概要

ピピストレロは、ガエ・アウレンティが1965年に設計したテーブルランプである。名はイタリア語でコウモリを意味し、翼を広げた姿を思わせるシェードに由来する。伸縮する支柱により高さを変えられ、テーブルランプとしてもフロアランプとしても使える。マルティネッリ・ルーチェが1967年から製造している。

特徴・コンセプト

四つに分かれたシェード

乳白色のメタクリレート樹脂によるシェードは、深い溝によって四つの部分に分けられる。溝があることで面が波打ち、翼を広げた形が生まれる。同時に、この起伏が光の通り方を決める。上方へは穏やかな間接光が抜け、下方へは明るい光が集まる。装飾のための造形が、そのまま配光の仕組みになっている。

柱の構成

金属のベースが柱の基礎、伸縮する支柱が柱身、シェードが柱頭にあたる。古典建築の柱の構成をそのまま照明の寸法に置き換えたうえで、柱頭にあたる部分だけを有機的な形にしている。ステンレススチールの支柱は高さ66cmから86cmまで調整でき、置く場所と用途に応じて変えられる。ベースはラッカー仕上げのアルミニウム製で、裾がわずかに広がる。

色の展開

当初はダークブラウンとホワイトの2色であったが、現在は複数の色が用意されている。オリジナルの寸法に加え、小型のミニと、コードを持たない仕様も展開されている。

エピソード

ピピストレロは、1965年にオリヴェッティ社がアウレンティにパリとブエノスアイレスのショールームの設計を依頼したことから生まれた。アウレンティはパリのショールームにイタリアの広場を再現するという構想を立て、その公共的な場を照らす照明としてこのランプを考えた。

製品化には時間を要した。伸縮する支柱の工業化が複雑であり、深い溝と曲面を持つシェードは当時の成形技術では作りにくかった。メタクリレート樹脂の型製作がとりわけ難しく、開発は一時中断している。マルティネッリ・ルーチェが市場に投入したのは2年後の1967年であった。

1972年、ニューヨーク近代美術館で開かれた展覧会「Italy: The New Domestic Landscape」にこのランプが展示された。

評価と影響

1960年代のイタリアのデザインを代表する照明のひとつとして知られる。1967年の発売以来、生産が途切れていない。近年はLED光源を組み込んだ仕様も加わり、素材と生産技術は更新されているが、シェードの形と柱の構成は変わっていない。

基本情報

名称 ピピストレロ / Pipistrello(Model 620)
デザイナー ガエ・アウレンティ(Gae Aulenti)
ブランド マルティネッリ・ルーチェ(Martinelli Luce)
発表年 1965年設計/1967年 製品化
デザインの成立国 イタリア
分類 テーブルランプ/フロアランプ
主要素材 シェード:乳白色メタクリレート樹脂/支柱:ステンレススチール/ベース:ラッカー仕上げアルミニウム
サイズ 高さ66〜86cm(伸縮可)、シェード径約54cm
展開 オリジナル、ミニ、コードレス仕様
設計の背景 オリヴェッティ社パリ・ショールームのための照明

Reference