Le Klint(レ・クリント)── 手で折り上げるデンマークの光
Le Klint(レ・クリント)は、1943年にタウエ・クリントがデンマーク・オーデンセに創業した照明ブランドである。一枚の平らな紙やPVCシートを、熟練の職人が手作業で折り上げてつくる立体的なプリーツ・シェードを核とし、80年以上にわたって北欧デザインとクラフツマンシップの担い手として歩んできた。折り紙を思わせる緻密なひだが柔らかな光を空間へ拡散させる独特の造形は、今日もなお創業の地オーデンセで一つひとつ手折りされている。
その歴史は建築家であり技術者でもあったP・V・イェンセン=クリント(1853–1930)が、20世紀初頭に自ら設計した石油ランプのために手折りのシェードを考案したことに始まる。家族と友人の手で改良が重ねられたこの折りシェードを、息子のタウエ・クリントが事業として確立したのが1943年であった。以来、カーレ・クリント、ポール・クリスチャンセンをはじめとする建築家・デザイナーとの協働を通じて、Le Klintは数多くの名作照明を世に送り出している。
ブランドの特徴・コンセプト
Le Klintを一貫して特徴づけるのは、手折りのプリーツ・シェードという製法そのものである。工業的な型による大量生産ではなく、平面のシートを職人が折り込むことで初めて三次元の形が立ち上がる。この折りの技術は習得に長い年月を要し、すべてのモデルを折り分けられるようになるまでには数年の修練が必要とされる。オーデンセの工房で技術を受け継ぐ職人たちは、新しいモデルの開発においても重要な役割を担っている。
光を和らげるプリーツ・シェード
Le Klintのシェードに用いられる素材は、大きく紙とPVCフォイルの二種類に分けられる。紙のシェードは光をより穏やかに透過させ、温かみのある柔らかな灯りをつくる。一方のPVCフォイルはUV耐性と帯電防止性を備え、汚れを拭き取りやすく、長期間にわたって白さを保つ。いずれのシェードも幾重にも折り込まれたひだを通して光が拡散し、まぶしさを抑えた均質な明るさを空間へ届ける。
オーデンセを離れないものづくり
Le Klintは創業以来、生産拠点をデンマーク・オーデンセに置き続けている。とりわけシェードの手折りは同地の工房でのみ行われ、「Made in Odense」を掲げるブランドの姿勢を象徴している。金属部品の多くもデンマーク国内の協力企業が手がけ、真鍮やアルミの表面には保護コーティングが施される。伝統的な手仕事を守りながら、LEDをはじめとする現代の技術も積極的に取り入れ、素材や構造の刷新にも取り組んでいる。
王室御用達としての評価
Le Klintは2003年にデンマーク王室御用達(Purveyors to the Royal Danish Court)の栄誉を受けている。世代を超えて受け継がれる耐久性と、流行に左右されない造形は、住宅からホテル、公共空間に至るまで幅広く支持されてきた。近年は若い北欧のデザイナーとの協働にも力を入れ、伝統と現代性の両立を図っている。
ブランドヒストリー
起点 ── P・V・イェンセン=クリントの手折りシェード
物語の始まりは20世紀初頭のコペンハーゲンにさかのぼる。建築家・技術者・画家として活動したP・V・イェンセン=クリントは、自ら設計した石油ランプに合う既製のシェードが見当たらず、一枚の紙を手で折ってシェードをつくり上げた。この折りシェードは家族や友人の協力を得ながら改良が重ねられ、やがてクリント家に受け継がれる手仕事となっていった。
事業としての確立 ── タウエ・クリント(1943年)
1943年、イェンセン=クリントの息子タウエ・クリントが、家族の手仕事を正式な事業へと発展させ、Le Klintを創業した。タウエはシェードにフレームへ固定するための独自の「グリップカラー(弾性のある留め輪)」を加え、その構造原理は1938年に特許化されている。この年に生まれた「Model 1」のシェードは、イェンセン=クリントの初期の折りに基づきながらタウエが完成させたもので、今日も当時と同じ製法でつくり続けられている。
デザイン性の深化 ── カーレ・クリントとその後継者たち
創業期のLe Klintは、タウエの弟であり建築家・家具デザイナーとして名高いカーレ・クリント(1888–1954)の才能に大きく支えられた。「デンマーク・モダンの父」とも称されるカーレは、1944年に折り球状のシェードをもつペンダント「Model 101(ザ・ランタン)」を手がけている。同じ時期にはエスベン・クリントによる「Model 107」(1942年)、モーエンス・コックによる「Model 105」(1942年)といった名作も加わり、コレクションの礎が築かれた。
数理的な折りへ ── ポール・クリスチャンセンの革新
1969年から1987年にかけて、建築家ポール・クリスチャンセンはLe Klintのシェードに新たな次元をもたらした。それまで直線的なプリーツで折られていたシェードに対し、彼は正弦曲線(サインカーブ)を組み合わせて折ることで、彫刻的な曲面をもつシェードを生み出した。この発想から生まれた「SinusLine(サイナスライン)」シリーズと、その代表作である1971年の「Model 172」は、Le Klintを象徴するデザインの一つとなっている。
主な照明
- Model 1
- 1943年、創業とともにタウエ・クリントが手がけた最初のシェード。イェンセン=クリントの初期の折りを源流とし、Le Klintの原点を今に伝える定番モデル。
- Model 101 ザ・ランタン(The Lantern)
- 1944年、カーレ・クリントによるペンダント。多面体状に手折りされた閉じた球形のシェードが特徴で、「フルーツランタン」の愛称でも親しまれる。光源を四方から覆うため、高い位置に吊るす用途に適する。
- Model 172(SinusLine)
- 1971年、ポール・クリスチャンセンによるペンダント。正弦曲線を用いた折りが波打つような立体感を生む。後年にかけてサイズ展開が拡充され、ダイニングから商業空間まで幅広く用いられている。
- Model 224 サックスランプ(Sax)
- 1952年、エリック・ハンセンによる壁付け照明。伸縮するアーム機構をもち、「はさみランプ」の通称で知られるLe Klintの人気モデル。
主なデザイナー
- タウエ・クリント(Tage Klint)── 創業者。Model 1 のシェードとグリップカラー機構を確立。
- カーレ・クリント(Kaare Klint, 1888–1954)── 「デンマーク・モダンの父」。Model 101 ザ・ランタンを設計。
- ポール・クリスチャンセン(Poul Christiansen)── SinusLine シリーズおよび Model 172 を手がけた建築家。
- エスベン・クリント(Esben Klint)── Model 107 などを設計。
- エリック・ハンセン(Erik Hansen)── Model 224 サックスランプの作者。
基本情報
| ブランド名 | Le Klint(レ・クリント) |
|---|---|
| 創業年 | 1943年 |
| 創業者 | タウエ・クリント(Tage Klint) |
| 本社所在地 | デンマーク・オーデンセ |
| 分野 | 照明(ペンダント、テーブルランプ、フロアランプ、壁付け照明ほか) |
| 公式サイト | https://www.leklint.com |