ポール・クリスチャンセン

ポール・クリスチャンセン(Poul Christiansen)は、1947年生まれのデンマークの建築家・デザイナーである。コペンハーゲンの王立デンマーク美術アカデミー建築学校で学び、1973年に建築家の資格を得た。1977年から1986年までは、ケヴィチェアで知られるイブ&ヨルゲン・ラスムッセンの設計事務所に在籍している。1987年には、旧レニングラード(現サンクトペテルブルク)出身のデザイナー、ボリス・ベルリンとともにデザイン事務所「コンプロット・デザイン(Komplot Design)」を設立した。建築の素養を土台に、照明・家具・グラフィックへと領域を広げてきた点に、その活動の幅がうかがえる。

レ・クリントと正弦曲線の折り

クリスチャンセンの名を広く知らしめたのは、デンマークの照明ブランド、レ・クリント(Le Klint)のシェードである。レ・クリントは1943年に創業し、その源流は20世紀初頭に建築家P・V・イェンセン=クリントが自らのために折った手折りのシェードにさかのぼる。同社のシェードは長らく、直線状のプリーツと、それに直交する折り目で構成されてきた。

クリスチャンセンは1960年代末からレ・クリントのシェード開発に加わり、数学的な曲線に沿って折ることで、彫刻的で表情豊かな立体が生まれることを見いだした。正弦曲線(サインカーブ)を組み合わせて折り上げる「サイナスライン(SinusLine)」のシリーズは、その代表的な成果である。レ・クリントによれば、彼は1969年から1987年にかけて同社のシェードに新たな展開をもたらしたとされる。

モデル172

サイナスラインを代表する一台が、1971年に発表されたペンダント照明「モデル172」である。手で折り込んだ白いPVCのシェードは、折り目の隙間から柔らかな光がこぼれる波打つ姿を描く。発表後も2009年まで新しいサイズが加えられ、キッチンやダイニングから会議室、ホテルのロビーまで、空間の広さに応じて選べる展開を持つ。デンマーク・オーデンセのレ・クリントの工房で、現在も手作業により作られている。

エリシオン

2000年代半ばには、柔らかな曲面の折りをさらに推し進めた光の彫刻「エリシオン(Elysion)」を発表した。一枚のシェードフォイルを手で折り上げて仕上げる手法は、レ・クリントが守り続ける手仕事の伝統に連なるものである。

コンプロット・デザインの家具

ボリス・ベルリンと設立したコンプロット・デザインでは、家具からグラフィック、企業のアイデンティティ計画まで、分野を横断する仕事を手がけてきた。2000年に発表した「NONチェア」は、スウェーデンのケレモ(Källemo)のためにデザインしたもので、スチールフレームを100%ラバーで覆った、飾り気のない普遍的な椅子である。

2003年にガビ(GUBI)のために手がけた「GUBIチェア(3Dチェア)」は、三次元に成形した突板(3Dベニヤ)を用いた最初の量産家具として知られる。薄く成形できる技術により座面と背もたれの厚みを抑え、軽やかで身体になじむ曲面を実現した。同作はニューヨーク近代美術館(MoMA)の収蔵品にも加えられている。

評価と受賞

クリスチャンセンとベルリンは、現代デンマークを代表するデザイナーの一組と評されている。両氏は2015年、王立デンマーク美術アカデミーからトアバル・ビンデスボル・メダルを授与された。数学的な発想と手仕事を結びつけた仕事は、レ・クリントのシェードやGUBIの椅子として、国内外の空間で今なお用いられている。

区分作品名ブランド
1971年ライトモデル172(サイナスライン)Le Klint
2000年チェアNONチェアKällemo
2003年チェアGUBIチェア(3Dチェア)GUBI
2006年ライトエリシオン(Elysion)Le Klint

Reference