概要
ファネットチェアは、北欧モダンを代表するスピンドルバック(棒背もたれ)のダイニングチェアである。1949年にスウェーデンのエドスビーヴェルケン社で工場の職長レンナート・カールストルプが考案し、数年後にフィンランドのデザイナー、イルマリ・タピオヴァーラが改良して型番55Tとなった。1970年に生産を終えるまでに500万脚以上が販売され、2025年に同社(ブランド名エドスビーン)が再生産を始めた。
概要
ファネットチェアは、合板をプレス成型した座面、ブラックラッカー仕上げの木製フレーム、そして6本のスポークが並ぶ背もたれを特徴とする。スウェーデンのエドスビーヴェルケン社が、木製スキー製造で生じた余剰材を活用する目的で1949年に生産を開始したことに端を発する。
特徴・コンセプト
構造と素材
座面には合板をプレス成型した薄い一枚板が用いられ(現行55Tの表面はオーク、バーチ、植林チークの突板)、身体を受け止める緩やかな窪みが施されている。四本の脚は外側に向かって傾斜し、安定性と軽快な視覚的印象を両立させている。背もたれを構成する6本のスポークは、扇のように広がりながらカーブを描く。フレームには木材(多くはバーチ材)が用いられ、ブラックラッカー仕上げが施されることが多い。これにより座面の木目とのコントラストが生まれている。
スピンドルバックの再解釈
イギリスのウィンザーチェアに起源を持つスピンドルバックは、フィンランドの農家で長く使われてきた椅子形式である。カールストルプはこの伝統的な形式を、重量と製造費を抑えた量産品としてまとめ、のちにタピオヴァーラが改良を加えた。スキー製造で培われた木材の曲げ加工技術が、軽量で丈夫な構造を支えている。「すべての人のためのデザイン」という考えのもと、優れたデザインを手の届く価格で提供することが目指された。
誕生の背景と普及
エドスビーヴェルケンは木製スキーの製造業者で、そこで生じる余剰材の活用を模索していた。スキーの製造には木を曲げる工程が含まれる。同社は1936年からこの余剰材でウィンザーチェアを作っており、1949年にファネットが生まれた。1950年代から1960年代にかけて北欧の家庭に広く普及している。
評価と影響
改良を手がけたタピオヴァーラによるマドモアゼル ラウンジチェアも、細い棒を並べる背もたれをとる。あちらは座面を低く背を傾けたラウンジ用にあたるのに対し、ファネットは背が直立したダイニング用である。
2025年にエドスビーンが Fanett Chair 55T として再生産を始め、現行品とヴィンテージの両方が流通する。4館の公開データでは、ファネットチェアの収蔵は確認できていない。
イルマリ・タピオヴァーラの設計思想や経歴について詳しくはイルマリ・タピオヴァーラプロフィールページをご覧ください。
アスコの歴史や他の製品について詳しくはアスコブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称(日本語) | ファネットチェア |
|---|---|
| 名称(英語) | Fanett Chair |
| デザイナー | レンナート・カールストルプ(Lennart Karlstorp、原設計)、イルマリ・タピオヴァーラ(Ilmari Tapiovaara、改良) |
| デザイン年 | 1949年(原設計。改良は数年後) |
| 製造ブランド | エドスビーヴェルケン(AB Edsbyverken、ブランド名 Edsbyn。1949〜1970年、2025年〜) |
| 現在の取り扱い | エドスビーン(Fanett Chair 55T、2025年〜) |
| 主要素材 | 座面:成形合板(現行55Tはオーク・バーチ・植林チークの突板)/脚・背もたれ:バーチ(オリジナルの背もたれはブナ) |
| サイズ | W45 × D42 × H78 cm(座面高 42 cm) |
| 代表モデル | Fanett 55T(6本スポーク)ほか |
| カラーバリエーション | 現行55Tはクリア塗装、黒・白の塗装 |
| スタッキング | 不可 |