Martinelli Luce(マルティネリ・ルーチェ)

Martinelli Luce(マルティネリ・ルーチェ)は、1950年にイタリア・トスカーナ州ルッカで創設された照明ブランドです。創業者エリオ・マルティネリのもと、自然と幾何学に着想を得たデザインと、素材・成形技術への探究を重ね、20世紀以降のイタリアンライティングデザインを牽引してきました。

ガエ・アウレンティによる「Pipistrello」、エリオ・マルティネリ自身による「Cobra」「Serpente」など、同社が世に送り出した照明は、イタリアンデザインを代表する作品として国際的に評価されています。70年以上にわたり家族経営を続けながら、現在も住宅用・商業用の照明を開発・製造しています。

ブランドの特徴・コンセプト

Martinelli Luceのデザインは、光を単なる照明器具としてではなく、空間と対話する造形としてとらえる姿勢に特徴があります。創業者エリオ・マルティネリから受け継がれたこの考え方は、三世代にわたって企業を率いる家族のあいだで共有されてきました。

自然界の有機的なフォルムと幾何学的な造形の融合、そして新素材への取り組みが、同社の美学を形づくっています。メタクリレート樹脂の成形技術を早くから採用するなど、技術的な挑戦を重ねながら、流行に左右されない普遍的な造形を追求してきました。

製品はイタリア・ルッカの自社工房で製作されています。陽極酸化アルミニウム、真鍮、ポリカーボネート、メタクリレート、吹きガラスなどの素材を用い、機能性と造形性を両立した照明器具を生み出しています。

ブランドヒストリー

Martinelli Luceの歴史は、第二次世界大戦後のイタリアで生活用品やデザインへの需要が高まっていた1950年に始まります。創業者エリオ・マルティネリは、フィレンツェの美術学院で舞台美術を学んだ後、父が営む照明業に携わりました。レストランやホテル、店舗のインテリアを手がけるなかで、既存の照明器具に満足できず、自ら照明をデザイン・製作するようになります。

1950年、ルッカ旧市街の一室を「ラボラトリオ(研究所)」と呼び、Martinelli Luceを創業。1966年には、ジオ・ポンティらが関わった国際デザイン展「ユーロドムス」の第1回に参加し、これを契機に小さな工房は国際的な企業へと成長していきました。1965年にガエ・アウレンティが手がけた「Pipistrello」は、同社を国際的に知らしめる代表作となります。

1970年代以降、エリオは商業空間向けの照明にも事業を広げ、1980年代には技術照明のカタログを展開。娘のエミリアーナ・マルティネリが入社し、親子で数々の製品を共同開発しました。2004年のエリオ逝去後はエミリアーナが社長を継ぎ、息子マルコとともにブランドを率いています。2023年には、イタリア経済開発省が設けた「国家的利益を有する歴史的商標の特別登録簿」に登録され、50年以上にわたり地域に根ざした生産を続ける企業として認められました。

代表的な製品

Pipistrello(ピピストレロ)— 1965年

イタリア語で「コウモリ」を意味するPipistrelloは、建築家ガエ・アウレンティが1965年に、パリとブエノスアイレスのオリベッティ・ショールームのためにデザインした照明です。後にエリオ・マルティネリのもとで量産化されました。

円錐形の金属ベース、伸縮式のステンレススチールシャフト、コウモリが翼を広げたような白色オパールメタクリレートのディフューザーで構成されます。当時の成形技術では難しかったメタクリレートの加工と、テーブルランプとしてもフロアランプとしても使える高さ調節機構が特徴です。さまざまなサイズやカラー、コードレス版などのバリエーションを展開しながら、アウレンティのオリジナルデザインは現在まで継承されています。

Cobra(コブラ)— 1968年

エリオ・マルティネリがデザインしたCobraは、熱硬化性樹脂の成形技術を照明器具に採用した先駆的な作品です。静止時には球体に内接する造形を示し、上部のリフレクターを回転させると、頭をもたげたコブラのようなシルエットへと変化します。

下部ボディはスチールベース上で回転し、中央のジョイントを介して上部ボディと接続することで、360度の回転が可能です。2018年には誕生50周年を記念した赤いバージョンが発表されました。

