概要
ガエ・アウレンティ(1927-2012)は、イタリアの建築家・デザイナーである。1954年にミラノ工科大学を修了し、家具、照明、展示、美術館の改修を手がけた。1965年のピピストレッロは高さを変えられる照明で、1980年代にはパリのオルセー美術館の内部設計を担当している。既存の建物を用途を変えて使う仕事を多く扱った。
バイオグラフィー
1927年12月4日、イタリアのパラッツォロ・デッロ・ステッラに生まれた。ミラノ工科大学で建築を学び、1954年に修了している。当時、同学科の卒業生に女性は少ない。
1955年から1965年まで雑誌『Casabella』の編集に関わった。同時期から家具と照明の設計も行っている。
1965年、オリベッティのパリの展示室のためにピピストレッロを設計した。以後、カルテル、アルテミデ、フォンタナアルテなどのために製品を手がけている。
1980年から1986年にかけて、パリのオルセー美術館の内部設計を担当した。以後もパリ、バルセロナ、サンフランシスコ、東京などで美術館と文化施設の設計を行っている。2012年10月31日に没した。
デザインの思想と方法
アウレンティの主要な仕事は、既存の建物を別の用途に使い直すことだった。駅を美術館に、宮殿を博物館にする場合、既存の構造は動かせない。その制約のなかで動線と展示の構成を決める。
既存の構造を残して用途を変える
オルセー美術館は、1900年に建てられた鉄道駅を美術館に改める仕事である。大空間のヴォールト屋根はそのまま残し、床の高さを操作して展示室を挿入した。既存の構造に触れずに、内部だけを組み直す。
高さで領域を分ける
広い空間を壁で仕切ると、元の大きさが失われる。床の高さを変えることで、視界は通したまま領域を分けられる。オルセーの中央通路と両側の展示室はこの方法による。
高さを変えられる照明
ピピストレッロは、支柱を伸縮させて高さを変えられる。展示室では、置く位置と用途に応じて必要な高さが変わる。笠は乳白の樹脂を曲げて羽根状に配し、名称はコウモリを意味する。
移動を前提とする家具
タヴォロ・コン・ルオーテは、工業用の車輪をガラスの天板に取り付けた卓である。既製の部品をそのまま使い、移動できることを条件とする。
カルテルの歴史や他の製品について詳しくはカルテル ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ピピストレッロ(1965年、マルティネッリ・ルーチェ)
支柱を伸縮させて高さを変えられる照明である。笠は乳白の樹脂を曲げて羽根状に配し、名称はコウモリを意味する。オリベッティのパリの展示室のために設計された。メトロポリタン美術館が収蔵している(収蔵番号1989.401)。→ピピストレロ
パトロクロ(1975年、アルテミデ)
ガラスの塊に光源を収めた照明である。ニューヨーク近代美術館とメトロポリタン美術館が収蔵している。
タヴォロ・コン・ルオーテ(1980年、フォンタナアルテ)
工業用の車輪をガラスの天板に取り付けた卓である。既製の部品をそのまま使い、移動できることを条件とする。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号348.1982)。→タヴォロ・コン・ルオテ(車輪付きテーブル)
オルセー美術館(1980-1986年、パリ)
1900年に建てられた鉄道駅を美術館に改める仕事である。大空間のヴォールト屋根をそのまま残し、床の高さを操作して展示室を挿入した。既存の構造に触れずに内部だけを組み直す構成にあたる。
カタルーニャ美術館(1985-2004年、バルセロナ)
1929年の万博のために建てられた宮殿を美術館に改めた。オルセーと同じく、既存の建物を残して内部を組み直す仕事になる。
評価と影響
アウレンティは一般に、既存の建物を別の用途に使い直す設計を代表する人物と評価されている。オルセー美術館とカタルーニャ美術館が、その主要な例にあたる。
1954年にミラノ工科大学を修了した当時、同学科の女性の卒業生は少ない。以後、建築の分野で長く活動した。
ピピストレッロは1965年の設計で、現在も生産が続いている。高さを変えられるという条件は、展示室という当初の用途から来ている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、Met=メトロポリタン美術館)。
- Met ピピストレッロ ランプ(1965年) 収蔵番号 1989.401
- MoMA メッツォ・ピレオ テーブルランプ(1972年) 収蔵番号 1242.2018
- MoMA パトロクロ ランプ(1975年) 収蔵番号 334.2025
- Met パトロクロ ランプ(1976年) 収蔵番号 1988.236.5
- MoMA タヴォロ・コン・ルオーテ(モデル2652、1980年) 収蔵番号 348.1982
V&A、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1965年 | 照明 | ピピストレロ | Martinelli Luce |
| 1972年 | 照明 | メッツォ・ピレオ | Artemide |
| 1975年 | 照明 | パトロクロ | Artemide |
| 1980年 | テーブル | タヴォロ・コン・ルオテ(車輪付きテーブル) | FontanaArte |
| 1980-1986年 | 建築 | オルセー美術館 内部設計 | パリ、フランス |
| 1985-2004年 | 建築 | カタルーニャ美術館 | バルセロナ、スペイン |
| 1990年代 | 建築 | アジア美術館 | サンフランシスコ、アメリカ |
| 1960-2010年代 | 家具・照明 | カルテル・フォンタナアルテのための製品 | Kartell / FontanaArte |
プロフィール
| 生没年 | 1927年12月4日〜2012年10月31日 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・パラッツォロ・デッロ・ステッラ |
| 国籍 | イタリア |
| 活動拠点 | ミラノ |
| 分野 | 建築、照明、家具、展示 |
| 主な協働ブランド | Kartell、Artemide、FontanaArte、Martinelli Luce |
Reference
- Musée d'Orsay
- https://www.musee-orsay.fr/en
- Gae Aulenti | Martinelli Luce
- https://www.martinelliluce.it/en/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection