概要
ポール・クリスチャンセン(1947年生まれ)は、デンマークの建築家・デザイナーである。1969年からレ・クリントの照明を手がけ、それまで直線で折られていた蛇腹を、正弦曲線に沿って折る方法を導入した。曲線で折ると平面が三次元の曲面になり、直線の折りでは得られない形が生まれる。1987年にボリス・ベルリンとコンプロット・デザインを設立した。
バイオグラフィー
1947年、コペンハーゲンに生まれた。デンマーク王立芸術アカデミー建築学校で学び、1973年に修了している。
1969年からフリーランスの設計者として活動を始め、レ・クリントの照明を手がけた。1971年にモデル172を発表している。
1977年から1986年まで、イブ&ヨルゲン・ラスムッセンの事務所に勤めた。同事務所はケヴィやハーマンミラーの製品も設計している。
1987年、ボリス・ベルリンとコンプロット・デザインを設立した。以後、家具、工業製品、グラフィックを扱っている。レ・クリントの照明の設計は現在も続いており、2006年のモデル215、2000年代半ばからのエリシオンなどがある。2015年にトーヴァル・ビンデスベル・メダルを受けた。
デザインの思想と方法
レ・クリントの照明は、一枚のシートを手で折って形をつくる。クリスチャンセン以前は、蛇腹の折り目と、それを横切る折り線がいずれも直線だった。この条件では、得られる形は円錐や円筒に近いものに限られる。
折り線を曲線にする
蛇腹を横切る折り線を、直線ではなく正弦曲線にする。すると平面のシートが三次元の曲面になり、輪郭が波打つ。折るという工程は変わらないが、折り線の形だけで得られる立体が変わる。工程を増やさずに形の範囲を広げるという操作にあたる。
数式で折り線を決める
曲線は目分量ではなく、正弦曲線を組み合わせて算出される。折り線の位置と曲率が決まれば、完成する立体も一意に決まる。展開図の段階で立体の形が確定するため、試作の回数を減らせる。
手作業の工程を保つ
レ・クリントの折りは職人の手作業による。曲線の折りは直線より難しいが、工程そのものは変わらないため、既存の生産体制で作れる。新しい設備を要さないという条件が、この方法の前提にある。
建築の教育を背景とする
建築学校での訓練は、展開図と立体の対応を扱う。平面のシートをどう折れば目的の立体になるかという問題は、この訓練と地続きにある。
レ・クリントの歴史や他の製品について詳しくはレ・クリント ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
モデル172(1971年)
正弦曲線に沿って折った吊り照明である。輪郭が波打ち、下部が開いて光が拡散する。一枚のシートから折られており、接合部を持たない。複数の大きさが用意され、2009年にも新しい寸法が追加された。→ペンダント172(サイナスライン172)
サイナスライン シリーズ
正弦曲線による折りを用いた照明の系列である。曲線の周期と振幅を変えることで、異なる立体が得られる。同じ方法から複数の製品が構成されている。
モデル215(2006年)
壁付けの照明である。折りによる曲面を壁面に対して展開する構成をとる。1971年の方法を、壁付けという別の条件に適用した例にあたる。
エリシオン(2000年代半ば〜)
一枚のシートを手で折った光の彫刻である。照明としての機能を保ちながら、折りの複雑さを増している。屋外用の仕様も用意されている。
コンプロット・デザインの製品(1987年〜)
ボリス・ベルリンとの共同による。2003年のグビ・チェアは、三次元の突板成形を家具に用いた早い例にあたる。ニューヨーク近代美術館が2件を収蔵している。
評価と影響
クリスチャンセンは一般に、レ・クリントの折りの技法に新しい形の範囲を与えた設計者と評価されている。工程を変えずに折り線の形だけで立体を変えるという方法が、その根拠にあたる。
1987年に設立したコンプロット・デザインでは、家具、工業製品、グラフィックを扱っている。2015年にはボリス・ベルリンとともにトーヴァル・ビンデスベル・メダルを受けた。
レ・クリントとの関係は1969年から現在まで続いており、半世紀を超える。同社の主要な製品の多くが彼の設計にあたる。
受賞・収蔵
受賞
- 2015年 トーヴァル・ビンデスベル・メダル(デンマーク王立芸術アカデミー、ボリス・ベルリンと共同)
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。いずれもコンプロット・デザインとしてボリス・ベルリンとの共同名義で登録されている。
- MoMA ラバーチェア NON(2000年) 収蔵番号 355.2004
- MoMA グビ・チェア(2003年) 収蔵番号 497.2004
V&A、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。デンマーク国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1971年 | 照明 | ペンダント172(サイナスライン172) | Le Klint |
| 1970-80年代 | 照明 | サイナスライン シリーズ | Le Klint |
| 2000年 | 椅子 | ラバーチェア NON(ベルリンと共同) | Källemo |
| 2003年 | 椅子 | グビ・チェア(ベルリンと共同) | Gubi |
| 2006年 | 照明 | モデル215 | Le Klint |
| 2000年代半ば〜 | 照明 | エリシオン | Le Klint |
| 1987年〜 | 家具・工業製品 | コンプロット・デザインの製品 | 各社 |
プロフィール
| 生年 | 1947年 |
|---|---|
| 出身地 | デンマーク・コペンハーゲン |
| 国籍 | デンマーク |
| 活動拠点 | コペンハーゲン |
| 分野 | 照明、家具、工業製品 |
| 主な協働ブランド | Le Klint、Gubi、Källemo |
Reference
- Poul Christiansen | LE KLINT
- https://www.leklint.com/blogs/designers/poul-christiansen
- Komplot Design
- https://www.komplot.dk/
- Komplot Design | GUBI
- https://gubi.com/en/int/inspiration/designers/komplot-design
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325