ペンダント172:数学と手仕事が紡ぐ光の彫刻

1971年、デンマークの建築家ポール・クリスチャンセンは、照明ブランド レ・クリント(LE KLINT)のランプシェードに、数学的な曲線——正弦波(サインカーブ)——を導入した。それまで直線的なプリーツで構成されていたシェードに曲線の折りを持ち込むことで、有機的で彫刻的な造形を実現したのが、ペンダント172(Pendant 172)である。

半世紀以上にわたり生産が続けられている本作は、サイナスライン(SinusLine)シリーズの代表作として広く知られる。デンマーク・オーデンセの工房で、今なお職人の手によって一点ずつ折り上げられている。点灯時はもちろん、消灯時にも彫刻的なシルエットが空間のアクセントとなる。

特徴とデザインコンセプト

ペンダント172の特徴は、正弦曲線(サインカーブ)を応用した独自の折り技法にある。クリスチャンセンは、直線的な折りに代えて数学的な曲線で紙状のシートを折り込むことにより、従来のレ・クリント作品にはなかった球体に近い有機的なフォルムを生み出した。一枚のシートを折るだけで、平面が立体的かつ強度のある構造体へと変わる点に、この技法の核心がある。

白色の特殊ランプシェードフォイル(ハードPVC)を一枚ずつ手作業で折り上げて成形されるシェードは、点灯時に光が折り目の隙間から柔らかく漏れ出し、空間全体を穏やかに包み込む。乳白色のシェードが光源を覆うことで眩しさを抑えつつ、全方向へ均等に広がる拡散光を実現している。

サイナスラインの折り技法

クリスチャンセンがレ・クリントと協働した1969年から1987年にかけて、同社のシェードには曲線の概念が持ち込まれた。創業者P.V.イェンセン・クリントが考案した直線的なプリーツ技法に対し、クリスチャンセンは正弦波を組み合わせて折り畳むと球形のシェードが立ち現れる手法を開発した。この技法はサイナスライン(SinusLine)と名付けられ、172を含む一連のペンダントとして展開された。数学と手仕事という一見相反する要素を結び付けた点が、本作の造形上の特色である。

サイズ展開

1971年の発表時は限られたサイズ展開であったが、その人気から2009年までに複数のサイズが追加され、小さなキッチンから大規模なロビーまで幅広い空間に対応する。現在は172S(小)、172A(M)、172B(L)、172C(大)、172 Gigant(特大)など複数のサイズが用意されており、天井高や設置空間に合わせて選択できる。いずれも同じ折り技法・同じフォルムを保ち、発光面積の違いによって光の広がり方が変わる。

基本情報

正式名称 ペンダント172(Pendant 172)/ サイナスライン172(SinusLine 172)
デザイナー ポール・クリスチャンセン(Poul Christiansen)/デンマーク/1947年生
デザイン年 1971年(サイズ追加:〜2009年)
ブランド レ・クリント(LE KLINT)/デンマーク・オーデンセ
主要素材 特殊ランプシェードフォイル(ハードPVC)、真鍮パーツ
カラー ホワイト
サイズ展開 172A(M):直径33 × 高さ31cm / 172B(L):直径44 × 高さ40cm ほか、172S(小)・172C(大)・172 Gigant(特大)を展開
重量 軽量(172Aで約0.5kg。サイズにより異なる)
光源 E26/E27口金(サイズにより異なる)
コード 白コード(全長はサイズ・オーダーにより異なる。コード加工に対応)
製造 デンマーク・オーデンセの自社工房にて手作業で製造
使用環境 屋内専用
参考価格(税込目安) 172A(M):約77,000円 / 172B(L):約90,200円 / その他サイズは販売店にお問い合わせください