メゾン・デュ・メキシーク シェルフ ― 空間を構造化する、ペリアンの収納哲学

メゾン・デュ・メキシーク シェルフは、シャルロット・ペリアンが1952年に設計した収納家具である。パリのシテ・ユニヴェルシテール・アンテルナショナル(国際大学都市)に建つメキシコ館の学生居室のために構想された本作は、限られた13平方メートルの空間において、収納と間仕切りという二重の機能を一体化させた画期的な家具であった。

建築家ジョルジュ・メデリンが設計したメキシコ館の77室すべてに設置されたこのシェルフは、ジャン・プルーヴェの工房(ロレーヌ地方マクセヴィル)によって製造された。木製の棚板とアルミニウムのスライディングドア、鋼板の仕切りが織りなす構成は、機能性と造形美を高い次元で両立させている。青、赤、黄、緑、黒といった鮮やかな色彩で塗装されたアルミニウムのスライディングドアは、収納の実用性を保ちながら、家具そのものを空間を彩る要素にもしている。

設計の背景 ― 両面から使う間仕切り収納

本作は、1952年にペリアンがジャン・プルーヴェとともに手がけたメキシコ館の内装の一部として、ベッドやテーブル、椅子とともに設計された。メキシコ館の学生居室にはプライベートな浴室がなく、洗面台のみが備えられていた。

ペリアンはこの制約を活かし、シェルフを部屋の中央に据えることで生活空間と洗面空間をゆるやかに分けた。両面からアクセスできる構造により、一方の面には書籍を、他方の面には日用品を収められる。家具によって空間を仕切るこの発想は、のちのオープンプランの考え方にも通じている。

特徴・コンセプト ― モジュラリティと構成の自由

メゾン・デュ・メキシーク シェルフの設計原理は、ペリアンが生涯を通じて探求した「モジュラリティ(構成の自由)」に根差している。高さの異なる5段の棚板と、着脱可能なアルミニウム製の仕切りやスライディングドアによる構成は、使用者の必要に応じて「見せる収納」と「隠す収納」を自在に切り替えることを可能にした。

素材と構造の革新性

本作の製造において重要な役割を果たしたのが、ジャン・プルーヴェの工房で量産されたプレファブリケーション方式のアルミニウムモジュールである。折り曲げ加工された鋼板のキャビネットは、装飾的要素であると同時に棚板を支え、家具全体を補強する構造的機能を担った。これにより、高価な手作業の木工を最小限に抑え、相対的に手頃な価格での提供が可能となった。フラットパック方式で運搬され、現場で木製構造部分を含めて組み立てられた。

基本情報

正式名称(日本語) メゾン・デュ・メキシーク シェルフ(ビブリオテーク・ドゥ・ラ・メゾン・デュ・メキシーク)
正式名称(英語) Maison du Mexique Shelf(Bibliothèque de la Maison du Mexique)
デザイナー シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand, 1903–1999)フランス
デザイン年 1952年
オリジナル製造 アトリエ・ジャン・プルーヴェ(マクセヴィル、フランス)
復刻ブランド カッシーナ(Cassina)がペリアン家具の正規復刻権を有し、モジュラー書棚を「ニュアージュ(Nuage)」シリーズとして生産
オリジナル素材 パイン材(棚板)、ラッカー仕上げスチール(構造体)、エンボス加工・塗装アルミニウム(スライディングドア・仕切り)
オリジナル寸法 W1830 × D305 × H1610 mm(脚部:W200 × D267 × H200 mm)
製造数 77台(メキシコ館77室に各1台)
主要収蔵機関 ハーバード美術館(フォッグ美術館)、メゾン・デュ・メキシーク(パリ、グランドホール)
分類 収納家具(シェルフ / ブックケース / ルームディバイダー)