概要

フリーエッジテーブルは、ジョージ・ナカシマが手がけたテーブル群の総称である。製材した木材の樹皮側の輪郭を削り落とさず、自然のままの端部を残す。1940年代後半から展開され、現在もペンシルベニア州ニューホープの工房で受注制作が続けられている。

構成

単一の製品名ではなく、ダイニングテーブル、コーヒーテーブル、サイドテーブルなど複数の用途に展開される。板ごとに樹種・寸法・木目が異なるため、同じ形は生まれない。

天板には主にアメリカン・ブラック・ウォールナットが用いられ、チェリー、イングリッシュ・ウォールナット、クラロ・ウォールナット、メープル、バタナットなども使われる。天板に生じた割れや裂けを補修し、同時に装飾的な要素となるのが、ローズウッドやウォールナットによる蝶形契り(バタフライジョイント)である。この契りはナカシマ作品を象徴するディテールであり、構造的な補強と視覚的なアクセントを兼ねている。

特徴とコンセプト

自然の造形を残すフリーエッジ

製材では通常、樹皮側の不規則な輪郭を切り落として直線の縁をつくる。直線であれば寸法が決まり、複数の板を同じ形で量産できる。フリーエッジはこの工程を省き、板ごとに異なる輪郭をそのまま天板の縁とする。辺材の色の違い、節穴、木目のうねりも残る。

ブックマッチと蝶形契り

大型の天板では、一本の丸太から連続して挽いた二枚の板を開いて接ぎ合わせる。連続する位置から取った板のため、木目が接合部を挟んで左右対称に並ぶ。

板に生じた割れには、蝶形の契りが嵌め込まれる。割れは繊維に沿って進むが、繊維と直交する向きに契りを入れれば、そこで進行が止まる。装飾に見えるが、構造上の補強にあたる。

一点物としての制作

製作にあたっては、依頼者とともに貯蔵庫を訪れて板を選ぶ。板の輪郭が先に決まっているため、脚の位置や契りの配置は、その板に合わせて決められる。設計が先で材を後から選ぶ通常の手順とは逆になる。

テーブルシリーズの主な展開

工房が手がける複数のテーブルに、フリーエッジが共通して用いられる。以下は代表的な型である。

Minguren I / Minguren II クロッチ(股木)部分のダイナミックな杢目を活かした一枚板または二枚接ぎの天板。劇的なフリーエッジ表現を特徴とし、蝶形契りと自然の空洞が共存する
Conoid Dining Table コノイド構造に着想を得た脚部を持つダイニングテーブル。ブックマッチ天板にフリーエッジを採用する場合が多い
Frenchman's Cove I / II 力強い板脚を持つ大型ダイニングテーブル。二枚のフリーエッジ天板をローズウッドの蝶形契りで接合する構成が典型的
Trestle Dining Table トレッスル(架台)脚によるクラシカルな構造に、ブックマッチのフリーエッジ天板を組み合わせたモデル
Slab Coffee Table 一枚板の天板に旋盤加工の脚(スピンドルレッグ)を取り付けたコーヒーテーブル。片側または両側にフリーエッジを残す
Pedestal Table / Desk 引き出し付きペデスタルを脚部とするデスクやテーブル。天板にフリーエッジを採用したバリエーションが存在する

評価と影響

同じナカシマによるコノイドチェアも、材の性質から形を決める進め方をとる。4館の公開データでは、フリーエッジテーブルの収蔵は確認できていない。

基本情報

名称(日本語) ナカシマ フリーエッジテーブル
名称(英語) Nakashima Free Edge Table
デザイナー ジョージ・ナカシマ / George Nakashima(1905–1990)アメリカ
デザイン年 1940年代後半〜(以降、生涯を通じて発展)
製造 Nakashima Woodworkers(アメリカ・ペンシルベニア州ニューホープ)
主要素材 アメリカン・ブラック・ウォールナット、チェリー、イングリッシュ・ウォールナット、クラロ・ウォールナット、メープル、バタナット 他。蝶形契りには東インドローズウッド等を使用
仕上げ オイルフィニッシュ(ナカシマ独自配合のオイル仕上げ)
サイズ 受注制作のため個体により異なる。ダイニングテーブルの一般的な範囲:W 1,500〜3,000mm以上 × D 900〜1,500mm × H 約730mm
制作方法 完全受注生産。顧客との対話により板材を選定し、一点ずつ手作業で制作
現在の制作者 ミラ・ナカシマ(Mira Nakashima)が芸術監督として工房を統括。ジョージの設計思想を継承しつつ独自のデザインも展開