概要

ヤコブ・イェンセン(1926-2015)は、デンマークのインダストリアルデザイナーである。1964年から1991年までバング&オルフセンの設計を担当し、音響機器の外形と操作面を一体で扱う方法を確立した。操作の要素を面の上に配し、使わないときは隠すという構成をとる。ニューヨーク近代美術館が同社の製品を複数収蔵している。

バイオグラフィー

1926年4月29日、コペンハーゲンに生まれた。父は室内装飾業を営んでいる。デンマーク美術工芸学校で学び、1952年に修了した。

1952年から1958年まで、デンマーク初の工業デザイン事務所であるベルンハルト・アンド・シュターの設計者を務めた。

1958年から1959年にかけてアメリカへ渡り、シカゴとニューヨークで働いた。1959年に帰国し、翌年ハドサンの自邸兼スタジオに移っている。

1964年からバング&オルフセンの設計を担当し、1991年まで続いた。この間に約230点の製品を設計している。2015年5月15日に没した。

デザインの思想と方法

1960年代の音響機器は、つまみとスイッチが前面に並ぶのが通例だった。イェンセンが用いたのは、操作の要素を平らな面の上に配し、使わないときは蓋で隠すという構成である。機器の外形が箱として完結する。

操作面を水平にする

ベオマスターの系列では、つまみを前面ではなく上面に配する。上から見下ろす姿勢で操作するため、目盛りと指の位置が同時に見える。前面には何も出ないため、正面から見たときの輪郭が単純になる。

使わないときは隠す

ベオグラムのレコード再生機は、蓋を閉じると平らな板になる。回転する部分も針も見えず、家具として空間に収まる。使用時と非使用時で見え方が変わるという構成にあたる。

操作を直線の動きに置き換える

回転するつまみの代わりに、滑らせる操作子を用いる。音量や周波数の変化が、指の移動距離と直接に対応する。目盛りを読まずに位置だけで状態が分かる。

接合部を消す

アルミニウムの押出材と成形樹脂を組み合わせ、継ぎ目を面の分割線として扱う。隠すのではなく、意図した位置に配することで、線が構成の一部になる。

代表作にみる方法

ベオリット 1000(1968年)

携帯型のラジオである。操作子を上面に配し、前面には格子状の開口だけを残す。持ち運ぶための把手が上部にあり、置いたときの姿勢も定まる。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号53.1972)。→ベオリット600 ポータブルラジオ

ベオマスター 1200(1969年)

チューナー付き増幅器である。つまみを上面に配し、滑らせる操作子で周波数と音量を変える。指の移動距離が変化量と直接に対応する。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号49.1972)。

ベオグラム 1200(1969年)

レコード再生機である。蓋を閉じると平らな板になり、回転部も針も見えない。ニューヨーク近代美術館とV&Aが収蔵している。

ベオグラム 4000(1972年)

アームが直線に動くレコード再生機である。回転するアームでは針の角度が位置によって変わるが、直線に動かせば一定に保てる。機構の要求から操作の形が決まっている。→ベオグラム4000 レコードプレーヤー / ベオグラム4002 レコードプレーヤー

ベオセンター 7000(1979年)

ラジオ、レコード再生機、カセットを一体にした機器である。蓋を閉じると平らな面になる。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号9.1980.a-b)。

評価と影響

イェンセンは一般に、音響機器の外形と操作面を一体で扱う方法を確立した設計者と評価されている。操作の要素を上面に配し、使わないときは隠すという構成が特徴にあたる。

1964年から1991年までのバング&オルフセンとの協働で、約230点の製品を設計した。同社の製品の性格を長期にわたって決めた立場になる。

ニューヨーク近代美術館は1972年に同社の製品を複数収蔵しており、以後も追加されている。音響機器が美術館の収蔵対象となった早い例にあたる。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。

  • MoMA ベオリット 1000 携帯ラジオ(1968年) 収蔵番号 53.1972
  • MoMA ベオグラム 1200 レコード再生機(1969年) 収蔵番号 47.1972
  • MoMA ベオマスター 1200(1969年) 収蔵番号 49.1972
  • MoMA ベオマスター 3000-2(1969年) 収蔵番号 50.1972
  • MoMA ベオヴォックス 2700 スピーカー(1971年) 収蔵番号 48.1972.1-2
  • MoMA ベオヴォックス 3700 スピーカー(1971年) 収蔵番号 51.1972.1-2
  • MoMA ベオリット 400 携帯ラジオ(1971年) 収蔵番号 52.1972
  • MoMA ベオマスター 6000(1974年) 収蔵番号 110.1976.a-b
  • MoMA ベオグラム 6000 ターンテーブル(1974年) 収蔵番号 111.1976
  • MoMA ベオセンター 7000(1979年) 収蔵番号 9.1980.a-b
  • V&A ベオグラム 1202(1969年) 収蔵番号 CIRC.6 to B-1974
  • V&A ベオシステム 1400(1973年) 収蔵番号 W.9:1 to 6-2014
  • V&A ベオマスター 1900(1978年) 収蔵番号 W.50-1978

Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1968年 ラジオ ベオリット600 ポータブルラジオ Bang & Olufsen
1969年 音響機器 ベオマスター 1200、ベオグラム 1200 Bang & Olufsen
1971年 スピーカー ベオヴォックス 2700、3700 Bang & Olufsen
1972年 レコード再生機 ベオグラム4000 レコードプレーヤー Bang & Olufsen
1970年代 レコード再生機 ベオグラム4002 レコードプレーヤー Bang & Olufsen
1970年代 ラジオ ベオリット707 ポータブルラジオ Bang & Olufsen
1979年 音響機器 ベオセンター 7000 Bang & Olufsen
1964-1991年 音響機器 バング&オルフセンの製品(約230点) Bang & Olufsen

プロフィール

生没年 1926年4月29日〜2015年5月15日
出身地 デンマーク・コペンハーゲン
国籍 デンマーク
活動拠点 ハドサン
分野 音響機器、工業製品
主な協働ブランド Bang & Olufsen

Reference

Jacob Jensen Design
https://www.jacobjensendesign.com/
Bang & Olufsen
https://www.bang-olufsen.com/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
Victoria and Albert Museum Collections
https://collections.vam.ac.uk/