ナカシマ フリーエッジテーブルとは
フリーエッジテーブルは、アメリカのウッドワーカーであり建築家でもあるジョージ・ナカシマ(George Nakashima, 1905–1990)が手がけたテーブル群である。「フリーエッジ」とは、製材した木材の樹皮側の輪郭をあえて削り落とさず、自然のままの端部(耳)を残す手法を指す。ナカシマはこの技法を通じて、節、杢目、辺材の色の違い、ひび割れといった木がかつて樹木であった記憶を、家具のなかに生かし続けることを追求した。1940年代後半から展開されたその造形は、現代の「ライブエッジ」家具の源流として広く認識されており、今もペンシルベニア州ニューホープの工房(Nakashima Woodworkers)で、娘のミラ・ナカシマの指揮のもと一点ずつ受注制作が続けられている。
概要 ─ 一枚の板から生まれる一点物
フリーエッジテーブルとは、単一の製品名ではなく、ナカシマが生涯を通じて追求したテーブル群の総称である。ダイニングテーブル、コーヒーテーブル、サイドテーブルなど多様な用途に展開され、それぞれが固有の樹種・寸法・木目の表情を持つ。その根底にあるのは、すべての板材にはただ一つの理想的な用途があり、職人は技を尽くしてそれを見出さねばならないという、ナカシマの木への向き合い方である。
天板には主にアメリカン・ブラック・ウォールナットが用いられ、チェリー、イングリッシュ・ウォールナット、クラロ・ウォールナット、メープル、バタナットなども使われる。天板に生じた割れや裂けを補修し、同時に装飾的な要素となるのが、ローズウッドやウォールナットによる蝶形契り(バタフライジョイント)である。この契りはナカシマ作品を象徴するディテールであり、構造的な補強と視覚的なアクセントを兼ねている。
特徴とコンセプト
自然の造形を残すフリーエッジ
フリーエッジテーブルの最大の特徴は、天板の縁を自然のまま残す点にある。通常の家具製作では不規則な形状として取り除かれる樹皮下の輪郭を、ナカシマはそのまま設計に取り入れた。辺材の白い帯、節穴、虫食いの痕跡、木目のうねりといった要素は、多くの職人が避けるものだが、ナカシマにとってはそれこそが木の個性であり、尊重すべき造形であった。
ブックマッチと蝶形契り
大型のダイニングテーブルでは、一本の丸太から連続して挽いた二枚の板を開いて接ぎ合わせるブックマッチ技法が多く用いられる。左右対称に展開する杢目は、木の内側に秘められた紋様を開くような視覚効果を生む。板と板の接合部や自然に生じた亀裂には、東インドローズウッドやウォールナットの蝶形契りが嵌め込まれ、補強と装飾の両方の役割を担う。
一点物としての制作
ナカシマは入手した丸太や板材を時に何年も寝かせ、その木に最もふさわしい形を見極めた。顧客とともに木材の貯蔵庫を訪れて板を選び、その木目や形状から天板の輪郭、脚の位置、蝶形契りの配置までを設計する。同じデザインは二度と生まれず、すべてのフリーエッジテーブルはその木固有の表情を宿した一点物となる。
テーブルシリーズの主な展開
「フリーエッジテーブル」は単一モデルではなく、ナカシマの工房が手がける多様なテーブルに共通する設計思想である。以下は代表的なシリーズと、それぞれに見られるフリーエッジの特徴である。
| Minguren I / Minguren II | クロッチ(股木)部分のダイナミックな杢目を活かした一枚板または二枚接ぎの天板。劇的なフリーエッジ表現を特徴とし、蝶形契りと自然の空洞が共存する |
|---|---|
| Conoid Dining Table | コノイド構造に着想を得た脚部を持つダイニングテーブル。ブックマッチ天板にフリーエッジを採用する場合が多い |
| Frenchman's Cove I / II | 力強い板脚を持つ大型ダイニングテーブル。二枚のフリーエッジ天板をローズウッドの蝶形契りで接合する構成が典型的 |
| Trestle Dining Table | トレッスル(架台)脚によるクラシカルな構造に、ブックマッチのフリーエッジ天板を組み合わせたモデル |
| Slab Coffee Table | 一枚板の天板に旋盤加工の脚(スピンドルレッグ)を取り付けたコーヒーテーブル。片側または両側にフリーエッジを残す |
| Pedestal Table / Desk | 引き出し付きペデスタルを脚部とするデスクやテーブル。天板にフリーエッジを採用したバリエーションが存在する |
基本情報
| 名称(日本語) | ナカシマ フリーエッジテーブル |
|---|---|
| 名称(英語) | Nakashima Free Edge Table |
| デザイナー | ジョージ・ナカシマ / George Nakashima(1905–1990)アメリカ |
| デザイン年 | 1940年代後半〜(以降、生涯を通じて発展) |
| 製造 | Nakashima Woodworkers(アメリカ・ペンシルベニア州ニューホープ) |
| 主要素材 | アメリカン・ブラック・ウォールナット、チェリー、イングリッシュ・ウォールナット、クラロ・ウォールナット、メープル、バタナット 他。蝶形契りには東インドローズウッド等を使用 |
| 仕上げ | オイルフィニッシュ(ナカシマ独自配合のオイル仕上げ) |
| サイズ | 受注制作のため個体により異なる。ダイニングテーブルの一般的な範囲:W 1,500〜3,000mm以上 × D 900〜1,500mm × H 約730mm |
| 制作方法 | 完全受注生産。顧客との対話により板材を選定し、一点ずつ手作業で制作 |
| 現在の制作者 | ミラ・ナカシマ(Mira Nakashima)が芸術監督として工房を統括。ジョージの設計思想を継承しつつ独自のデザインも展開 |
ナカシマ フリーエッジテーブルの購入を検討される方は購入ガイドもあわせてご覧ください。