Serpente(セルペンテ)— 1965年

「蛇」を意味するSerpenteは、Pipistrelloと同じ1965年にエリオ・マルティネリがデザインした作品です。蛇行する曲線のアームと白色オパールメタクリレートのディフューザーが特徴で、アームを回転させることで光の方向を調整できます。テーブルランプとフロアランプの両タイプが存在します。

Ruspa(ルスパ)— 1968年

イタリア語で「ブルドーザー」を意味するRuspaは、ガエ・アウレンティが1968年にデザインした彫刻的なテーブルランプです。建設機械を思わせる可動式のスポットライトヘッドを備え、直接光と間接光の両方を得られます。ホワイトラッカー塗装の金属製で、リフレクターがそれぞれ独立して回転する構造を持ちます。

Elmetto(エルメット)— 1976年

「ヘルメット」を意味するElmettoは、エリオ・マルティネリが1976年にデザインしたテーブルランプです。円錐形のベースと調節可能なドーム型ディフューザーで構成され、樹脂成形の本体は豊富なカラーバリエーションで展開されています。中央の大きなスイッチは暗闇でも見つけやすく、指一本で動かせるリフレクターにより光源を遮ることもできます。

Elica(エリカ)— 2009年

デザイナーのブライアン・シローニが手がけたElicaは、2011年にCompasso d'Oro(コンパッソ・ドーロ)を受賞した作品です。アルミニウム製のアームを回転させることで点灯・消灯する機構を備え、スイッチやボタンといった可視的なディテールを排した操作性が特徴です。

主なデザイナー

Elio Martinelli(エリオ・マルティネリ)

ルッカ生まれの創業者。フィレンツェの美術学院で舞台美術を学んだ後、照明デザインの道へ進みました。自然と幾何学に着想を得たデザインと、メタクリレートなど新素材への取り組みで知られ、Serpente、Cobra、Elmettoなど数多くの製品を生み出し、2004年に逝去するまで創作を続けました。

Emiliana Martinelli(エミリアーナ・マルティネリ)

エリオの娘であり、現Martinelli Luce社長。1980年代に入社後、父との協働を経て、デザイナー・経営者として同社を率いています。Colibrìなど数々の製品をデザインし、国際的なデザイン賞を受賞しています。

Gae Aulenti(ガエ・アウレンティ)

1927年生まれのイタリアを代表する建築家・デザイナー。パリのオルセー美術館の改修設計などで知られ、Martinelli Luceのためには1965年のPipistrello、1968年のRuspaをデザインしました。2012年逝去。

Brian Sironi(ブライアン・シローニ)

イタリアのデザイナー。Martinelli Luceのためにデザインしたランプ「Elica」で、2011年にCompasso d'Oroを受賞しました。

その他の主なデザイナー

Martinelli Luceは、セルジオ・アスティ、マルク・サドラー、カリム・ラシッド、パオラ・ナヴォーネ、Studio Naturalなど、国内外のデザイナーとも協働しています。

受賞歴・評価

Martinelli Luceの製品は、国際的なデザイン賞を複数受賞しています。

  • Compasso d'Oro ADI 2011(Elica — Brian Sironi)
  • Red Dot Design Award(複数製品)
  • iF Design Award(複数製品)
  • German Design Award(複数製品)
  • Good Design Award(複数製品)

代表作Pipistrelloは、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)の永久コレクションに収蔵されています(1989年、同社からの寄贈)。このほか同社の製品は、複数の国際的なデザインミュージアムのコレクションに収められています。

2023年には、イタリア経済開発省により「国家的利益を有する歴史的商標」として認定され、50年以上にわたり地域に根ざした生産を続けてきた企業としての実績が認められました。

基本情報

ブランド名 Martinelli Luce(マルティネリ・ルーチェ)
設立 1950年
創業者 Elio Martinelli(エリオ・マルティネリ、1922-2004)
現経営者 Emiliana Martinelli(エミリアーナ・マルティネリ、社長)、Marco Martinelli(マルコ・マルティネリ)
本社所在地 イタリア・ルッカ
公式サイト https://www.martinelliluce.it
事業内容 照明器具のデザイン・製造・販売(住宅用・商業用・コントラクト)