーが付く。センサーはプラッター上の放射状の目盛りを読み、2本のアームの間隔が既知であることから盤の直径を割り出す。判定にもとづいて針を降ろす位置と回転数が決まる。
盤が置かれていなければ、センサーは内周へ走査して何も見つけず、戻って停止する。針がプラッターに直接触れることはない。タンジェンシャル方式のベオグラムはいずれも2本のアームを持つが、のちのベオグラム5005やベオグラム3000以降は2本目が右側に移り、回転数の表示だけを担うようになる。盤の直径は重量で判定する方式に変わった。
操作面と防振
操作部は平滑なアルミニウムの面で、その下の回路が動作の順序を組み立てる。演奏中のアームの移動は、四辺に矢印を刻んだ正方形の操作面で行う。上を押すとアームが上がって演奏が止まり、下を押すと降りる。左右を押すとアームが動き、軽く押せばゆっくり、強く押せば速く移動する。
中心軸受、アーム、その駆動部はダイカストのサブシャシーにまとめられ、板バネから吊った鋼線で本体から浮かせてある。3組のバネは水平を出すために調節でき、スピーカーの振動や床からの揺れを遮断する。この吊り構造は特許を取得し、以後のベオグラムに引き継がれた。
成立と展開の経緯
実物大の模型から
ヤコブ・イェンセンは、技術者K・G・ツォイテンとともに実物大の動作模型を作り、バング・オルフセンに提示した。2本のアームを平行に並べ、一方をピックアップに、他方を盤の直径を読む光学装置にあてる構成はこの段階で固まっており、製品化にあたって変更されなかったとされる。シリーズを貫く原理が模型の段階で決まっていたことになる。
当時のオーディオ業界では、テクニクスやソニーをはじめ複数の企業が同種の機構を試みていた。そのなかで、規模の小さいバング・オルフセンが製品として完成させたことは意外な出来事として受け止められた。
4000から4002へ
ベオグラム4000は型番5215で1972年から1975年まで、ベオグラム4002は型番5501ほかで1974年から1980年ごろまで生産された。ベオセントラルは4002の市場での取り扱いを1975年から1979年としており、資料によって年の取り方に幅がある。
4002には特定のシステム向けの派生としてベオグラム4004と、4チャンネル対応のベオグラム6000がある。後継はベオグラム8000だが、技術的な連続性ではベオグラム6002が4002を引き継いだ。
2020年、バング・オルフセンは創業95周年にあわせ、限定版のベオグラム4000cを発表した。新たに製造したのではなく、市場から集めた95台の実機をシュトルーアの同じ工場で分解・整備し、フォノイコライザーの追加とアルミニウムの再仕上げを施したものである。設計そのものではなく、個体を再生する形で復活させた例にあたる。
メンバー間の差異
2機種は同時に併売された型番違いではなく、4002が4000を置き換える形で世代交代した。4002は性能を保ったまま生産のしやすさを上げる方向で作り直されており、外観の違いは小さく、変更の大半は内部にある。寸法はいずれも幅49cm、奥行38cm、高さ10cmで共通する。
簡素化の内容
操作キーの下に置かれていた電子ロジックユニットは、機構の見直しによって不要になり、接点スイッチと個別のトランジスタに置き換えられた。回路としては後退にも見えるが、動作の結果は変わらない。
4000の電子制御同期モーターは、より簡素な直流サーボモーターに変わった。部品の調達先もスイスから日本に移っている。プラッターと軸受は、出力の下がったモーターに合わせて小型軽量に設計し直された。
それでも性能はほぼ変わらなかった。4000が必要以上に作り込まれていたことの裏返しとも読める。
比較表
| 比較項目 | ベオグラム4000 | ベオグラム4002 |
|---|---|---|
| 発売年 | 1972年 | 1974年 |
| 型番 | 5215 | 5501ほか |
| 制御 | 電子ロジックユニット | 接点スイッチと個別トランジスタ |
| モーター | 電子制御の同期モーター | サーボ制御の直流モーター(初期は交流) |
| プラッターと軸受 | 大きく重い | 小型軽量に再設計 |
| 回転数表示 | ネオンのストロボ | 省略。待機表示の赤色LEDを追加 |
| カートリッジ | SP 15 | MMC 4000(のちのMMC 20EN) |
| 仕上げ | ローズウッド、チーク | オーク、ローズウッド、チーク、ホワイト |
| 重量 | 12kg | 11kg |
メンバー一覧
| 発売年 | 区分 | 製品名 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 1972年 | レコードプレーヤー | ベオグラム4000 レコードプレーヤー | タンジェンシャル・トラッキングを採った最初のモデル。2020年の限定版はこの個体を整備したもの。 |
| 1974年 | レコードプレーヤー | ベオグラム4002 レコードプレーヤー | 内部を簡素化した後継。性能はほぼ据え置きで、生産台数は4000を上回る。 |
評価と影響
アームを直線移動させる方式そのものは他社も試みたが、バング・オルフセンはこの機構を最後のレコードプレーヤーであるベオグラム7000まで、細部を改めながら使い続けた。2機種で確立した構成が、その後の製品系列の前提になっている。
4000から4002への作り直しは、同じ性能をより少ない部品で得るという方向の変更だった。設計を簡素化しても結果が変わらなかったことは、初代の作り込みの度合いを示す例として参照される。
バング・オルフセンの歴史や他の製品について詳しくはバング・オルフセン ブランドページをご覧ください。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。
- MoMA ベオグラム4000 レコードプレーヤー(1972年) 収蔵番号 195.1973
- MoMA ベオグラム4002 ターンテーブル(1974年) 収蔵番号 875.1978
2機種とも製造元からの寄贈で、4000は発売の翌年に収蔵された。同館は派生機のベオグラム6000(収蔵番号 111.1976)も所蔵している。V&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)、Met(メトロポリタン美術館)、AIC(シカゴ美術館)では該当する収蔵は確認できなかった。
基本情報
| デザイナー | ヤコブ・イェンセン |
|---|---|
| ブランド | バング・オルフセン |
| 共通する機構 | 2本アームによるタンジェンシャル・トラッキング、ベルトドライブ、板バネで吊る防振構造 |
| 共通する判別 | 2本目のアームの光センサーで盤の直径と回転数を判定 |
| 共通寸法 | 幅49cm × 奥行38cm × 高さ10cm |
Reference
- Beocentral | Beogram 4000
- https://beocentral.com/beogram4000
- Beocentral | Beogram 4002
- https://beocentral.com/beogram4002
- Bang & Olufsen | Record players, still playing beautifully
- https://www.bang-olufsen.com/en/us/story/turntables
- MoMA | Jacob Jensen. Beogram 4000 Record Player. 1972
- https://www.moma.org/collection/works/2483
- MoMA | Jacob Jensen. Beogram 4002 Turntable. 1974
- https://www.moma.org/collection/works/86311